命の質屋

たかつき

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当日 昼①

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 二、三周滑っては少し休憩、という流れ。

 休憩のたびにお互いの事を話し、朋美ちゃんの故郷は何もないけど自然と夕陽だけは綺麗! という話や、祖父母に育てられた祖父母っ子で、その祖父母が幼稚園生の時のお遊戯を喜び、ベタ褒めしてくれたのが今日までダンスを続けるキッカケになったのだとか。
 ただ、大学への入学を期に上京したが、大学一年目の時に残っていた祖母が亡くなってしまい、故郷に戻るきっかけが無くなった、なんていう少し重い話もした。
 重いといっても、どれも陽気に話す朋美ちゃんのおかげで空気まで重くなったりはしていないけどね。
 根っから明るい人なんだな、と感心する。

 僕も実家が埼玉県で農家をしている事や、農業用ロボからロボットに興味を持った事、埼玉の中でも特に田舎だったので、こちらも自然と夜空は綺麗だったと伝えた。

 そんな幸せな時間を何度か繰り返し、高鳴る鼓動とは裏腹に、僕の脚は悲鳴を上げていた。
 もう限界だ。
 情けないが、立っているだけで脚が震える。

 超能力なんて要らないので、アスリート級の体力を下さい! と脳内で念じるも、やはり神様からの返事は無い。

「朋美ちゃん、ちょっと待って」

「うん?」

 再びベンチから立ち上がり、さぁ行くぞ! と言わんばかりの朋美ちゃんを呼び止め、僕は自らの脚を指さす。
 最早、座っているのに震えている。小鹿以下だ。
 
「え! ちょ、徹くん、ぷぐぐ、大丈夫!?」

 心配そうな台詞とは矛盾して、今にも腹を抱えて笑い出しそうな顔をしている。なんなら少し泣いている。

「いや、ほんと情けないんだけど……僕の脚が『もうやめてください、助けてください』って」

「あっはははっ! はひぃはひぃ! ふはぁ――

 朋美ちゃん、めっちゃ笑うね! 
 僕までツボるわ!

 でも、僕の左肩にしがみついて爆笑するの、モブ男子的に勘違いしちゃうからやめてくれるかな?
 そんなんされたら好意あるのかも……って勘違いして、告白して、半笑いでフラれるよ!?

 僕の泣き顔が見たいのかい?

 待て待て、脳内くらいはイケメンであれよ僕。
 卑屈モードはフラれてからでも遅くない。

 あと、過呼吸みたいになってるけど大丈夫かな?

 ――いや、こちらこそゴメンね! なんか楽しくて楽しくて、こんなに楽しいのが久しぶりだったから、つい時間を忘れちゃった」

 凄く嬉しい事を言ってくれる。けど、時計に目をやれば、針はもうすぐ午後二時に辿り着こうとしている。
 あんなに空いていたリンクも、いつの間にやら多くの人で賑わっていた。
 開始から約四時間。流石に厳しいです。
 僕につられて朋美ちゃんも時計に目を向けた。

「えええ!? もうこんな時間!? ごめん! そりゃキツイよね! 徹くん、スケート初めてで脚も慣れてないのに、本当にごめん!」

「ううん、僕も楽しかったから! 本当ならもう少し宿に付き合いたかったんだけどさ、日頃からの運動不足を痛感したよ」

「本当? それなら良かったけど、疲れてるなんて、全然気付かなかったよ。徹くん、やっぱり男の子なんだね」

「小鹿みたいになってるのに?」

「ふふっ。靴紐ほどくと、一気に疲れが取れるから、ほら、足出して」

「えっ!? いやいやいや、自分で解くって」

「良いから良いから、ほら早く」

 促されるままに僕は足を前に出す。
 向かい合ってしゃがみ込んだ朋美ちゃんが靴紐を解いてくれている。
 何ていうか、好きになった人って、何をしていても絵になるんだな。こんな感覚、すっかり忘れてたよ。
 まぁ、僕の恋愛遍歴なんて小・中学生の時の片思いを除けば一回告白してフラれただけだけど。

 解放された足。じんわりと血の巡りを感じる。
 
「ありがとう」

「大丈夫そう?」

「うん。かなり楽になったよ。お腹も空いたし、何処かでお昼にしようか」

「だね!」

 にしても四時間滑ってピンピンしてるって、北海道育ちには普通の事なのか……朋美ちゃんが化物なのか。
 少し気になるけど、責めているみたいに聞こえたら嫌だから、やめておこう。

 ともあれ、昼食の為に僕らはとアイスアリーナを後にした。

……とはならず、

まともに歩く事もままならない僕を、朋美ちゃんがさりげなく支えてくれて、どうにかアイスアリーナを後にした。

 さりげなくと言っても、ピッタリと寄り添ってくれている訳で、僕の心臓は今にも弾け飛びそうなのだが。
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