悪役令嬢ですが、勘違い聖女から王国を救うことになりました

第一話「悪は咲き誇る」

０１－９．告げられた言葉は平穏を乱す

「学ぶべきことは一つではありません。アレクシス、彼女を大切にされるのも一つの勉強として捉えておきましょう」

「お前がライラに意地悪をするのは意趣返しのつもりか？」

「いいえ、そのようなことはしません。ご自分で理解されなくては意味がないでしょう？」

　彼女はアレクシスに縋りつくことしかしないのだろうか。

　男性に媚を売り、愛嬌を振り撒き、自分を大きく見せるのは女性だからこその生き抜き方だ。

　理解はしているが、実際に目にすると寒気がする。

「ご自身の立場を見直す為の悪い見本となることでしょうね」

　在学中にするべきことは山のようにある。

　そこにはアレクシスに構っている暇はないのだ。

「用件がないのならば帰らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか？」

　彼には理解ができないだろう。

　私は私の為に努力をしているのだ。

　そうやって、自分自身に暗示をかけないとやっていけないことだってある。

「ふん。さっさと帰れ」

　なにを偉そうに言っているんだ。

　その口が引き裂けるほどに引っ張ってやりたい。

「なにを見ているんだ。ライラが怯えているのがわからないのか？　さっさと帰ってくれ。お前がいると僕のライラが悲しむだろう」

　平手打ちをしたら気分が晴れるだろうか。
　いや、暴力はいけない。

　殴りたい気持ちはあるが、仮にも婚約者に手をあげてはいけない。

「……それでは失礼いたします」

　さっさと退散をする。

　なぜだろうか。関わるだけで厄介事を押し付けられる予感がした。