超短編集

柳井 椿

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6月5日のラブレター

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ネイビーの空に赤い光と黄色い光を見た帰り道
そのふたつの光がひとつの機体から光を放っていることに妙に感動してしまった。

ネイビーの空の果ての淡いブルーの空を切り裂いて飛行していたかと思うと
同じブルーでも表情を変えられるのがこの世界なんだと妙に感動してしまった。

あなたとどこかへ行きたいと願った日もあった。
あなたと地球の裏側でも木星でもどこへでも行ければと思った日もあった。

あなたが今私の隣で薄日に照らされて、カーテンにくすぐられて、おだやかに昼寝をしている。

ネイビーの空を超えてきたあなたには想像もできない未来だったんじゃないかしら。

私が恋したあなたはどんな人なのか今もわからないし、すべてを知ることは生涯ないことはわかっている。
ただ、寝息を立てて安心しているあなたの顔を見ていたらここがあなたにとって永遠だってわかる。

いくつもの運命の中で私は今立ち尽くしているけれど、この穏やかな寝息だけは守ってあげたいの。
たとえ明日にでも行かなければならないところができたとしても、あなたの安住の地であり続けたい。

ネイビーの空に赤い光と黄色い光があった。
あなたはきっと赤い光。ネイビーとは反対色の赤い光。

ブルーにはネイビーと淡さとグラデーションがある。
だから少しだけ黄色い光を気にしてみようと思うの。
心配しないで、あなたのホームであることは変わらないし、まどろみを邪魔するようなこともしないから。
でも黄色い光を少しだけ見つめてみようと思うの。

ああ、黄色ってあなたとは反対色なのね。
だから私は、どうしても黄色い光を試してみたいのかもしれない。
包んであげられるか試してみたいの。

黄色い光の彼もまた孤独ゆえに飛行機でここに着陸しようとしている。
飛行機に乗るあなたも彼も行先がわかっていたのね。

ふたつの光は同じ機体から光を放っている。
機体が離陸したとき、あなたたちはいったい何を思い何を見ていたのだろう。

着陸しようとしている今、彼は言う。
「変な女がいるなあ。新種か?それとも天然記念物か?笑」

今日から変わる世界を彼は予感すら持てない。
その果てしない世界が広がる記念日の今日を彼はいつもどおり
うんざりした気持ちで仕事に向かう。

私の発するこの思いを彼が感受できますように…
「いってらっしゃい!」
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