狐塚町にはあやかしが住んでいる

佐倉海斗

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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる

04-2.

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「それを羽織ると良い」

 旭が身に着けている物の多くは、年月を得て付喪神になった物ばかりである。

 それも、霊力の高い白狐の神である旭の傍に置いてあったからであろう。

 本来ならば、付喪神が得るはずのない力を持つことが多い。

 旭が何をする度に鳴る鈴も、その一つである。

「え? ええ? で、でもっ」

 羽織を受け取った香織は、旭の言葉を直ぐには理解出来なかった。

 本来ならば、神の私物に触れるなどあってはならない。

 それを知っているからこそ、香織は旭から渡され、それを羽織るように言われても、すぐに従うことが出来なかった。

(しかし、死霊が騒々しいな。これは、人の子を喰われたか?)

 黄色の羽織を脱いだ旭の視界には、多くの行き場を失った魂が浮遊している。

 現世への未練が強いのだろう。

 黄泉に渡れず、苦悩のまま、取り残されている魂の声を聞く。

 悲鳴に似た声は、全て助けを求めていた。

(さて、どうするか)

 どうやら、魂が溢れ返っている原因は、目的地にあるようだ。

 助けを求める魂の声から判明したことを考え、旭は首を傾げる。

 付き従っている春博と香織にも、詳しい状況を告げないまま、魂の声を頼りに突き進んでいく予定だった。

 しかし、それは、少々困難であるようだ。

 狐塚町の中に溢れ出した魂は、目的地である三竹山に囚われている。

 そのまま、狭間に迷い込んだ人間を連れ出そうとすれば、当然、助けを求める魂に襲われることになるだろう。

(春博に死霊を喰わせるか?)

 彷徨っている死霊の魂とは言え、鬼である春博にとっては食料にすぎない。

 しかし、この町に彷徨っている霊魂を喰うとなれば、時間が足りなくなってしまう。

 被害を被ったのは、狐塚町に住む人だけではない。

 それも、何十年の年月を掛けて喰らっていたのだろう。

 あやかしや荒魂が、人間を喰うのは自然の摂理である。

 古の時代から続けられていた連鎖を断ち切るつもりは、旭にはなかった。
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