細やかな愛情

林 業

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話を終えて携帯を置く。
顔が赤くなっているのを自覚したため必死に抑える。
始めて電話してもらえたと思えば声を聞けて元気が出たとか言われて。
心臓をやられないほうが可笑しい。

落ち着いてから外に出れば馬場兄弟がいる。
「なぁあの子っていっつもああなのか」
「あぁ?」
不思議そうに弟のタダシが首を捻り、タカシはしばらくして理解したのか必死に笑いを堪え書類で顔を隠している。
「兄貴なんの話?」
なんだと聞く前にタダシが問い詰めている。
「どーせ、アオイのアレだろ」
「アオイ。あぁ。あれかぁ」
タダシも知っているらしい内容らしい。
「なんだ?」
「アオイってど天然っていうか人タラシ?っていうのかな。だからうちの親父もヨヨギの親父さんもアオイが欲しいって養子にしたいって言ってた」
「それで兄貴やハクがどうのこうの言ってたわけか」
あの後一度父と兄弟で愛用しているという老舗旅館に食事がてら泊まりに言った。
そこで父や兄弟に絶対に手放すなよ。傷つけるなよと言われた。
三人は男同士などあまりいい感情はなかったと思っていたので心から驚いた。
「まぁ、それで勘違いする人多くて何度か襲われれたよ」
それであんなに無愛想なのかと、むしろ処女を散らしていたのかと悔しくなる。
だがタダシの次の言葉にすぐに考えを止める。
「男は股間蹴ればみんな逃げてくって言ってた」
「言葉だけでも痛い話するな」
思わず抑えてしまう。
「股間って蹴って痛いのか?ここのところだろ?」
足の付け根を示すタダシにタカシが耳元で囁く。
「あぁ。ちん」
瞬間、タダシがタカシに殴られて黙る。
流石に昼間から話す話じゃないと理解したらしく仕事を進める。


「まぁ、タダシの言うとおり人タラシなんで、ちょいちょい勘違いしそうな言動しますよ。あれでも結構有能なんですけどね」
自分たちに勉強教えてくれるしと呟く。

この兄弟はなかなかに頭が良くない。
まだ中学ぐらいまで日本にいた頃は、彼らは必死に勉強した一年間でようやく漢字を一つ覚えたという具合。
努力と成果が見合わないレベルだった。
高校と大学に受かったのも奇跡や裏口だと周囲から言われていた。
特にタダシは。
そこにアオイがいると言うなら父たちの反応は中々にありえる話だ。

「教えるって言ったって勉強方法をあれこれ提案してきてそれをやっただけです。一番俺らに向いているのはどれかって」
「なんでお前らにそこまで」

無愛想なアオイからはどうしてそこまでできるのかわからない。
「アオイの家も色々と面倒なんですよ」
タカシが書類を整理しながら告げる。
「色々とありすぎますけど人に尽くすのが染み付いてるんです。教師にすら爪弾きな俺達と、人をタラシ込むけど、居場所がなかったアオイと仲良くなっただけっすよ」
三人の出会いに思わず笑みが溢れる。
見た目からも外国人であるからと仲間はずれにされた自分が言えたことではないなと苦笑する。

「ところでお前らは勘違いしないのか?」
「え、ないない。俺らアオイの教師すらドン引きする鬼気迫る雰囲気で勉強教えてきてもらったから」
「色恋に走る前に必ず恐怖が芽生えてました」
タダシとタカシは思い出したのかがたがたと震え出す。
悪かったと謝りつつ、やはり普通の方法では無理だったんだなぁと二人の能力値の低さに驚く。
そしてライバルではないと喜ぶ。
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