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依頼消化編
リッカのやり方
しおりを挟む「さて、街からいったん出た訳だけども。どうするの?リッカくん。」
ノアがリッカの方を向き、尋ねる。タイチもその声に頷く形でリッカを見た。二人の視線を受けたリッカだったが、そうだねぇ……と少し考える素振りを見せ、うん、と何かを決意したように口を開く。
「ま、一番手っ取り早いのは浮蛇をここに呼んでみることなんだけど……。」
「そんなことできるの……?」
「俺は見たことないぞ、それ。」
「見せたことないもん。って言ってもあんまり呼んだこともないしね。」
呼ばなくてもいるんだよ、というリッカの言葉にノアは信じられないという表情をした。他の魔獣よりも警戒心が強く寄ってこない浮蛇を呼ばなくても来る。と言ってのけたのだ。どれだけリッカが魔獣から好かれているのかが分かる。そもそも人から目撃されることが少なく、名前と姿が一致していない魔獣としても有名な浮蛇だけに、従魔として人に従っていたというのも驚きなのだ。無理やり従えさせていたのか、それともちゃんと浮蛇の意志があって契約したのかは分からないが早く解放してあげないと非常にまずい。
小さくいものの魔力保有量に優れている浮蛇は取り込むことで魔力を倍以上増やすことができると言われていたりもするので、魔獣からも人からも狙われやすい。自衛できないとなれば、無駄にその命を散らしてしまう。
「……呼ぶとして、何か問題があるのかい?」
「まあ、可能性としては従魔になってるから呼べないかもしれないってことと、ここら付近に居なければ届かないってこと。一応ここでもやってみるけど、いなければ別の方法を探すしかないね。」
「なるほど……。」
「まあ確かに範囲内に居なければ届くものも届かないしな。」
「そういうこと。」
とりあえず呼ぶだけ呼んでみるね。と右手を口元へ持っていき、指笛を吹いた。リッカの指笛の音色はとてもきれいでまるで指笛とは思えない。そんな指笛の音色は不規則に変化し、何かを誘うようなものに変わっていく。
ノアもタイチも予告もなく心準備もさせてくれなかったことに抗議をしようとしたが、中断させてしまうことで何に繋がってしまうのか予測ができず、神獣たちにも視線で制されてしまったため未だ指笛を吹き続けるリッカを見守ることしかできなかった。
『お母様は今件の魔獣を呼んでいます。邪魔はだめですよ。』
「中断させると何かまずいのか?」
『お母さんなら何ともないと思うけど、一応魔力を使いながら吹いてるからね。何が起こるかは予想できないよ。』
「暴発の恐れもあるってことかな?」
『そういうこと。お母さんはこうやって簡単にできてるけど、本来なら複数人の魔力込みでやっとできるかできないかなんだ。』
「……リッカだからできるってことか。」
タイチの出した答えに玄武は満足そうにうなずく。気づけば指笛は終わっており、リッカはやり切ったようにふう、と息をついた。その瞬間を狙ってノアがリッカに詰め寄る。
「なあに、ノア。」
「急にはやめて!心の準備くらいさせてくれてもいいでしょ?」
「善は急げ、だよ。現に、ほら……森の方を見てみて。」
リッカの指示した方をノアが見ると、そこにはいくつもの”目”があった。二対のそれがいくつもこちらを覗き見ている。大なり小なり様々で、まだ明るいことでその正体がありありとわかる。そう、分かってしまうのだ。
「とりあえず、あの森の中にいる魔獣を呼んでみたんだ。ついでに浮蛇もって思ったんだけど、引っかからなかったみたい。」
「……集まりすぎじゃないか?」
『ままの魔力で呼ばれたんだからこれだけ集まってきて当たり前だよ!』
『しっかし、この森こんなに魔獣がいたんだな……母さんの魔力すげー』
白虎と青龍の言葉になるほど、とタイチは納得する。確かにリッカの魔力保有量と魔力の質による呼び込みに応えない魔獣は恐らくいないと言ってもいいだろう。リッカは集まってきた魔獣たちに向かって声をかけた。そわそわとしている魔獣たちが恐る恐る近寄ってくる。
リッカは近寄ってきた魔獣たち数体へ触れながら訪ねた。
「ねえ、この辺で浮蛇見なかった?」
リッカの言葉に首を傾げる魔獣ばかりだったが、ちらほらと見たと大きく手を上げる魔獣もいた。その魔獣たちへ詳細を聞く。ノアは魔獣たちの言葉が分かるがタイチは何となくでしか分からないため、もうリッカ達に任せるしかない。しばらくして、リッカとノアは魔獣たちから話を聞き終わったのか、彼らにお礼をし、森へ返しているのを見てタイチも近寄る。
「何か分かったのか?」
「うん。ある程度ね。」
「どうやら浮蛇は森奥の洞窟の中に隠れているみたいなんだ。最後の目撃情報的におそらく今もそこにいるんじゃないかな。」
「なるほどな……森奥っぽいことは分かったんだが、洞窟までは分かってなかった。早速行くのか?」
「そうだね。とにかく会ってみないことにはどうするかも考えれないしね。」
タイチにそう返し、リッカはフェリへ声をかける。森の奥ということは必然的に長距離になるのでフェリとウルに頑張ってもらうことになる。タイチもそう思ったのだろう。ウルへ声をかけ、サイズを大きくさせていた。
フェリにも大きくなるように声をかける。それぞれ首に巻いていたリボンはすでに取り去られていた。
『これからもりのおくに、いくの?』
「そうだよ。フェリには頑張ってもらうことになるけど、よろしくね。」
『ん!りっかのためにがんばるね!』
「ありがと。ウルも準備できた?」
『はい。主様からも指示をもらったので。バッチリですよ。』
ウルの言葉にリッカは頷き、タイチへ視線を移す。タイチも察したように頷いてノアをウルに乗るように促した。森の中とは言え木々は今まで見た森よりも背が高い。ウルやフェリの上に乗せてもらってもなんら苦労無く移動できそうだった。
「さ、出発しよ。さっさと行ってさっさと帰る!」
「……リッカ、ノアの言ってたスケッチスポットにさっさと行きたいんだろ。」
「……何のことかなぁ。」
居心地悪そうにタイチから目を逸らす。もはや肯定しているとしか取れないリッカのその仕草にタイチは大きくため息をつく。それを誤魔化すかのようにリッカはフェリに出発するように伝えた。が、フェリは動かない。
もはやフェリもウルも、神獣たちもみんな苦笑いである。
「そんなに楽しみにしてくれてるんだね。」
「……まあ。さっき呼んだ時は一応依頼中だったから我慢したけど、スケッチしたかったし。いっぱい魔獣いたから……。」
「あ、やっぱ我慢してたんだね。じゃあそんなリッカくんのためにも急ごうか。」
「……うん。」
ノアの言葉に妙に素直に頷いたリッカにタイチも驚いた。我慢していたものの、魔獣がいっぱいいるところでスケッチができなかったことが嫌だったのだろう。依頼が依頼だけに急がなければいけないものなので、あの場面でスケッチはできない。むしろスケッチに対して貪欲なリッカが、よく我慢できたものである。
『じゃあいくよー!』
「ん、お願いね、フェリ。ウルくんも。」
『はい。主様もノア様もしっかり捕まっていてくださいね。』
こうして、リッカ達三人と従魔たちは森の奥へと出発したのだった。
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