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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる
03-7.
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霊視の力を持つとは言え、それ以外の才能は、何一つ優れていない香織にはそれらを祓うことすら出来ない。
むしろ、足手まといを増やすようなものである。
(連れ戻す? 狭間から?)
霊視の力を持つ香織からすれば、狭間の世界は日常である。
(そんなことができるの?)
霊視の力を持たずとも、心身共に疲れてしまえば、狭間の世界に足を踏み入れてしまうこともある。
「安心せよ。無理な真似はさせぬ」
それは、狭間の世界と隣り合わせに生きているからこその現象である。
その現象を覆し、連れ戻すのは困難だった。
(それに、神隠しを封印するって?)
旭は、何をするつもりなのだろうか。
香織には、理解をすることが出来ない。
しかし、狐塚町を守る神の言葉を否定することも、拒絶することも許されない。
神に仕える者としては、与えられた仕事を成功させなければならないのだ。
(そんなの、どうやってするの?)
挨拶すら成功させることが出来なかった香織には、荷が重すぎる。
(断らなきゃ。わたしには、できないって)
それを口にしようとしては、言葉を詰まらせる。
弱音を吐きたくても、生まれてから十七年間、ずっと暮らしてきた狐塚町や狐塚稲荷神社を思えば、弱音を吐けない。
「……あ、の」
旭の機嫌を損ねる可能性を生み出してはいけない。
それは、幼い頃から教えられてきた巫女としての役目だった。
例え、どのような命令を下されたとしても、旭の求める物を差し出さなければいけない。そうすることにより、この町の安全を確実にするのだ。
「え、っと」
その教えを守る事が身についている香織だからだろうか。
恐怖心を抱きながらも、意見を口にすることが出来なかった。
(どうしよう)
できないことを引き受けてしまえば、足手まといになるのは目に見えている。
「手を貸してくれるであろう? 香織」
旭は香織の素質を見抜いたのか。
それとも、都合のいい協力者が他に見つからなかったのか。
代々神主を務める狐塚一族の中でも、霊視力が高いだけで役に立たないと影口を叩かれて育った香織のことを気にも留めていなかったのか。
旭の本音を理解できず、香織は恐怖で震えている手を強く握りしめた。
「……はい。わたくしの力で、その、お役に立てるのでしたら、ですけど」
旭の言葉には、恐る恐る、返事をするしか出来なかった。
「そうかい。引き受けてくれるのかい」
その自信のない答えを聞き、旭は楽しそうに笑い声を上げた。
鈴の音のように綺麗な音を立てて笑う声を聞きながらも、香織は、不安と恐怖に押し潰されそうであった。
(うっ、わたしのバカ。やっちゃったよ……)
後悔をする香織の心に気付くことなく、本殿には、旭の笑い声だけが響いていた。
むしろ、足手まといを増やすようなものである。
(連れ戻す? 狭間から?)
霊視の力を持つ香織からすれば、狭間の世界は日常である。
(そんなことができるの?)
霊視の力を持たずとも、心身共に疲れてしまえば、狭間の世界に足を踏み入れてしまうこともある。
「安心せよ。無理な真似はさせぬ」
それは、狭間の世界と隣り合わせに生きているからこその現象である。
その現象を覆し、連れ戻すのは困難だった。
(それに、神隠しを封印するって?)
旭は、何をするつもりなのだろうか。
香織には、理解をすることが出来ない。
しかし、狐塚町を守る神の言葉を否定することも、拒絶することも許されない。
神に仕える者としては、与えられた仕事を成功させなければならないのだ。
(そんなの、どうやってするの?)
挨拶すら成功させることが出来なかった香織には、荷が重すぎる。
(断らなきゃ。わたしには、できないって)
それを口にしようとしては、言葉を詰まらせる。
弱音を吐きたくても、生まれてから十七年間、ずっと暮らしてきた狐塚町や狐塚稲荷神社を思えば、弱音を吐けない。
「……あ、の」
旭の機嫌を損ねる可能性を生み出してはいけない。
それは、幼い頃から教えられてきた巫女としての役目だった。
例え、どのような命令を下されたとしても、旭の求める物を差し出さなければいけない。そうすることにより、この町の安全を確実にするのだ。
「え、っと」
その教えを守る事が身についている香織だからだろうか。
恐怖心を抱きながらも、意見を口にすることが出来なかった。
(どうしよう)
できないことを引き受けてしまえば、足手まといになるのは目に見えている。
「手を貸してくれるであろう? 香織」
旭は香織の素質を見抜いたのか。
それとも、都合のいい協力者が他に見つからなかったのか。
代々神主を務める狐塚一族の中でも、霊視力が高いだけで役に立たないと影口を叩かれて育った香織のことを気にも留めていなかったのか。
旭の本音を理解できず、香織は恐怖で震えている手を強く握りしめた。
「……はい。わたくしの力で、その、お役に立てるのでしたら、ですけど」
旭の言葉には、恐る恐る、返事をするしか出来なかった。
「そうかい。引き受けてくれるのかい」
その自信のない答えを聞き、旭は楽しそうに笑い声を上げた。
鈴の音のように綺麗な音を立てて笑う声を聞きながらも、香織は、不安と恐怖に押し潰されそうであった。
(うっ、わたしのバカ。やっちゃったよ……)
後悔をする香織の心に気付くことなく、本殿には、旭の笑い声だけが響いていた。
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