自由学園の〈清争〉は超過酷です。

まねきねこ

文字の大きさ
7 / 7

7話 超少人数の運動会

しおりを挟む
 運動会は、その翌々日の、真夜中に行われた。

「もう、意味わかんないんですけど」

 これも性悪書記の仕業ですかと紗穂を睨むと、ふいふいと首を横に振られる。

「先生方の仕業ですよ」
「あとで全員締め上げるか……」
「いいですね、手伝いますよ」

 彼女もご立腹のようである。それはそうだろう。真夜中に予定を決められて、不満に思わない者はいない。

 ガシリと手を組みあったところで、紗穂を呼ぶ声がした。

「じゃあ、頑張ってください。金メダル持って、先生たちシバきましょうね」
「もちろんです」

 ひらひらっと手をふって、紗穂は去っていった。

「可愛い……天使みたい」

 譽がうっとりと言うと、いつの間にか隣へ来ていたのか、氷斗が鼻を鳴らした。

「どうだかな。俺は信用できん」
「なんでよ」
「当たり前だろ。女子なんて、腹の内でなにを考えているか分からん」

 そこで氷斗は一旦言葉を区切ると、譽の方へ視線を移した。

「お前は例外だがな」
「──はぁん?うるさいわ黙ってなさいよ頭デッカチが」
「どうとでも言え雌ゴリラ」
「誰がゴリラだって?ゴリラはあんたでしょうがでこっぱちが」

 怒りのあまり冷静になった譽と、平然とした様子の氷斗の間に割って入れるほど勇気のある者は、残念ながらこの場にはいなかった。

「フン。意外と口が回るじゃないか雌タヌキ。果たして実力はどれほどかな」
「その言葉、そっくりそのままお返しするわ。痛い目見たくなかったら、今のうちに棄権するのね」
「誰がするか」

 氷斗は馬鹿にしたような目で譽を上からねめつけた。

 譽だって負けてはない。背の高い氷斗の目をまっすぐに睨み返す。

 しばらく睨み合いが続いた後、氷斗がクッと笑った。

「宣戦布告か」
「そうよ。それ以外にどうとれるっていうの」
 
 譽は大胆不敵に笑ってみせた。

「面白い。受けてたとう。勝つのは俺だ」
「尻尾を巻いて逃げかえるのはどっちかしらね」
「その答えは分かっているんじゃないのか」

 バチッと、見えない火花が散った。


「それでは、真夜中の清争運動会、開幕です!!」

 紗穂の声が、明かりで照らされた広い校庭に響きわたった。

「なんでマイク使わないのかしら」
「夜中にマイクとか、近所迷惑すぎるだろ」

 馬鹿か、と氷斗に薄く笑われ、譽はちぇっと舌打ちする。

「別にあんたに聞いてないし」
「ひとり言だ」

 説明を聞く気がないのか、言うなり背を向けた氷斗にあっかんべーをして、譽は紗穂の声に耳を傾けた。
 
「はじめは五十メートル走です。いかに廊下を速く走って清争場所へたどり着けるか。まずそこから、勝負ははじまっているのです。それでは、一学年からスタートしましょう」

 その声に、六人の生徒が緊張した面持ちで前に進み出て、スタート位置についた。

 こわばった顔には、それでも確かに、大きな期待と抑えきれない喜びと興奮が見て取れて、実に初々しい表情を浮かべていた。

 なんか感性が年頃らしくないな、と、見つめながら感じてしまった譽だった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

幸せな婚約破棄 ~どうぞ妹と添い遂げて~

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を宣言された私。彼の横には、何故か妹が。 私……あなたと婚約なんてしていませんけど?

処理中です...