悪役令嬢ですが、勘違い聖女から王国を救うことになりました

佐倉海斗

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第三話「剣を捧げる男は正義を愛する」

05-1.彼は全てを知っている

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* * *


 眠れない夜を過ごした。

「……こんなつもりじゃなかったのに」

 散々な日だった。

 恋敵には惨敗、聖女候補には呪いのような予言をされた。

「ダリア……」

 突き放したのは僕だ。

 今頃、彼女は予言を耳にしていることだろう。

「僕は、ただ、君のことが好きなだけなのに」

 写真の中では楽しそうに笑っている君がいる。

 強くならなくてはいけなかったダリア。僕は君を守りたかった。

「君を殺してしまうなんて、そんなの、ありえないのに」

 そんな日は来ない。
 そう思っているのに。

「ただの作り話なんて思えないんだ……」

 ライラックは知っている。

 僕の気持ちを知っている。

 僕たちの未来を知っている。

「ダリア」

 ジョージ公子の言う通りだ。

 僕は弱い。理想論だけではダリアの邪魔になるだけだ。

「ごめんね、ダリア……」

 君を守るつもりだった。僕にできることはなんだってするつもりだった。

 その結果が君を追い詰めることになってしまった。

「ごめんね……」

 写真を握りしめる。

 なぜだろう。予言には逆らえない、そんな気がした。


* * *


「ダリア様!」

 食事をしていると声がかけられた。

 目の前にはわざとらしく目を潤ませたライラックが立っている。

「なにか用事かな? ライラック・ロベリア嬢」

「姉さん!」

「なんだい、ジェイド。彼女は私に話をかけているのだよ。気にしなくていい」

 ジェイドがなにかを言おうとするのを止める。
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