ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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リッカとタイチ

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 「実技試験の内容だが、テイマー志望の君たちに求められるのは剣士ソードマン魔法使いメイジのような戦闘力ではない。いや、もちろんある程度の戦闘力も求められるのだが、それが優先ではない。生き残ること、それこそがテイマーに求められる第一優先事項だ。」

 テイマーは所謂猛獣使いと呼ばれている役職で、魔獣を使役し従魔にして自身が戦うのではなく、従魔に自分の代わりとして戦ってもらうのだ。そうであるのに、死んでしまえばその瞬間契約は切れ仲間に襲い掛かる可能性も無くはない。タイチやリッカのように最初から人間に友好的、もしくは交友関係を築いている状態から契約すればそういうことはないのだろうが、中には無理やり契約する術式も存在する。
 余談だが、フィラノで行われる八歳になるとやる契約の儀は互いの了承のもとに成り立つ術式であるので、案外フィラノにいるテイマーにならなかった市民たちは無理やり契約する術式があることを知らなかったりするのだ。
 話を戻すが、仲間を危険にさらさないためにもテイマーに一番求められるのは生存する力、と言う訳である。

 「よって、今から行うのは戦闘能力と言うより、生存するにあたってどれほどの危機回避能力があるかの試験だ。君らも何もできない状態でこの試験に挑みに来たわけではあるまい?魔法ができないなら足で、足で動けないなら魔法で、俺からの攻撃を回避して見せてくれ。ああ、大丈夫。攻撃を仕掛ける前にちゃんと君らには俺が防壁を張るから怪我はしない。」

 なるほど合理的だと、リッカは納得した。筆記でテイマーになるための知識、実技でテイマーに一番重要な危機回避能力をチェックするわけである。基本的にテイマーは誰でもなれるが、そこには素質が大きく関わってくるため実際になれるかどうかは別として、そこで最低限のチェックはできるというわけだ。

 「じゃあ、ここは受験番号順に行こうか。名前を呼ぶから呼ばれたものは前に出て俺に受験票を預けてほしい。」

 おそらくそのまま受験票に結果を反映させるのだろう。効率的だ。周りの受験者たちを見れば不安そうに眉を顰める者もいれば、上等だと言わんばかりに息巻いている者もいる。リッカが隣のタイチに目を向けると、そのどちらでもない複雑な表情を浮かべていた。

 「……どうしたの、タイチ。」
 「いや、どうにもな……俺たちはウルたちがいるだろ?どうするのかと……」
 「そんなの、僕らだけの力でやるに決まってるじゃん。僕らの危機回避能力を見るんだからね?」
 「だよなぁ……」
 「何、まさか不安なの?」
 「いや、不安はもうするだけ無駄だと察した。」
 「じゃあ何さ?」
 「……白虎たちが、手を出さないか心配しているんだよ。」
 
 言われてリッカははっとした。そして勢いよく抱っこしている白虎と肩掛けバッグに入っている玄武を見下ろして、肩に乗っている青龍を見て、最後に頭の上にいる朱雀へ目線を向け、小さくそうだった……と呟いた。
 リッカには常に防護結界が張ってあるため、攻撃は絶対に受けない。だが、何も言わずにこの試験に参加した場、たとえ彼らは試験内容を理解していたとしても止めに入るだろう。神獣たちはリッカに攻撃の手が向くのを極端に嫌がるのだ。だから、リッカが今説得するしかない訳である。

 「みんな、聞いて。」
 『……お母さんへの攻撃に手を出しちゃダメってことでしょ?』
 『流石に理解してるよ、まま』
 「……ほんとに?僕が声をかけなかったら飛び出してきてたでしょ、シロくんは。ゲンくんは結界をもっと強くしてたかな?」

 リッカがそう言うと、バツが悪そうに玄武も白虎もそっぽを向いた。朱雀は、リッカの頭から下りて白虎の頭の上に着地し、リッカの眼をじっと見つめる。

 『否定はできません。だってお母様が大切なんですもの。』
 『本当は嫌だけど、試験だもんな―……止めたら母さんが困るのわかるから、止めねえよ。ほんとは俺が出たかったのに......』
 『……もしものことがあるから、防護結界は張らせたままでいさせてね。我慢するから。』
 「分かってる。要は僕が攻撃を受けなければいいんでしょ?」
 『そういうこと!まま頑張って!』

 本当にしぶしぶ、といった感じで言う神獣たちにリッカはほっと息をついた。ついでにタイチもウルに対して手は出さないようにと指示を出している。
 そして、タイチの名前が呼ばれた。一応カガチが防壁はかけてくれるようだが、ウルがあまりにも心配そうな顔をしているのでリッカがかけてあげた。玄武を従えているリッカの防壁は固い。だからか、ウルはリッカの真後ろに待機し、幾分か安心した表情で見てた。いくら防壁があっても主が怪我をしないか心配なのだろう。

 「防壁は?」
 「リッカにかけてもらっているので、大丈夫です。」
 「そうか、じゃあ二十数えた後、始めるからな。」
 「はい。」

 そうやり取りした後、タイチとカガチは距離を取った。ちなみに今までの受験者はギリギリのところで避けれなかった者と、魔法や体術で跳ね返すか避けた者が半分ずついる。タイチはどうするのか、ウルを撫でながらリッカはくふりと期待十分に眺めた。

 「行くぞ!」

 カガチの声で展開される魔法陣は水属性のもの。そう、カガチは受け取った受験票についている魔法適正を見て、使う魔法を変えているのだ。タイチは二属性持ちだが、単純に火属性の方で見たのだろう。展開されている魔法は《水球ウォーターボール》だし、威力も抑えられているのであたってもびしゃびしゃになるくらいだろう。
 発動直前になってもタイチは動かない。誰もが足で避けるのだろうと思っていたのだが、タイチは驚くべき行動に出た。

 「魔法使わないなんて、言ってないしな。」

 そう、当たる少し前にタイチは《風刃ウィンドカッター》を使ったのだ。中々の威力のそれは高速で発動された後に見事に水球を真っ二つにした。びちゃりとタイチの両側に《水球ウォーターボール》だったものが落ち、威力を失くす。これにはカガチもびっくりしたようで目を見開いている。リッカは、そう来たかと言わんばかりにくすくすと笑っていた。

 「……てっきり避けるのかと思ったぞ。しかも、風魔法か……てっきり火魔法で来るもんかと。」
 「ま、早く発動しすぎても上から水を被ってしまいますから。あのタイミングが一番だったんです。それに、俺は初級魔法ならある程度使えるんですよ。いつも隣に規格外がいたもんで。」
 「なるほどな……類は友を呼ぶ、とはまさにこのことか。」
 「どういうことですか。」
 「……お前も大概規格外だってことだよ。」

 ほい、と受験票を返される。タイチはそれを受け取るとにこにこしいているリッカの元へ戻った。
 そしてついに、リッカの番である。



 
 


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