命の質屋

たかつき

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自己紹介

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 ――ピロリロリ。 ピロリロリ。

 喫茶店【ク・ヴォワール】を出て、約束のスイゼリアに向かう途中、電話が鳴った。涼太からだ。

「もしもし」

『あと十分くらいでスイゼリアの前に着くけど、ちゃんと来てるか?』

「うん、こっちも十分くらいで着くよ」

『OK。じゃあ、入り口で待ち合わせな』

「了解」

 なんだかニヤけた声に聞こえたけど、緊張してきたのがバレてるのかな。ああ、ドキドキする。

 少し早足で歩き、スイゼリア前に到着した。
 辺りを見渡したが、まだ近くに涼太達の姿は見えないので、ほっと一息をつく。

 間に合って良かった。
 危ない危ない。予定より早い可能性を考えてなかった。
 あんなに早起きして二時間も前に到着したのに、初対面での遅刻は いい加減な男 だと思われかねないもの。
 
「徹! 早かったな!」

「中西君、おはよう」

 声の方を見ると、涼太と香菜ちゃん、そして初めて見る女性が立っていた。香菜ちゃんとは半月振りくらいだけど、相変わらずバッチリメイクが決まってる。読者モデル経験者ってのは伊達じゃないね。
 けれど、隣の女性も負けず劣らずの可愛らしい女性だ。
 とても彼氏が居ないようには見えないけど、偶々たまたま別れてフリーになったのかな。
 もしかして、本当にドッキリだったりして。

「あ、お、おはよう。僕も今着いたところだよ。えっと、初めまして、涼太の友達の中西 徹です」

「初めまして、香菜の友達の石田いしだ 朋美ともみです」

 石田 朋美ちゃん。なんて素敵な人なんだ。どうしよう、石田さんって呼んだ方が良いかな? いや待て、涼太レクチャーを思い出せ。

 モジモジして頼りない姿を見せるくらいなら、失礼にならない程度の馴れ馴れしさの方がマシ。

 確か、そんな事を言っていた筈だ。

「朋美ちゃん……て呼んでも大丈夫かな? 宜しくね」

「はい。徹くん、宜しくね」

 簡単な挨拶を交わした所で、涼太と香菜ちゃんのニヤけ面に気が付いた。途端に恥ずかしさが込み上げる。

「な、何だよ!」

「あはは! 赤くなってるぞ」

「うんうん。二人共可愛いすぎ!」

「ちょっと照れるね。私も顔が熱い」

 顔が真っ赤になってるのは自分でも分かる。
 悔しいけど、隠しようがない。心臓なんて爆発寸前だ。

「取り敢えず中に入ろうぜ。暑いし」

「うん。そうだね」

 店内に入った僕達は四人掛けのテーブル席に案内された。
 涼太の正面には香菜ちゃん、僕の正面には朋美ちゃんという位置づけで、男女が向かい合って座る形だ。
 
 それぞれ好きなメニューを注文し終え、改めて自己紹介をする事になった。

にちロボだい(日本ロボット工業大学)四年の秋山あきやま 香菜かなです。趣味は絵を描く事とダンスをすることです。卒業後は本間電気(機械)に就職予定です」

「わぁ。うふふ。宜しくお願いします!」

「本間電気か、良い所に決まったね!」

 何故か初対面という設定の、茶番ありあり自己紹介が始まった。

「いや、まさか同じ大学だったとは、 。俺は坂上さかがみ 涼太りょうた。日ロボ大の四年で、卒業後は辰野たつの(コーポレーション)に決まってるよ。宜しく!」

「ぷっ。フルネームありがとう。宜しくね!」

「駆動型大手の辰野コーポレーション? 凄い」

「ね。辰野に入れる人なんてそうそう居ないのに」

 朋美ちゃんが素で驚いている。
 そう、涼太はちゃらちゃらして見えて、凄い奴だ。
 あ、そういえば僕も知らない設定だった。

「ええっ? 涼太くんも日ロボ大だったんだ? 凄い、偶然! それなら卒業式で会うかもしれないね!」

「だな!」

「二人共ノリノリだね」

「ええ? 何の話かな?」

「ふふ、じゃあ次は僕が。中西なかにし とおるです。実は僕も日ロボ大の四年で、卒業後は小さな会社だけど、コジマ工業(機械)に入社予定だよ。営業からだけどね。真面目な事くらいしか取り柄が無いけど、宜しくお願いします」

 我ながら真面目な自己紹介だなぁ。
 特技……今ならあるけど、流石に言えないもんね。

「真面目、良いじゃん。徹からは何故だか天然な匂いもするけど、まぁ気の所為か」

「そうそう。真面目は良いよ。でも確かに、なんか天然って感じがするね。どうしてかな?」

「私も真面目って凄く良いことだと思う。コジマ工業だって有名な会社だし。みんな凄いね! ただ私にはちょっと分からないけど、徹くんは天然……なのかな? ふふ」

「て、天然じゃないよ!」

 僕ってもしかして、天然なのか?

「あは! じゃあ、次は私が――」
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