空のおとしもの

stardom64

文字の大きさ
9 / 14

 第四章 地上の森 

しおりを挟む
 



 ルンルン♪



 上機嫌で坂道を下る私。



 行きにほぼ何も入っていなかった手持ちのかごには女神様に分けてもらったたくさんの木の実ときのこでいっぱい。



 スープも少し、分けてもらったし…。



 これで村も安泰かな。







 わたしは高い木々を抜けると、村への道を急いだ。







 ☆☆☆







 ごほごほっ。



 と咳をする村の人たち。



 村では流行り病が流行中。



「みんなー。スープもらってきたよー。」



 村の真ん中にある広場に集まるみんな。



 いっぱい食べて元気出してもらわなきゃ。







「とってもいいにおい。」



「イブちゃん、これ、どこのスープ?」



「女神さまのスープだよ!」



「めがみさま?」



「うん!森の奥の神殿の!」







 ☆☆☆







 カッーカッー。



 カラスがねぐらに帰り、太陽が沈み始める時間帯。



 森の中に浮かぶたくさんの炎。



 そしてたくさんの足音。



「なっ、ほんとにこの道であってるのか?」



 森の木々の間をかき分けるように進んでいく男たち。



「さあ、もう何百年も前の道らしいからな。」







 











 人間の女の子が帰った夜。



 長イスの上で寝ていると何やら外から騒がしい音。



 いくつもの足音と、炎の燃えるようなパチパチという音。



 眠い目をこすり、起き上がるあたし。



「何の音だろ?」







 ☆☆☆







 ドンドンドン。



 神殿の前でたたかれる太鼓。



 中心で大きく燃える炎。



 そのわきで祈りをささげるたくさんの人間たち。







「なに…これ?」



 試しに入り口から覗いてみる私の前にいたのは大勢の人間。



 女神様―。とか何とか言ってる。



 女の子と同じ村の人たちだろうか。



 というか、あたしたち女神様じゃないんだけど。







「アリアー。どうかしたの?」



 眠たい目をこすり、起きてくるアリア。



「って、え?」



「どういう状況?」







 ☆☆☆







「おいっ、あれ、女神さまじゃねえか?」



「なんとお美しい…。」



 次々にひれ伏す人間たち。



 隠れてたのにみつかってしまったみたいだったので仕方なく、外へ出るあたしたち。



「あはは、どーもー。」











「女神様、この度は村を救ってくださり…。」



 集団の中で声をかけてくるひげを生やした人。



 たぶん、村長…さんかな?



「救ってくださり?私たち、何かした?」



「とんでもございません。女神さまの妙薬で、村を病から救ってくださったではありませんか。イブの持ってきた薬がなければこの村は…。」







「妙薬…?薬…?」



「そんなの入れたっけ?」



 マリアに聞くと、うんうんと首を横に振る。



 あたしの頭の中で思考がぐるぐる一回転。



 特にそんな記憶はないけど、調味料以外は現地調達のはずだし…。



 あっ。



 そういえば、調味料の代わりに…。



(なんか味が足りない。そうだエリクサーいーれよっ。)



「あっ…。」







「それで女神様、ご相談なのですが…。」











「村を救ってはいただけないでしょうか。」







「もちろん、タダでとは申しません。問題が解決した暁には、お二人の女神さまの神殿を建てさせていただきます。」



「神殿?」



「神殿‼」



「えへへ、それちょっといいかも…。」







「ではさっそく、村の方へ、ご案内いたします。」







「おいっ、女神さまのお通りだ。道をお開けしろっ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...