悪役令息は犬猿の仲の騎士団長に溺愛される。

佐倉海斗

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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

04-5.

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「リリィ。なぜ、俺の寝室の前にいた?」

 ブラッドは再び問いかける。

 その質問に対し、リリィは覚悟を決めたかのように自身の両手を握りしめる。

「俺たちが寝室にいた間、ずっと、いただろう?」

 ブラッドですら気づいていたのだ。

 警戒心の強いアルバートが気づかなかったとは思えない。恐らく、アルバートが寝室を出た時にもリリィは立っていたのだろう。

 ……あいつのことだ。声もかけなかったんだろうな。

 寝室でのやり取りを聞かれていたことに対する羞恥心など、アルバートにはない。それどころか、手を出す隙など存在しないのだとわからせることができたはずだと前向きにとらえているはずである。

「情事の声など成人もしていない子どもが聞くようなものではない。それとも、誰かがお前に対する嫌がらせの為に、そこに立ってるように命じたか?」

 ブラッドの言葉に対し、リリィは震えているだけでなにも言わなかった。

 ……命じたのは男爵か。

 侯爵家の使用人同士の嫌がらせならば、リリィは口を閉ざさなかっただろう。ブラッドは常識のない振る舞いをするリリィに対し、呆れたような視線を向けてはいるものの、罵倒する言葉の一つも口にしていない。

 もしかしたら、助けてくれるかもしれないと自分に都合のいい考え方をしても許されてきた年代だ。女性と呼ぶのには、まだ幼さが残っていた。不似合いな化粧は年齢を上に見せる為の努力なのかもしれない。

 ……わざわざ、キャロラインと同じくらいの子どもを寄越すとは。

 それは偶然だった。

 しかし、ブラッドの同情を引き出すのには十分すぎた。

「……まあ、いい。これからはそのような無駄な真似は止めることだ」

「おっ、お咎めは、ないのですか?」

「俺はしない。妹と同じような年代の子どもを罰する趣味はないんでな」

 ブラッドは視線をリリィから外す。

 ……仕事に行ったわけではないのか。

 書類仕事を片付ける為、かなりの余裕をもって仕事場に向かったものだと思っていたアルバートの姿が見えた。侯爵家の嫡男として厳しく育てられ、礼儀作法を叩き込まれているはずのアルバートが珍しく廊下を走っている。

 それも全速力だった。

 あっという間にブラッドの目の前に到着したアルバートは、容赦なく、リリィの頭を掴んだ。それに対し、リリィはか細い悲鳴を上げ、助けを乞うようにブラッドに両手を伸ばしていた。
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