命の質屋

たかつき

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当日 昼②

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「どこで食べよっか?」

「朋美ちゃんは、何が食べたいとかある?」

「私は何でも食べれるのだよ。レバー以外。レバーは生でも焼いても駄目だから、レバー専門店以外なら大丈夫」

「はは、レバー駄目なんだね。僕も特に好きじゃないけどさ。じゃあ――あそこのお店にしよう」

 辺りを見渡して視界に入ったのは、分かり易くナイフとフォークが交差した絵の看板。
 お店までの距離、推定二百メートル。

「ほうほう、迷いが無いねぇ」

「最短距離にある、あのお店で」

「あはは! うん、そうしよう!」

 思い描いていた、ザックリした予定――

 ・身体を動かすこと全般が好きだという朋美ちゃんとアイスアリーナでスケートを楽しむ。

 ・国立競技場周りを散策しつつ、美味しそうなお店を見つけ、ランチを愉しむ。

 ・食事後、休憩がてら一時間弱の電車移動で不忍池しのばずのいけに向かい、ボートに挑戦。

 不忍池は【初心者向け、おすすめデートコース!】というブログに書かれていたから参考にしたのだけど、正直ガチ初心者の僕にボートはハードルが高すぎる。

 ――で、実際はこの通り、アイスアリーナで無事死亡。
 今からレストラン探しで周囲を散策?

 無理無理無理。

 不忍池でボート?

 無理無理無理。

 運動音痴とはいえ、体力は人並みに有ると思ってたけど、スケートって凄く脚にんだね。
 今日から筋トレ頑張ってみようかな。
 いや、明日か明後日からにしよう。

「朋美ちゃんは全然痛くないの? 脚」

「大丈夫だよ。元気だけが取り柄だから、任せて!」

 凄いなぁ。それに、髪が凄く良い匂い。
 こんなに近くて、僕も汗臭くなきゃいいけど。

「朋美さんや、迷惑をかけて、すまないねぇ」

「気にしねくても、大丈夫だよう、おじいさん」

「「あははは!」」

 体を支えられつつ着実に進み、お店はもう、すぐそこだ。

 たまたま最寄りにあったからと目指したレストラン、イタリアンと書かれた旗が見えてきた。
 良かった。二人きりでの初ランチが牛丼とかにならなくて。あとレバー専門店じゃなくて助かった。
 
 ただ、運良く待ち時間も無く席に着けたのは良かったものの、そこは想像よりずっと高級感のあるお店だった。
 静かに食事を愉しまなくてはいけない空間、という妙な緊張感により、逆に全てが面白可笑しく感じてしまうという謎現象が発動した。

 お互いイタリア料理というジャンルにも不慣れだった為、何を頼んで良いか分からず、恐る恐るメニューの中で一番想像のつくパスタを頼むことに。

 暫く後、出てきたパスタのこじんまりとした量に笑いを堪え、上に乗っていた謎のスライスを食し、今のってもしかしてトリュフというやつでは? なんていう割と普通なやり取りが笑いのツボに入り、必死に堪え、結局味なんてよく分からなかった。

「なんか、凄い空間だったね」

「うん、でも美味しかったよ。徹くん、ご馳走してくれてありがとう。なんか、ごめんね」

 朋美ちゃんは割り勘にしようと何度も言ってくれたけど、最後は僕を立てて納得してくれた。

「へへへ、ポイントだけは沢山あるから気にしないで」

「ありがと。でも、ポイントだって立派なお金だからね」

 ポイントなんてもちろん嘘だけど、こう言う以外の誤魔化し方を僕は知らない。

「だよね! また集めなきゃ!」

「ふふっ。そうしたら、また奢ってね」

「任せて!」

 結局、今日は僕の脚を気づかって解散しようという事になったけど、何気なく言ってくれた『また』って言葉、凄く、凄く嬉しいや。
 
「じゃあ、次はイベントで」 

「うん! 涼太と見に行くから」

「本当に駅から家まで歩ける?」

「もう結構回復したから大丈夫!」

「分かった! じゃあ、またね!」

「うん! またね!」

 朋美ちゃんはちょっとしたダンス大会が控えているらしく、暫くはその練習で暇が無いのだとか。
 香菜ちゃんも同じチームのメンバーらしく『涼太くんと一緒に見においでよ!』と、誘ってくれたのだ。

 またねって言ってくれたし、ダンスイベントにも誘ってくれたし、では無いと思っても良いのかな。

 いや待て、早まるな!
 忘れたのか『ぷすっ、ご、ごめん、無いです』を!
 あの子だって、笑うと僕の肩を叩く子だったじゃないか!
 
 でも、朋美ちゃんはハッキリものを言うタイプに感じるし、もう少し自信を持って接してみても良いのかな。

 朋美ちゃんを乗せていった電車から目を離すことができず、途端に寂しい気持ちが芽生えた。

 僕は朋美ちゃんが、好きだ。  
 
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