命の質屋

たかつき

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当日 朝①

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 午前七時。
 
 僕はすでに電車の中だ。
 後三十分もあれば目的地に到着するだろう。

 ちなみに、約束の時間は十時だ。
 ……分かっている。でも良いんだ。
 恋愛初心者の僕には、早すぎるくらいが丁度良い。
 
 電車を降りた僕は、いつも使っているリュックの他に、寒さ対策の厚着を入れた鞄を脇に抱え、馴染みのない景色を浅い気持ちで眺めつつフラフラ歩き、やがて待ち合わせ場所に指定した国立競技場の階段の隅に腰を下ろした。
 ある程度の人混みは覚悟していたけど、思ったより人は少ないみたいだ。まだ早い時間だからかだろう。
 何人か歩いている――というか、ウォーキングしている人達が居るくらいで、僕の周りに人は居ない。

 七時四十六分。あと二時間ちょっと、スマホであれこれ眺めてたらあっという間でしょ。

 ――何々? 未確認事件のうちの三割が超能力による事件の可能性。対策課が増える難解事件に対応するために新たな部署を設立。
 根拠はなんだろう。超能力なんてものが現れる前から人々は残酷な事件を起こしてきたし、未解決な事件だっていっぱいあった筈なのに。
 それに超能力者の数なんて知れてるでしょ。十億分の一って話が本当ならだけど、そんな少数に対して新たな部署を作るとか、無駄金にならなきゃ良いけどね……。

「徹くん?」

「フィアー!」

「わぁ!?」

 閑静な朝の空に情けない叫び声が響き渡る。
 たまたま近くをウォーキングしていた人が物凄い勢いで振り向いたので、慌てて頭をペコペコして誤魔化した。

「朋美ちゃん!?」 

「あはは! 徹くんのびっくりした声にびっくりした! あははは! ああ、徹くん、おはよう!」

「だってまさか居ると思わないし! あ、お、おはよう! まだ八時前だよ?」

「うん。お互い早く来すぎちゃったね。スケート場、まだ暫く開かないし、散歩でもしてよっか」

「散歩! 良いね! 行こう! あれ? 朋美ちゃん、そういえば荷物って、その小さい鞄だけ?」

「あ、うん。早く着いたから歩き回ろうかと思って、駅のロッカーに入れてきたんだよね。持ち歩くにはちょっと大きい荷物だからさ。ほら、私、か弱い女の子だし?」

「確かに!」

「あ、いや、全然か弱く無いです、ごめんなさい」

「へ? ああ! そうじゃなくて……って、そうじゃなくても失礼だけど、この下のロッカーに入れてくれば良かったんだね。全然思いつかなかった」

 朋美ちゃん、天才か? 
 ここは地下鉄の駅から上がって直ぐの所にある階段だ。
 下のロッカーに入れてくるだけで身軽になれるもんな。
 ここから道路を渡ればアイスアリーナだし、あちこち彷徨うろついても最終的には此処を通る事になる。
 完璧じゃん。

「徹くんは時間まで動き回るつもりじゃなかったから預けようと思わなかった。ってだけな気もするけどね」

 確かに。それもそうだ。
 これがアクティブ度合いの差か。

「ちょっと置いてくるから、待ってて」

「おっけー!」

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