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第一話「悪は咲き誇る」

02-11.理不尽な扱いには慣れている

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「学園に戻り、協力者と合流できるように指示を出してある」

「陛下のご意向を叶えるのが私一人では役不足だろうとは思ってはいましたが、やはり、協力者がいるのですね」

「気心の知れた者に声をかけてある。お前だけに負担を強いるわけにはいかないからな。陛下にもその辺りはご配慮いただいている」

「ありがとうございます」

 使い捨ての駒として扱われていないのは、私がブラックウッド辺境伯爵家で好待遇を受けている証拠だろう。

 実力主義の家風は血の繋がった子どもである私や弟にも向けられている。

 実力に伴わない行動をすれば叱責を受け、お父様は可能であると判断すれば無理な役割であろうとも与えられる。

「当然のことだ。未成年の娘に全てを押し付けるわけにはいかないだろう」

 我が家ではそれは当たり前のことだった。

 ジェイドもわかっているだろう。同じ環境で育てられたのだから、お父様がお怒りになるのも理解をしていることだろう。

「問題が生じた場合はすぐに手紙を寄越すことを忘れるな」

 恋を貫き通したいというのならば、姉として応援をするべきなのではないだろうか。恋から眼が覚めなければ放っておいていいとお父様は言われていた。

 呆れているだけなのかもしれないが、お父様は妨害をするつもりはないのだろう。

 それならば、私は、姉として弟の恋を応援しても良いのかもしれない。

 ライラック・ロベリアが弟を傷つけるような行為をしていなければ、姉として弟の恋を応援しよう。例え、それによりジェイドに嫌われても仕方がない。

「いいか、ダリア。相手がどのような言葉を吐き捨てようともこれだけは忘れてくれるなよ。ブラックウッド辺境伯爵家は極秘任務を遂行する娘を誇りには思うことはあっても見捨てることはしない。相手の言葉に翻弄されず、その言葉を利用するように裏をかけ。正義はこちらにあることを忘れてはいけない」

 私の浅はかな考えなどお父様は見抜いているのだろう。

 言い切ったお父様に対し、お母様もその通りだと大きく頷いていた。

「条件はそれだけだ。これは国王陛下のご意向により与えられた極秘任務であることを心して行うように。危険な状態に陥った場合、任務の中止も常に頭に入れて行動せよ。優先順位は理解をしているだろうな?」

「はい、理解をしております」

「よろしい。定期報告は欠かさずに行うように。話はそれだけだ、学園に戻って良いぞ」

「ありがとうございます、お父様。ご期待に応えられるようにいたします」

 私は立ち上がるとゆっくりとお辞儀をした。

 社交界では貴族としての礼儀作法も問われる。優雅に振る舞うことは社交界ではなによりも大切なことであるとお母様は何度も口にしていた。


 学園に戻らなくてはならない。

 今から戻れば少しは休めるだろう。
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