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6話 おかしいだろ
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満点をもらったのは、譽を含めてたったの20人しかいなかった。
全校の人数と比較するとあまりにも少ないが、それも仕方ないことなのだ。
というのも、教師たちの評価基準がとりわけ高く、なかなか満点をもらえる生徒がいなかったのである。
中には、あと少しというところで教師たちの基準を満たせず──もとい嫌がらせによって、惜しくもこの場に立てなかった生徒もいるという。
いつになく真面目な口調で語る生徒会長、紗穂に、譽はある意味戸惑いを隠せなかった。
──架純先輩って、こんな真面目なとこあるんだ?
非常に失礼な譽の驚きに気づくはずもなく、黒板の前に立った紗穂は淡々と説明をつづける。
「今ここにいる皆さんは、最終候補です。この中で一人しか選ばれません──敵同士です」
敵という言葉に、場の雰囲気ががらりと変わった気がした。
どことなく緊張をはらんだ目で視線を交わす生徒たちに、紗穂はなおも話を進める。
「そこで、皆さんにはその一人を選ぶために、あることをしてもらいます。ただし、このことは絶対に、他言無用でお願いします」
なんだろう、と譽はいぶかしげに前を見やる。
紗穂はピッと人差し指を立て、自信たっぷりにこう言った。
「くじ引きで決めましょう」
沈黙が舞い降りた。
その数瞬後。
「はああああああああっ!?」
という、生徒たちの絶叫が、教室を揺らしたのだった。
「くじ引きとはどういうことですか!?それが生徒会のやり口ですか!よりにもよって運試しなど!」
くだらない、失望したと吐き捨てたのは、同学年の鈴嶋氷斗である。
頭脳明晰、模範生徒で知られる氷斗だったが、今回ばかりはその皮を剝ぎ捨てて、怒りをあらわにしていた。
普段から毒舌で有名であったが、怒るとさらに磨きがかかるようで、聞いているだけで背筋が冷たくなるほどの言葉の羅列を、まあつらつらと。
その怒りをなんともないように受けた紗穂は、ふいににっこりと笑みを浮かべた。
「嘘ですよ」
「はあ?」
当たり前じゃないですか、とにこにこと笑う紗穂に、氷斗は化け物でも見るような視線を送った。
「性悪……」
「ひどい!これ私が考えたことじゃありませんからね。性悪はうちの書記ですよ」
勘違いしないでくださいとは言うが、紗穂自身は全く悪びれていないようである。ひとは見かけによらないとはこのことだ。実に楽しそうである。
一同は一気に脱力してしまった。氷斗など、背中を向けたまま微動だにしない。
「……じゃあ架純先輩、何で決めるんですか?」
譽はご機嫌な紗穂にそっとたずねてみる。
紗穂は「よくぞ聞いてくれました!」と華やいだ声を上げて手を合わせた。
「皆さんには、勝負をしてもらいます!」
「勝負?」
「はい!清争に必要な力を競い合う、運動会です!」
「はいィ?」
いやあんた、くじ引きといい勝負ではないか。
もはやこの人には何も期待しない方がいいだろうと、この場にいた全員が痛感したのだった。
全校の人数と比較するとあまりにも少ないが、それも仕方ないことなのだ。
というのも、教師たちの評価基準がとりわけ高く、なかなか満点をもらえる生徒がいなかったのである。
中には、あと少しというところで教師たちの基準を満たせず──もとい嫌がらせによって、惜しくもこの場に立てなかった生徒もいるという。
いつになく真面目な口調で語る生徒会長、紗穂に、譽はある意味戸惑いを隠せなかった。
──架純先輩って、こんな真面目なとこあるんだ?
非常に失礼な譽の驚きに気づくはずもなく、黒板の前に立った紗穂は淡々と説明をつづける。
「今ここにいる皆さんは、最終候補です。この中で一人しか選ばれません──敵同士です」
敵という言葉に、場の雰囲気ががらりと変わった気がした。
どことなく緊張をはらんだ目で視線を交わす生徒たちに、紗穂はなおも話を進める。
「そこで、皆さんにはその一人を選ぶために、あることをしてもらいます。ただし、このことは絶対に、他言無用でお願いします」
なんだろう、と譽はいぶかしげに前を見やる。
紗穂はピッと人差し指を立て、自信たっぷりにこう言った。
「くじ引きで決めましょう」
沈黙が舞い降りた。
その数瞬後。
「はああああああああっ!?」
という、生徒たちの絶叫が、教室を揺らしたのだった。
「くじ引きとはどういうことですか!?それが生徒会のやり口ですか!よりにもよって運試しなど!」
くだらない、失望したと吐き捨てたのは、同学年の鈴嶋氷斗である。
頭脳明晰、模範生徒で知られる氷斗だったが、今回ばかりはその皮を剝ぎ捨てて、怒りをあらわにしていた。
普段から毒舌で有名であったが、怒るとさらに磨きがかかるようで、聞いているだけで背筋が冷たくなるほどの言葉の羅列を、まあつらつらと。
その怒りをなんともないように受けた紗穂は、ふいににっこりと笑みを浮かべた。
「嘘ですよ」
「はあ?」
当たり前じゃないですか、とにこにこと笑う紗穂に、氷斗は化け物でも見るような視線を送った。
「性悪……」
「ひどい!これ私が考えたことじゃありませんからね。性悪はうちの書記ですよ」
勘違いしないでくださいとは言うが、紗穂自身は全く悪びれていないようである。ひとは見かけによらないとはこのことだ。実に楽しそうである。
一同は一気に脱力してしまった。氷斗など、背中を向けたまま微動だにしない。
「……じゃあ架純先輩、何で決めるんですか?」
譽はご機嫌な紗穂にそっとたずねてみる。
紗穂は「よくぞ聞いてくれました!」と華やいだ声を上げて手を合わせた。
「皆さんには、勝負をしてもらいます!」
「勝負?」
「はい!清争に必要な力を競い合う、運動会です!」
「はいィ?」
いやあんた、くじ引きといい勝負ではないか。
もはやこの人には何も期待しない方がいいだろうと、この場にいた全員が痛感したのだった。
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