ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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 「意外と大きいね……」
 『栄えている証拠ですわ。ほら、色絵具だけでなく他も見てみましょう?』
 「そうだね、何かいいのがあるかもだし。」

 踏み入れた市場は人と魔獣で溢れていた。ヒイラギが治めているこの街は四割の人間がテイマーの道に進むと言われている。テイマーと言っても、二種類のテイマーがいる。契約し、そのまま別の学問に進んだテイマーと、きちんとした學所で学び、資格を取ったテイマーである。この街にいるのは前者が大半で、資格も持っているのは一部の貴族と冒険職に就いたものくらいだろう。
 市場では人間が魔獣と共に店を経営している。補充の荷を運ばせたり、一緒に接客をしたりと魔獣によって活躍できる分野は違ってくるが。何はともあれ、この魔獣と人間との光景はこの街ならではのものだろう。

 「いろんな魔獣がいっぱい……」
 『買い物が先だよ、お母さん』
 「分かってるよ……分かってるけどさぁ……」
 『それに、みんな仕事中だからさ?』

 右を見、左を見、リッカの好奇心は終わりを知らない。呆れながらもある意味保護者枠である朱雀と玄武が軌道修正をしながらやっとのことで目的地へ到着した。
 店番をしているのは年老いたおじいさん。リッカは台に並べてある色絵具を見ながらどれにするか吟味し始めた。

 「お嬢ちゃん、絵を描くのかい?」
 「お嬢ちゃん……?僕、男なんですけど……」
 「おやそうだったのかい?こりゃ失礼!ちっさくてえろう可愛いもん連れてるから、てきり女の子かと」
 「ひどいです……」
 「まぁそうしょげなさんな。ほれ、一本おまけしてやろう。」

 からかわれはしたが、悪い気はしない。それは、この老人の人柄にもよるのだろう。リッカは必要な色絵具を五、六本選び、お金を渡した。袋に入れられて品物を渡される。それをウエストバッグにしまうとお礼を告げて店を後にした。今日は市場も忙しそうであるため、スケッチは裏庭でいつものようにしようと辺りを見ながら決める。
 他にめぼしいものが無かったため、早々に帰ることにし、歩みを進めた。

 『まま、かえる?』
 「うん、帰るよ。」
 『かえったら、あそぶ?』
 「スケッチ終わったら遊ぼうか。」
 『やった!うれしい!!』
 『お母様、前を見ないと人間とぶつかってしまいますよ。』

 白虎が目をぱちくりとさせながらリッカへ問いかけた。納得のいく返答だったのか、満足げに笑っている。そんな白虎を見ていて前を見ていなかったリッカは、そのまま朱雀の声もむなしく人にぶつかってしまった。慌てて顔をあげ、謝ろうとして気づく。

 「ごめんっ……えっと、」
 「……お前無能か」
 「タイチさん?って、こいつは……!」

 そう、ヒイラギの屋敷で一緒になったアズマ家の子供、タイチとストレイン家の子供、ダグラだった。タイチの言葉によくない意味が込められていることには分かったが、どうしてそこまで敵対視されるのかが分からない。リッカは困ったように笑うと、もう一度、ぶつかってごめんと伝えた。

 「よくもそんな口が利けるな?」
 「……どういうこと?」
 「貴族のくせに、トウドウ家の出のくせに、そんな弱そうな魔獣としか契約できないなんて、恥さらしにもほどがある。」 
 「弱そう……?この子達が?」
 「違わないだろう?実際に俺の従魔に攻撃されればひとたまりもないだろうさ。」

 そう豪語するタイチの横にはウルフの姿がある。どうやらメイドたちが言っていたことは本当らしい。そして、ダグラの横にいるのは土竜モグラだろうか?少し大きい気もするが。確かに見た目だけ見れば神獣たちの方が負けそうではある。見た目だけ見れば。

 「見たこともないのに、この子達の能力がわかるの?」
 「わかるだろう?それだけぬいぐるみのような見た目をしているんだ。強いわけがない。それに、お前に力がなく用意された魔獣じゃ契約できなくて選んできたんだろう?」
 「……はぁ、お話にもならないよね。」
 「お前!タイチさんになんて口を利いてるんだ!」
 『かーさん、こいつら攻撃していいか?』
 「だめ。僕は早く帰りたいんだから、帰るよ。」

 自分のいいように解釈したことを惜しげもなく披露するタイチに呆れ、リッカはキレはじめた青龍たちを抑えながら歩き出した。余談だが、神獣たちの声はリッカの両親やヒイラギのように力の強い者でなければただの鳴き声にしか聞こえない。無論、八つであるタイチが魔力感知に優れているわけでも、力が強いわけもない。そんな中でリッカと青龍のやり取りなんてものを見てしまえば、まるで自分のことなどどうでもいいというような態度を取られていると勘違いしてしまうだろう。いや、実際リッカはどうでもいいと思っているのだが。
 てっきりそのまま帰らせてもらえるのか、と思ったリッカだったが、横を通りすぎようとしたときに、リッカの腕をタイチがつかんだ。一気に殺気だつ神獣たち。それを撫でることでなだめ、向き直った。

 「なあに?」
 「……無能風情が、馬鹿にしているのか」
 「してないよ。それと、痛いから離して。」

 リッカとタイチの身長差は約三十センチほどある。八歳にしては大きいタイチと八歳にしては小さいリッカ、どちらの力が強いかなんて明確だ。が、リッカから放たれた威圧に、タイチは思わず手を離した。

 「帰っていい?」
 「……まだ話は終わっていない。」
 「僕が君と話すことはないから。」
 「く、口の利き方が、」
 「君はなおさら関係ないよね?」
 「ぐっ……」
 「さようなら。」

 問答無用であしらい、リッカは今度こそ横を通り抜けた。鈍感リッカもやるときはやる男である。ふんす、と息を吐いたリッカに、神獣たちは苦笑いし市場を後にした。


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