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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる

04-1.旭の誤算と自信のない巫女の香織

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 太陽が沈み、数時間が経過した。

 科学文明の発達により、日付が変わってもなお、光が灯されている商店街を通り抜ける旭たちの足取りは止まることがなかった。

 犯罪防止用に設置されている防犯カメラに映るのは、巫女服を着用し、その手にはお祓い用に準備をしたのであろう鈴が付けられた榊が握られていた香織だけである。

 その異様な光景を気に掛ける人はいない。

「迷わないようについてくるといい」

「は、はい」

 緊張した表情をした香織は、俯き、旭を追いかけるように歩く。

 香織の隣には、表情一つ変えずに春博が歩いていた。

 三人が向かうのは、狐塚稲荷神社の前にあり、商売繁盛の稲荷神の恩恵を受けていると囁かれている商店街を抜けた先にある三竹山。

 狐塚町にある唯一の山である。

(夜間に人の子を連れて歩くべきではなかったか?)

 旭は、香織の父親である光彦には許可を取って来た。

 一方的に宣言をしたとも取れる内容ではあったが、連れていくことを許されたのだ。

(しかし、飛んでいくと気を失いそうだ)

 とはいえ、霊視の力を持たない者からすれば、日付が変わる頃に巫女服を着た少女が俯きながら歩いているのだ。

(人の子とは、不便な存在よな)

 普段から身に着けている黄色の羽織を脱ぐ。

 そして、後ろを歩いていた香織に投げつけた。

 地面に落とさないように、慌てて畳みながら、旭を見つめていた。

「畳まずともよい」

 その視線に気づきながらも、旭は七尾を左右に揺らす。

 頭には、二つの獣の耳が同じように揺れている。

 人間である香織を不便であるとは感じつつ、それなりに気に掛けているようである。
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