ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

文字の大きさ
39 / 91
第二章 アカデミー 入学編

しおりを挟む


 黄龍から受け取った二枚の鱗はクロスの手腕により見事な耳飾りへと変貌を遂げた。持ち寄った時は驚かれたものだが、クロスはすぐに作業に取り掛かってくれて元の素材を生かす形でシンプル且つそれが黄龍の鱗であるとわかるデザインの耳飾りを製作してくれたのだ。リッカもその出来を気に入っていて、朝起きてすぐに着替えて髪をクロスに結ってもらい耳飾りを着けた。気合もばっちりである。

 「よくお似合いです。」
 「ほんと?作ってくれてありがとうね、クロス。」
 「いえ、礼には及びませんぞ。まさか黄龍様の鱗を持ってこられるとは思いませんでしたが、寵愛を受けるリッカ様なら授けられても不思議ではありませんしね。」
 「そう?……そう言えば、こーちゃんから聞いたよ。クロスってばすごい名家の出なんだってね?」
 
 リッカが思い出したように尋ねればクロスは苦虫を嚙み潰したような顔をした。何か嫌な思い出もあるのだろうか?そんなリッカの疑問がクロスにも伝わったのか、クロスは苦笑いを見せた。

 「あまり思い出したくもない過去です。今は、トウドウ家の執事ですから。」
 「ふーん……ま、いっか。今度は加工してるところも見せてね。」
 「はははっ……リッカ様とは約束事ばかりですな。……はい、何ならお教えいたしましょう。そのついでにいろいろな話をするのもよいですな。」
 「ん、約束。」
 「はい、約束です。」

 す、っと小指を差し出したリッカに同じように小指を絡める。これはヤマト独特の文化らしく、子供のころからそうやって約束をしてきたリッカにとってはなじみ深いものだが、他国ではそうではないらしい。クロスはもう顔を顰めてはおらず、リッカも満足したように小指を離した。
 もう、時間である。

 「さあ、おそらくもう旦那様や奥様がお待ちです。領主様もご準備されているでしょうな。私のことはよいので行ってください。遠くから、ご武運をお祈りしております。」
 「うん。行ってくるね。」

 クロスに促され屋敷を後にする。セイイチやサクラはすでに検問所の方で待っているらしい。最初は一緒に、と強請られたのだが、それはリッカがどうしても遠慮願いたかった。だって恥ずかしい。タイチの方はどうか知らないが、きっとあっちも断っているのか……否、あのスミレが母である。おそらく押し切られているだろう。
 そんなことを考えながら道沿いに歩いていくと猛烈な突風と共に黄龍が現れた。

 「こーちゃん。」
 『昨日ぶりだな、坊。鱗は綺麗に仕上げてもらえたようで何よりだ。』
 「うん。本当にすごかったんだね、クロスは。」
 『ああ。見たところもう出立か?』

 リッカの身に着ける衣装や普段とは違う髪型に黄龍はにこりと笑いながら告げる。

 「そうだよ。今検問所に向かってるところ。」
 『そうかそうか……お前たち、坊のことを頼んだぞ。しっかり支えてやるんだ。』
 『はい。心得ております、黄龍様。お任せください。』
 『ちゃあんとままが無理しないように見張ってればいいんだよね!』
 
 白虎の一言にリッカは苦笑いをしながらもう、と小さく呟いた。

 『もうね、お母さんに遠慮は不要って分かったからね。遠慮なく行くよ。』
 『母さんすぐ俺たちのために無茶するからなー……そのくせ俺たちが無茶しようとするとにっがい顔するんだもんなぁ』
 「当たり前でしょ……でも、はい……ちゃんと気を付けるよ……。」
 『うむ、これからも仲良くな。』

 まさしく対等、という言葉が似合うような神獣たちとリッカの関係に黄龍は微笑ましそうに笑う。リッカが黄龍の方に顔を向けると黄龍はすでにその場からいなくなっていた。その場に残るのは舞った桜の樹の花びらのみ。リッカはにっこりと笑みを浮かべてまた歩き始めた。もう検問所は近い。

 「あ、やっぱりタイチはもういるみたい。」
 『そうですね。かなり疲弊した表情をしているので、おそらくスミレに相当構われたのでしょう。』
 「みたいだね。あ、こっちに気づいた。」

 リッカ達が和やかに会話をしながら歩いているとタイチが気づいたように動きを止め、助けを求める表情をした。隣にいるスミレに捕まっていて動けないのだろう。しかしリッカに助ける意思は一ミリもない。無慈悲にもにこやかに笑みを返すだけに終わった。

 「あらリッカくん、おはよう。」
 「おはようございます、スミレさん。領主様もサイガさんもおはようございます。」
 「ああ、おはようリッカ。」
 「……おはよう。」

 スミレが挨拶をしてくれて、それに返しリッカもヒイラギとサイガに挨拶をすると、二人も返してくれる。その様子を恨めしそうに見るタイチに、リッカは思わず笑い声がこぼれた。

 「見すぎだよ、タイチ。」
 「……助けてくれなかっただろ。」
 「ごめんごめん、許して?」
 「……はあ、まあいい。それより、それ一昨日はしてなかったよな?どうしたんだ?」

 そう口にするタイチの視線の先はリッカの耳元。黄龍から貰った鱗の耳飾りのことを言っているのだろう。いったん耳飾りを外して見せながら黄龍からもらった鱗だということを告げるとタイチは何事も無かったかのようにふうん、と相槌を返したのに反して、ヒイラギとサイガは目を見開き固まってしまった。ちなみにスミレは綺麗ねぇと物珍しそうにリッカの手のひらの上の耳飾りを眺めている。

 「……黄龍様の鱗。」
 「……その耳飾りだけでどれだけの価値があるのでしょうね。」
 「……考えるだけでも恐ろしいな。」
 「……そうですね。」

 遠い目の二人だが、リッカがそれに気づくことはなかった。一言二言やり取りをしているとそれに焦れたようにしてサクラとセイイチが姿を現した。二人は検問所外にでもいたのだろうが、なかなかやってこないためにこちらへとやってきたのだ。
 そのままスタスタとリッカに近寄り、サクラはリッカをぎゅっと抱きしめる。

 「ああ、本当に行ってしまうのね……」
 「そりゃ、合格しましたからね。」
 「んもう、連れないこと言わないの。ちゃんと食べて、寝て、しっかり学んでくるのよ。」
 「はい。シロくんたちもいるのでそこはしっかりやりますよ。」
 「約束よ?怠ってたらタイチくんに報告してもらうからね。」
 「うっ……はい。」

 急に名前を出されたときには驚いていたタイチだが、リッカの返事の後にタイチに向かってリッカのことをお願いね、と頼んできたサクラにしっかりと頷いた。まあ、リッカは面白くなさそうだが。
 むすっとしてしまったリッカをサクラが離すと、今度はセイイチがリッカの肩に手を乗せる。それだけで力を分けてもらえているようで、リッカは心が温かくなった。

 「体に気を付けること。」
 「……?」
 「俺がリッカに求めるのはそれだけだ。あと、カガチとジルさんによろしく伝えておいてくれ。」
 「……はい。行ってきます。」
 「行ってらっしゃい。」

 セイイチはそう言うと、リッカの肩の上や腕の中、肩掛けバッグの中にいる神獣たちを撫でてリッカから離れた。それを見てタイチがウルへ大きくなるように指示を飛ばす。ウルは元気に返事をして元のサイズへ戻った。大きくなったウルがタイチとリッカへ鼻先をすり寄せてくる。リッカはその鼻先を撫で、軽い動作でウルの背中へまたがった。その後に続いてタイチもリッカの後ろへ乗る。

 「では、行ってまいります。」
 「あれ?タイチはお話しなくていいの?サイガさんたちと……」
 「もう十分済ませた。大丈夫だ。」
 「そっか。じゃ、行ってきます。」

 リッカもタイチと同じように言葉を返すと、セイイチたちは手を振り返してくれた。その様子を見たウルは地面を強く蹴り高く飛び上がるとそのまま空中を蹴るように移動し始めた。《空歩エアーウォーク》という風の上位魔法だろう。いつの間に習得したのやら、リッカはその素晴らしい景色にキラキラと瞳を瞬かせた。

 これから、リッカのアカデミー生活が始まる。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

転生美女は元おばあちゃん!同じ世界の愛し子に転生した孫を守る為、エルフ姉妹ともふもふたちと冒険者になります!《『転生初日に~』スピンオフ》

ひより のどか
ファンタジー
目が覚めたら知らない世界に。しかもここはこの世界の神様達がいる天界らしい。そこで驚くべき話を聞かされる。 私は前の世界で孫を守って死に、この世界に転生したが、ある事情で長いこと眠っていたこと。 そして、可愛い孫も、なんと隣人までもがこの世界に転生し、今は地上で暮らしていること。 早く孫たちの元へ行きたいが、そうもいかない事情が⋯ 私は孫を守るため、孫に会うまでに強くなることを決意する。 『待っていて私のかわいい子⋯必ず、強くなって会いに行くから』 そのために私は⋯ 『地上に降りて冒険者になる!』 これは転生して若返ったおばあちゃんが、可愛い孫を今度こそ守るため、冒険者になって活躍するお話⋯ ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ こちらは『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の可愛いくまの編みぐるみ、おばあちゃんこと凛さんの、天界にいる本体が主人公! が、こちらだけでも楽しんでいただけるように頑張ります。『転生初日に~』共々、よろしくお願いいたします。 また、全くの別のお話『小さな小さな花うさぎさん達に誘われて』というお話も始めました。 こちらも、よろしくお願いします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~

楠富 つかさ
ファンタジー
 都会で忙しさに追われる日々を送っていた主人公は、ふと目を覚ますと異世界の田舎にいた。小さな家と畑、そして妖精たちに囲まれ、四季折々の自然に癒されるスローライフが始まる。時間に縛られず、野菜を育てたり、見知らぬスパイスで料理に挑戦したりと、心温まる日々を満喫する主人公。現代では得られなかった安らぎを感じながら、妖精たちと共に暮らす異世界で、新しい自分を見つける物語。

処理中です...