命の質屋

たかつき

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 嬉しさからくる動悸と、打撲による目の下の痛みで眠れぬ夜を過ごした僕は、朝一あさイチすぐに涼太に助けを求めた。

 というのは、もちろん明日の約束デートについてだ。なにせ僕は素人だから。

 ◀どんな格好をすれば良い? 
 ◀どんな話をすれば良い? 
 ◀食事はどうすれば良い? 
 ◀目的地は? 

 こんな風に、思い付く全ての事を聞いた訳だけど

 ▶自分で考えろ。
 ▶ふぁいと。
 
 なんて淡白な返事が来て終わった。薄情者め。

「はぁ、どうしよう」

 ひとちてみても何も変わらない。とはいえ、今から上級者のデートプランなんか調べたって付け焼き刃にしかならない。
 なんたって誤魔化しようのない初心者だからね。
 でも、せめて行き先くらい考えて連絡しないと。

 二時間ほど頭を悩ませた僕は、正直言ってまだよく知らない朋美ちゃんが好きそうな事イコール身体を動かす事と考え、何かしらの運動デ……デートにしようと決めた。

 そこから更に一時間ほど考え、明治神宮近くにあるアイススケート場に行くことに決めた。
 集合時間は午前十時。
 明日は土曜日だから少し混むかも知れないけど、オープンと同時刻に行けばすんなり入れるんじゃないか、という希望的憶測込みの時間設定だ。

 長袖、長ズボンと軽い防寒は用意しなきゃ駄目だけど、それ以外は貸してもらえるし、食事を食べる所も国立競技場周りなら選べるくらいあるから、デート初心者の僕にはうってつけの場所って訳。
 もちろん、要所要所ようしょようしょでは朋美ちゃんに確認を取り、了承を得ながら決めた。

 状況的に、余程酷い計画を立てない限りは朋美さんも了承してくれるだろうから、僕のプランの押し付けとも言えるけど、楽しんでくれたら良いな。

 ふう、ドキドキする。
 ちゃんと話せるかな。
 気持ち悪く思われないかな。
 やっぱ無理ですってフラレないかな。

 ああ、やっぱり一人で考えてるとネガティブな僕が止めどなく押し寄せてくる。涼太にメッセージでも送ろう。
 
 ◀朋美ちゃんと明治神宮のスケート場に行くことにした。
 ◀気持ち悪くないかな?
 
 返事が来なかったので、ふりかけで朝ご飯を食べ、普段やらない腕立てや腹筋をしていると、通知音が鳴った。

 ▶なんでキモいんだよ。笑
 ▶朋美ちゃんが良いって言ってんなら良いんじゃない?
 ▶知らんけど。 
 
 そりゃそうなんだけど……いや、それが全てか。
 
 ◀そうだよね。
 ◀少し安心したかも。
 ◀明日は当たって砕ける!

 ▶砕けんのかい。笑
 ▶まぁ、頑張れ。

 こうして僕は、デートの準備やら出来る限りの身だしなみに精を出しながら過ごし、夕方六時くらいに溜まっていた眠気に襲われて爆睡した。

 それにしても最近、僕の毎日には急展開が多い。
 ありがたい事に、嬉しい展開ばかりだけどね。

 正直言って、この頃の僕は舞い上がり、すっかり忘れていた。【命の質屋】の事を。
 
 
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