未来の王妃として幸せを紡ぐ

林 業

文字の大きさ
18 / 25
貴方を支える未来

4

しおりを挟む
王都に来て早々、リーマンが顔を出す。
「先生」
「ご無沙汰しております」
飛びつきたい気持ちを押さえて、イネスは近づき、兄は頭を下げる。
「約二ヶ月ぶりですかね」
「えぇ。うちの裁縫師と婚約するという話を聞いて以来ですね」
初耳だとイネスは思わず二人を見る。
「兄上。聞いてません」
「しょうがないだろ。そのときに告白するってことだったんだし、正式に婚約者の書類は今回出しに行くらしいしな」
「そう、ですか」
だから今回裁縫師も一緒だったのかと納得する。
「あれ?でも先生、貴族では?」
「兄が継ぎましたし、嫁いでくるとは言っても、皆さんの領地に住む予定です」
「先生に頼れなくなるんですね」
「そんなことありませんよ。手紙を出していただければ何時だってあなたの師としてお手伝いします」
微笑みに、イネスは久しぶりに元気よく返事をする。
「じゃあ、婚約したら教えてください。お祝いしたいです」
「ありがとうございます。さて、明日から忙しくなりますよ。イネス君」
「が、がんばります」
「今日は旅の疲れを癒やすのと、余裕があれば街に遊びに行くといいでしょう」
「は、はい」
「じゃあ、私が付いていこう」
義兄が一緒にお買い物しようと微笑んでくれるので大きく頷く。





色々と買ったと荷物を置く。
長兄が呆れがように紙袋や箱を見る。
「先生たちへのお祝いでしょう。使用人達へのお土産に。家族へのお土産。それから美味しそうなおやつ」
「はいはい。んじゃあ、湯浴びて休んでこい。部屋に運ばせとくぞ」
「はい。お願いします」
イネスはゆっくりと歩いていく。
長兄は眺めてから告げる。
「大丈夫だったか?」
「問題ない。危なさそうなところには行かせなかったからさ」
「そっか。実家に寄らなくて平気か?」
「帰りたくないって言ったらどうする?」
「私だけ挨拶に行ってくるよ。王都に来て二人とも顔を合わせないのは不味いだろ。次期王妃の側にいますって言っとけば黙るだろう」
「兄貴に会いたくない」
「じゃあ、休んで、イネスのこと見といてくれ」
「ごめん」
「いいって。私が守るって約束したからな」
照れ臭そうに頭を撫で回してくる。
ふふふと楽しそうに笑顔を返す。


使用人達はその光景を見て、跡継ぎは問題なさそうだと頷き合う。



それから数日後、義兄に子がいることが発覚した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

どうしてこんな拍手喝采

ソラ
BL
ヤクザ×高校生

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

魔力ゼロのポーション屋手伝い

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
15歳で測定する魔力の量によって、人生の大部分が左右されてしまう世界。 そんな世界で、運命の日を迎えたひとりの平凡な少年──リクは、抱いた淡い期待を大きく裏切られる。魔力が前代未聞のゼロと言い渡されたのだ。 深い絶望とともに頭を抱えていたとき、森でポーション屋を営んでいるというくたびれた男が声をかける。路頭に迷っていたリクは、店で手伝いをしてはどうかという彼の誘いを受けることにする。 捨てかけた夢を拾ってもらった少年と、拾った男。ふたりが絆を深めていく、ポーション屋でのお話です。 一人称おじさんくたびれ男性×魔力ゼロ以外平凡青年のBLです。 カクヨムにも載せています。(完結済み)

【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。 イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。 父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。 イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。 カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。 そう、これは─── 浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。 □『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。 □全17話

処理中です...