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第三話「剣を捧げる男は正義を愛する」

01-7.愛さえあれば幸せだと語る

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 泣いてばかりだったあの頃とは違う。

 迷いのない目をしていた。

「手加減はいらないよ、ダリア」

 ライラックとの出会いにより彼は変わったのだろう。
 間違った方面を歩んでいたとしても、泣くことしかできなかった彼にとっては大きな成長だ。

「これは婚約者としてではなく、最愛の恋人を苦しめる悪を裁く行為だからね」

 恋人を守ろうとするアレクシスの正義を否定しなくてはならない。

 彼だってわかっているだろう。

「形だけの婚約者として決闘を受け入れましょう。全力でお相手をします」

 アレクシスと向き合う。

 剣を交えることになるとは思ってもいなかった。

「準備は良いな? ――これより演習場にて決闘を執り行う!! この場に立ち会うことになった全ての者は決闘の証人となり、騎士の誇りに誓って事実を歪めないことを宣言する!」

 非常識な宣言だ。

 それでは証人を選んだ意味がなくなる。

「3」

 公平な審判とは言ったものだ。

「2」

 アレクシスの味方とはとても思えない。

「1」

 その誤算は私には都合が良い。

 合図とともに踏み込む。

「【火よ、燃え上がれ】【我が剣に宿れ】」

「【風よ、刃となれ】」

 同時に魔法を発動させたアレクシスに対し、私の魔法は囮だ。

 火力を増せばいい。そうすれば彼は制御を失う。

「【火よ、炎よ、我が剣に宿れ】!」

 焦った声だった。

 魔力を込める。風は強くなり、アレクシスの剣に宿っていた火は燃え上がる。

「【風よ、吹け。全てを巻き上げろ】」

 炎は巻き上がる。

 熱さに耐えられなかったのだろう。剣はアレクシスの手から落とされた。
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