8 / 25
良いお店
しおりを挟む
翌日。
僕は五時半から目が覚めて、九時には約束していた新宿のスイゼリア近くに着いていた。
我ながら早すぎると思う。
起きたら眠れなくなった為、早々に準備をして家を出たのだが。約束の二時間前に到着は流石にやり過ぎだ。
彼女欲しさにがっつき過ぎ=ダサいと思われてしまう。
仕方無しに、僕は休憩できる場所を探して彷徨った。
結局、近くに自由に座れる椅子が無かったので偶然見つけた喫茶店に入り、アイスコーヒーを注文した。
口数少なそうな、でも優しそうな顔をした白髪の男性がマスターをしている、何十年も前から在りそうなカフェだ。
メニューはどれも時代錯誤なくらい安いので、正直あまり味に期待はしていない。
一時間も居座ると怒られるかな?
「どうぞ」
「…………美味しい、です」
提供されたコーヒーを一口飲むと、心地良い甘さと、冷たさとほろ苦さからくる爽やかな余韻に、感想が無意識に口から出る。
「良い味でしょう。甘いのがお嫌いでなければ、此方もどうぞ。お代は要りません」
「レモンケーキ。ありがとうございます…………これも美味しい! 大好きな味です」
「ふふ。ご満足頂けて何よりです。時間を気にせずごゆっくり寛いでください」
「はい」
こういうお店のマスターって、実際も映画みたいに一つ一つ丁寧にグラスを磨くんだ。まだ朝だし、そんなにグラスが使われたとは思えないけど、手持ち無沙汰からかな。
理由はともかく、本当に絵になる所作に見惚れてしまう。早起きしたお陰で良い店を見つけたものだ。
行きつけにしようかな。
もし彼女が出来た時『僕の行きつけの喫茶店に行こうか』なんて洒落た事が言えたら格好良いもんね。
途中一杯のおかわりを頼み、一時間が経過した。
入店してから程なくして他に二人組の女性客が来たけど、その客ものんびり談笑しているので、僕も安心して過ごすことが出来た。
「お会計、お願いします」
「かしこまりました」
レジの画面を見た僕は目を疑った。
表示されていたのは三百八十円という数字。
「あの、一杯分になってますよ」
「はい。アイスコーヒー一杯の代金になります」
「とても美味しかったですし、長居をしたので、しっかり請求して頂いて大丈夫ですよ?」
「ふふ。今日は特別サービスです。行きつけにしてくれるのでしょう? 次回は是非、お連れ様といらしてください」
「えっ?」
「気に入ってくれた人の違いは分かるんですよ。私も長くやっておりますのでね」
「お兄さん! 良いのよ! マスターは全然お金儲けを考えない人だから! 気にしないで甘えちゃいなさい!」
二人組の女性が横槍を入れる。
こういう喫茶店は初めてだし、そんなものなのかと自分を納得させて笑顔を返し、僕はスマホをかざし支払いを済ませた。
「ご馳走様でした。また来ます」
「お待ちしております」
つくづく良いお店だったな。
ただ一つ不満があるとすれば『次はお連れ様と』って言われたけど、僕は今のところモテ歴ゼロだ。
マスターの期待には応えられない。
もし今日のダブルデートに成功すれば話は別だけど、デートに失敗したら涼太でも連れてくるか。
一応、お連れ様には違いないしね。
僕は五時半から目が覚めて、九時には約束していた新宿のスイゼリア近くに着いていた。
我ながら早すぎると思う。
起きたら眠れなくなった為、早々に準備をして家を出たのだが。約束の二時間前に到着は流石にやり過ぎだ。
彼女欲しさにがっつき過ぎ=ダサいと思われてしまう。
仕方無しに、僕は休憩できる場所を探して彷徨った。
結局、近くに自由に座れる椅子が無かったので偶然見つけた喫茶店に入り、アイスコーヒーを注文した。
口数少なそうな、でも優しそうな顔をした白髪の男性がマスターをしている、何十年も前から在りそうなカフェだ。
メニューはどれも時代錯誤なくらい安いので、正直あまり味に期待はしていない。
一時間も居座ると怒られるかな?
「どうぞ」
「…………美味しい、です」
提供されたコーヒーを一口飲むと、心地良い甘さと、冷たさとほろ苦さからくる爽やかな余韻に、感想が無意識に口から出る。
「良い味でしょう。甘いのがお嫌いでなければ、此方もどうぞ。お代は要りません」
「レモンケーキ。ありがとうございます…………これも美味しい! 大好きな味です」
「ふふ。ご満足頂けて何よりです。時間を気にせずごゆっくり寛いでください」
「はい」
こういうお店のマスターって、実際も映画みたいに一つ一つ丁寧にグラスを磨くんだ。まだ朝だし、そんなにグラスが使われたとは思えないけど、手持ち無沙汰からかな。
理由はともかく、本当に絵になる所作に見惚れてしまう。早起きしたお陰で良い店を見つけたものだ。
行きつけにしようかな。
もし彼女が出来た時『僕の行きつけの喫茶店に行こうか』なんて洒落た事が言えたら格好良いもんね。
途中一杯のおかわりを頼み、一時間が経過した。
入店してから程なくして他に二人組の女性客が来たけど、その客ものんびり談笑しているので、僕も安心して過ごすことが出来た。
「お会計、お願いします」
「かしこまりました」
レジの画面を見た僕は目を疑った。
表示されていたのは三百八十円という数字。
「あの、一杯分になってますよ」
「はい。アイスコーヒー一杯の代金になります」
「とても美味しかったですし、長居をしたので、しっかり請求して頂いて大丈夫ですよ?」
「ふふ。今日は特別サービスです。行きつけにしてくれるのでしょう? 次回は是非、お連れ様といらしてください」
「えっ?」
「気に入ってくれた人の違いは分かるんですよ。私も長くやっておりますのでね」
「お兄さん! 良いのよ! マスターは全然お金儲けを考えない人だから! 気にしないで甘えちゃいなさい!」
二人組の女性が横槍を入れる。
こういう喫茶店は初めてだし、そんなものなのかと自分を納得させて笑顔を返し、僕はスマホをかざし支払いを済ませた。
「ご馳走様でした。また来ます」
「お待ちしております」
つくづく良いお店だったな。
ただ一つ不満があるとすれば『次はお連れ様と』って言われたけど、僕は今のところモテ歴ゼロだ。
マスターの期待には応えられない。
もし今日のダブルデートに成功すれば話は別だけど、デートに失敗したら涼太でも連れてくるか。
一応、お連れ様には違いないしね。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる