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第一話「悪は咲き誇る」

01-6.告げられた言葉は平穏を乱す

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「証拠を出せ。僕が手紙を出したというのならば、なにかしらの証拠はあるのだろうな?」

 これは、婚約者らしいことは、なにもしてこなかった私への当てつけなのだろうか。

 彼に興味を抱いていなかったのは事実である。

 彼との婚約に対し、厄介事を押し付けられたと思っているのも事実である。

「証拠ならば、こちらに」

 愛用している鞄から手紙を取り出し、アレクシスたちに文字が見えるように手紙を開いた。

 証拠隠滅の為に破ろうとする可能性があるから渡すことはしない。

 念には念を入れて持参したのは送られてきた手紙の複製だ。

 強引に奪われるようなことがあったとしても、証拠隠滅にはならない。

「……それを渡せ」

「いえ、渡せません」

「いいから僕に従え!!」

「いいえ。渡すことはできません」

 普段ならば送られて来ないものには気を付けろと、なにもかも警戒をするようにとお父様の言いつけはやはり正しかった。

「証拠は見せました。私は確かにこの手紙によって貴方に呼び出されたのです」

 これは偽物だ。

 それでも、アレクシスにとっては都合が悪いものなのだろう。

「遠目で見てもわかるでしょう?」

 本人の文字であるのか、鑑定士に見てもらえば真似をされても本物か、偽物か、見破ることはできる。しかし、この手紙のように私的な内容のものを鑑定してもらうことはあまりない。

「この指摘されても直せなかった癖のある文字が、アレクシスからの手紙だということを証明しているのも同然です」

 だからこそ、偽物であるのにもかかわらず、癖があるからと信用を得てしまうことがある。それを知らないわけではないだろう。

 手紙を取り返そうとするのはわかっていた。

 だからこそ、奪われた時のことを想定し、本物は部屋に置いてある。これは魔法で複製したものだ。アレクシスはそれも見抜けないのだろう。
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