幸福からくる世界

林 業

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精霊たち井戸端会議

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サジタリスは早くルーンティルに会いたいとワイバーンへ踵を繰り出して地面に落とす。
「ルーは可愛い。ルーは優しい。ルーを抱きしめたい。ルーを吸いたい」
「ユージ。黙らせて。うるさい」
同じく魔法で討伐していたレイラが腹立つと告げる。
私だって我慢している。と。
「まぁまぁ」
アリナガがレイラを宥め、ユージーンはサジタリスを止める。
「ちょっと落ち着こ。タリス。一旦戻って休憩しようぜ」
「休憩の間協会行ってルーの匂い嗅いで来ていいか」
多分できるだろうが、出来ないレイラが睨んでいる。
「俺はそれより、侵入したワイバーンが気になる」
「大丈夫だろう。ルーがなんとかする。精霊と一緒なら問題ないからな」
「それでなんで誘拐されたんだ?」
「それだけ相手がすごかったってことかもしれないし、俺らの知らない何かが」
サジタリスはしばらく城壁を眺めて告げる。
「ここ、北じゃない」
「東まで来てたみたいだ」
アリナガがやれやれと告げる。
戦闘に必死になって持ち場を離れてしまったらしい。
とはいえ、こちらに流れてきたのも北側にはほとんど討伐を終えていたと言うのがある。
報告と休憩時間も兼ねて、一度、中へと向かう。
「そういえば、ユージとタリスは知り合いだって言っていたよね」
「小さい頃に一方的に剣教えろって突っかかってた」
ユージーンが微笑みを浮かべる。
「時々暇を見ては剣を教えてくれてたんだけど、兵士になるにしては身分が低かったし、普通に働くにしても、ちょっと自由がなかったから冒険者になったんだ。一応師匠って慕ってたんだけどな」
「絶対やめろ。なんか嫌だ」
「というから普通にタリスって呼んでる。っていうか小さい頃から変わんないのなんで」
「そういう体質だ」
城門をくぐり抜ける。
馬車が居て、逃げるんだと訴えている業者。
お待ちくださいと必死に止めている兵士。
しばらく眺めたサジタリスは、馬車へと飛び込む。
「ちょっと。冒険者のお兄さん。その馬車は」
サジタリスは細長い木の箱を無理矢理こじ開ける。
「タリス。何やって」
ユージーンが叫んで飛び込み、しかし赤い瞳に怒りが現れている。




暗い。
(出して)
何度眠ろうとしても幸せな夢じゃない。
狭い。苦しい。
あの時もそうだった。
突然、暗い場所に押し込まれていた。


木箱に転移させられたのかもしれないと気づいたときには眠くて。
その後はただ、道具を作るよう脅され、心を壊され、ほぼ言いなりで道具を作っていたのだけは覚えている。



(出して)


爪で壁をひっかく。
「だしーーー」
声を口にして必死に眠気に抗う。

「出して」
意識が朦朧として、精霊を呼び出せない。
「うる、か」
魔力を集めようとするのだが何故か散って霧散する。

「お」

ひたすら爪で入り口をひっかく。
眠い。
「サジタリス」
思わず口にする愛しい人。

どれだけ寂しい思いをさせたのか。
どれだけ苦しい思いをさせてしまったのか。

あの時ももっと気をつけていれば今だって夢だった兵士を努めていたはずなのに。




「はる、しお」


ハルシオだって十五歳。
大人びてなんでもやっているけれど、何処か甘えん坊。
ララとクラークを大事にしすぎて依存している気もする。

いや。小さい頃、苦しいときはウルカにしがみついていた自分が言えることではない。
だけど、不安でしょうがないだろう。

早く。帰らなければ。

「さ、じ。はるし」

開けてとひたすら指を動かす。





目の前が開けて手を伸ばせば、サジタリスが抱きしめてくる。

「ルー。よかった」

赤く染まった指を、サジタリスは舐め、それを見ながらハルシオの元へと目を閉じる。






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