命の質屋

たかつき

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当日 朝②

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 何となく縁起の良い七番ロッカーに貴重品以外の荷物を入れ、急いで朋美ちゃんの元に戻った僕は、気付いてしまった。今日初めてちゃんと朋美ちゃんの事を見た、と。

 なんという可愛さだ。
 目を奪われ、呼吸を忘れる。

「徹くん?」

 しまった! 固まっていた! 
 涼太せんせいが言ってた事を思い出せ! 

『良いと思った事は直球で伝える。嫌だと思った事はめっっちゃ下手に腰を低く伝える。それが正しいモブ男子の在り方だ。忘れるな! 自分がモブ男子だということを!』

 ちょっと待て、だれがモブ男子だ!
 だけど今は言う事を聞くしか無い!

「ああ! ごめん。なんかさっきは驚きすぎてちゃんと見てなかったけど、今日の朋美ちゃんも凄く可愛いなって思って……て、思って……思っ……」

 ぐひぃ! 恥ずかしいいい! 合ってる? 本当に合ってるのこれ!? チャラ男みたいになってない!?

「えっ!? あ、あは! ありがとう、この服、私もお気に入りなんだよね、可愛いでしょ? へへ」

 咄嗟に服を褒めた感じに軌道修正してみせた朋美ちゃんだけど、その可愛らしい耳は見る見るうちに真っ赤に染まっていく。
 もちろん僕の耳も真っ赤だろう。見なくても分かる。
 心臓はドンドンと重低音を発しているし、今にも口から虹を出せそうな感じがする。

「あ、うん! 凄く、似合ってます」 

「えっと、じゃあ、歩こうか」

「そ、そうだね!」
 
 慣れない余計な事を言った所為で、めちゃくちゃ緊張してきたんだけ――
 
「ふふっ」

 え? 急な笑顔。可愛い。こんな可愛い人の横に僕如きモブ男が居てごめんなさい。でも付き合いたいです。

「どうしたの?」

「徹くん『フィアー!』って言ってたもんね? きっと、心の底から恐怖を感じたんだよね」

 思い出し笑いでした。

「そう、まさに恐怖で……って、ちょっと! あれはもう忘れて! めっちゃ恥ずかしかったし、ウォーキングしてた人に睨まれて怖かったし!」

「あはは! 確かに、あのウォーキングしてた人もフィアーだったね」

「ぷはっ! うん! 怖すぎてめっちゃ謝っといた!」

 それから僕達は【サウンド・ワン】での事や昨日の話、たまに敬語になるけどあれは何? とか、他愛もない話をしながら広い敷地を歩いた。

 途中で聞いたけど、朋美ちゃんは北海道出身らしくスケートは初めてでは無いとか。というか、北海道では幼稚園からスケート授業なるものがあるらしい。本当かな?

 僕? もちろん初めてだ。
 でも昨日からプロスケーター達の動画を見漁ってきたので、イメージだけは完璧だ。

 時間が経つごとに行き交う人も増えてくると、通りすがりざまに朋美ちゃんに視線を送る人が何人もいた。

 朋美ちゃん本人は慣れてるのか、気付いて無いのかな? と思うほど全く気にしてない様子でお喋りをしていたけど、僕にはその人たちの気持ちが分かる。

 だって――この娘何者だろう。
 って考えちゃうくらい可愛いもんね。

もしかしたら 《え? 横の男、彼氏? ないないない、友達か親戚だろ》 とか思われてるかも。仕方ないけど。

 神様、超能力なんて要らないので、どうか朋美ちゃんとお付き合いさせて下さい! お願いします!

 ◇◇◇

 ◇◇

 ◇


 時刻は午前九時四十分。

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