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授業編
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しおりを挟む「……え?」
神獣たちの言葉にリッカは驚いたように思わず、と言った風に声を漏らした。泣いている、とはそのままのことであろうが視界に泣いている者はいない。どういうことだと疑念を抱いた視線を神獣たちに向けるとそろいもそろって一定の方向を見つめている。ウルは気づいていないようなのでおそらく神獣たちにしか気づけない気配があるのだろう。そんなことを思っているとぐぐっと足元を白虎に押された。
『まま、行こ?ままも気になるでしょ?』
「気になるけど……そもそも泣いてるって誰が泣いているの?」
『私たちに似た気配の何か、です。はっきりと何かと言うのは分かりませんが、とても悲しそうです。』
『そして怯えてるみたい。魔力がすごく微弱で……心細そうだよ。』
おそらく神獣たちはどちらでもよいのだろうが、リッカが後々気にしないようにこうやって背中を押してくれているわけである。それが分からないほどリッカは鈍いつもりはない。こと神獣たちに関しては、だが。ふう、と一息つくとリッカはタイチの方を向いた。
「……なるほどね。じゃあ大勢で押しかけない方がいいかな。タイチ、ちょっと僕ら行ってくるね。怯えてるなら最小限の人数で行ったほうがいいだろうし。」
「……別行動か?」
「うん。そっちはそっちでよろしく。僕は大丈夫だから。」
「……まあ、シロたちがついているなら大丈夫か。じゃあまた後で。」
そのままタイチはウルを連れてその場を離れて行く。リッカはそれを見送ると神獣たちに向き直った。そしてその気配がする方へ案内するように言い、神獣たちから聞いたこと含めその場を離れるということをカガチに伝え、リッカは神獣たちについて行くことにした。
あちらこちらで魔獣を探している生徒がいる中、神獣について歩くリッカは一人人気の少ない方へ歩みを進める。どうやら森の奥の奥の方にその存在はいるようだった。
「こっち?」
『おう。こっちから気配はするぜー?』
「ん……あれ?魔力の流れが……」
『どうやら空間が歪められているようですね。まぁこの程度でしたら魔力の流れを感知することができるお母様にはどうということはないでしょうが、分からない人は避けて通ってしまいますね。』
「ふぅん……空間魔法の一種?」
『そうですね。おそらくオリジナル魔法かと思います。身を守るための苦肉の策、とでも言うのでしょうか……。』
朱雀はそう言って考え込むように首を傾げながらリッカの頭の上で思考する。リッカも聞いたことが無いし、もしかしたらノアなら何か知っているかもしれないが今その魔法はどうでもいい。どうでもよくないのはおそらくその魔法の使い手であろう何者か、である。さらに奥の方へ行くと洞窟のようなものがあり、白虎たちはその洞窟の前で歩みを止めた。
『……ここ。』
「ここに……ここの奥にいるの?」
『気配ではね。まだ泣いてるみたいだけど、ここまでくればお母さんにも分かると思うよ。』
「そうなの??」
『だいぶ近いからね。多分紛れず感じ取れると思う。』
玄武のその言葉でリッカは集中するように目を閉じた。目の前の四つの気配はよく知る神獣たちのもの。さらにその奥に怯えるような気配が一つ、感じられた。確かに白虎たちの気配に似ているようにも思える。何なんだ?と目を開けると白虎たちは警戒したように身構えた。朱雀も青龍も玄武も、リッカの上やバッグの中から飛び下りてリッカを守るように前に出ている。サイズは小さいが。
『くるよ!』
白虎の声にリッカも次いで身構えると何か白銀のもふもふとしたものがリッカへと突進してくるのが分かった。これが攻撃であれば相手が弾き返されるだけである。ものすごい速さのそれはキューンと鳴きながらそのままリッカへと突っ込んだ。弾き返されなかったことにやはり、と呆れを覚えてしまった神獣たちだが反射神経は抜群に優れている。突撃された勢いでリッカが背中を地面に激突させないように朱雀がリッカに《無重力》の魔法をかけふわりとその勢いを殺していく。
リッカは受け止めた腕の中の存在をそうしてようやく視認したのである。
「……キミ、は」
『これはこれは……』
『まさかと思っていたけど、まじかぁ……』
『これは絶対お母さんの魔力と気配に釣られて出てきたね。』
『にしても、なんでこんなところに”フェンリル”がいるんだよ?』
サイズは現時点で小さくなっている白虎よりもはるかに大きく大型の魔犬サイズである。白銀に輝く毛並みに大きな耳、ふさふさの一振りの尻尾とその碧眼は何処からどう見ても美しいと言えるだろう。足先だけ毛が青味の強い深い蒼銀色で靴下のようになっている。それはまさに、幻ともいえる魔獣で―――――――。
そう、このロア含めた広大な地域を守護していると言われている聖獣、フェンリルがそこにいたのだ。
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