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【外伝4】 破滅を回避できない悪役令息は初恋に溺れる
05-2.
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「嘘じゃないよぉ」
まるでレオナルドが嘘だということを知っていたかのようだった。
クリスは手にしていた杖を愛おしそうに抱き締め、レオナルドに対して、問いかけられるのを待っていたと言わんばかりの表情を浮かべる。
「僕はレオ君が思っているより、レオ君のことを知ってるんだからね!」
「気持ちが悪い奴だな」
「そんな! 本当にそう思っているような顔をして言わないでよぉ」
クリスは泣きそうな顔を作る。
その眼には涙が溜まっておらず、わざとらしい演技もしない。
表情だけで泣きそうだと思わせるような顔をしながら、レオナルドとの距離を縮めようとすり寄ろうとしてくる。
「近寄るな」
レオナルドは迷いもなく杖をクリスに向ける。
「どうして?」
クリスは信じられないと言わんばかりの顔で問いかける。
「お前が嫌いだから」
レオナルドははっきりと言い切った。
その言葉には嘘はない。
数時間前までは、ジェイドのことを愛おしくてたまらないと言わんばかりの顔をして距離を縮めようとしていた姿を忘れられない。
嫉妬に駆られて、衝動的に命を奪いそうになったのは初めてだ。
感情的に振る舞ってしまったのも初めてだ。
そのきっかけとなったクリスから距離を取ろうとするのは、当然のことだった。
「ふふっ」
それなのにもかかわらず、クリスはその言葉を待っていたと言わんばかりに笑う。ようやく、その言葉が聞けたと嬉し涙を流しそうな勢いだ。
……なんだ。こいつ。
理解ができない相手と遭遇した時の対処法がわからない。
レオナルドは数歩引き下がる。
物理的な距離をとることでしか、対処する方法が思いつかなかったのだろう。
「良かったぁ。レオ君。僕のことが嫌いなんだね」
嫌われていることに安心をする人間など、レオナルドは見たことがなかった。
……おかしい。
嫌いな相手に何を思われていても、レオナルドは動じない自信があった。
その自信が崩れようとしている。
まるでレオナルドが嘘だということを知っていたかのようだった。
クリスは手にしていた杖を愛おしそうに抱き締め、レオナルドに対して、問いかけられるのを待っていたと言わんばかりの表情を浮かべる。
「僕はレオ君が思っているより、レオ君のことを知ってるんだからね!」
「気持ちが悪い奴だな」
「そんな! 本当にそう思っているような顔をして言わないでよぉ」
クリスは泣きそうな顔を作る。
その眼には涙が溜まっておらず、わざとらしい演技もしない。
表情だけで泣きそうだと思わせるような顔をしながら、レオナルドとの距離を縮めようとすり寄ろうとしてくる。
「近寄るな」
レオナルドは迷いもなく杖をクリスに向ける。
「どうして?」
クリスは信じられないと言わんばかりの顔で問いかける。
「お前が嫌いだから」
レオナルドははっきりと言い切った。
その言葉には嘘はない。
数時間前までは、ジェイドのことを愛おしくてたまらないと言わんばかりの顔をして距離を縮めようとしていた姿を忘れられない。
嫉妬に駆られて、衝動的に命を奪いそうになったのは初めてだ。
感情的に振る舞ってしまったのも初めてだ。
そのきっかけとなったクリスから距離を取ろうとするのは、当然のことだった。
「ふふっ」
それなのにもかかわらず、クリスはその言葉を待っていたと言わんばかりに笑う。ようやく、その言葉が聞けたと嬉し涙を流しそうな勢いだ。
……なんだ。こいつ。
理解ができない相手と遭遇した時の対処法がわからない。
レオナルドは数歩引き下がる。
物理的な距離をとることでしか、対処する方法が思いつかなかったのだろう。
「良かったぁ。レオ君。僕のことが嫌いなんだね」
嫌われていることに安心をする人間など、レオナルドは見たことがなかった。
……おかしい。
嫌いな相手に何を思われていても、レオナルドは動じない自信があった。
その自信が崩れようとしている。
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