奇跡の神様

白木

文字の大きさ
287 / 331
第四章 鳥像の門

不自然な神様2

しおりを挟む
 同時にわたしが取り組んでいた事、とは自殺者の魂の救済だった。

 元を正せば、全てはこの魂がわたしの神様へ還れないことに行きつく。何とかこの魂たちを神様の元へ送れないだろか――。

 そんな思いから、神様の水に自殺した者たちの魂を入れてみた。

 澄んだ青い神様の水に揺れる紫色の魂は、晴れた空に間違えて現れた雷光のように戸惑って揺れた。

 しばらく観察していると、それは人間の血の色に染まり、さらに身体の部位になった。

 このまま人間に戻るのだろか、そう思った時、不意に紫の魂の叫びが白い空間に響き渡った。

 ――空を駆けたい、そう聞こえた。

 神様でもないわたしが叶えてあげられるかも知れない願い。わたしはこの子たちが地上に向け落下し、海に辿りつく前に空に溶けることを知っている。それでも駆けたいなら、叶えてあげよう。

 わたしは赤く蠢く球体の中に両手を入れた。


 出来上がったのは大きな美しい鳥だった。

 長い首の描く曲線が優雅だけれど苦しそうにも見える。澄んだ黒目だけの感情の読み取れない横顔は、わたしに似ているのだろうか。

 手を伸ばしたわたしの方に不格好に歩み寄って来る姿を見て、わたしの神様の気持ちが重なった。

「おいで」

 わたしはその子の柔らかい身体を胸に抱き顔を埋めた。


 救ってあげられなくてごめんね――

 そう心の中で泣いて、両腕を広げる。

 わたしを慰めるように優美な翼で旋回しながら、その子は鳥像の門に呑み込まれる手前で向きを変え、地上に向けて飛び降りて行った。

 わたしが人型になってから初めて涙を知ったその時、カタっと音がして、生成しかけの神様が動いた気がした。

 ついに完成したのか? 急いでガラス玉の表面に顔を押し付けて覗き込んだが、神様の美しい目は瞼に覆われ、青い水に浮くばかりだった。

 ――早く目を覚まして、わたしの始めての子。

 そうだ、この子が目を覚ます前に辛い記憶を抜いてあげなくては。目覚めて初めて思い出すのが悲しい風景ではないように。

 本当はわたしの事は全部覚えていて欲しいけれど求め過ぎだろうか。『お前の控えめなところが好きだ』そう言ってくれたわたしの神様のためにわたしの記憶は不要だな。

 でも、ほんの少しなら、幸せな記憶なら良いだろか。忘れられるのは辛いものだ。

 この子の名前はどうしよう。そうだ、自殺した者の魂さえ救えるように、人間自身から生まれて増殖し続ける悪を止められるような、あの名前にしよう。いつか、対になるような者が現れたら、絡まる名前をつけてあげよう。

 そう思っていたのに、月の神様が『僕も生命の神様をいつも身近に感じたい』と自分の使いにその一部を取って名付けてしまった。

 やっと現れた対になる炎の悪魔に足りる分は何とか残してくれたけれど。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

幸せな政略結婚のススメ【本編完結】

ましろ
恋愛
「爵位と外見に群がってくる女になぞ興味は無い」 「え?だって初対面です。爵位と外見以外に貴方様を判断できるものなどございませんよ?」 家柄と顔が良過ぎて群がる女性に辟易していたユリシーズはとうとう父には勝てず、政略結婚させられることになった。 お相手は6歳年下のご令嬢。初対面でいっそのこと嫌われようと牽制したが? スペック高めの拗らせ男とマイペースな令嬢の政略結婚までの道程はいかに? ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ・11/21ヒーローのタグを変更しました。

だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

十和とわ
ファンタジー
悲運の王女アミレス・ヘル・フォーロイトは、必ず十五歳で死ぬ。 目が覚めたら──そんなバッドエンド確定の、乙女ゲームの悪役王女に転生していた。 十五歳になると身内に捨てられるわ殺されるわ……とにかく死亡エンドだけがお友達な悲運の悪役王女、それがアミレス。 だからやってみせるぞ、バッドエンド回避! なにがなんでもハッピーエンドを迎えてみせる!! 手の届く範囲だけでも救って、幸せになって、最期に最高の人生だったって笑って寿命で死にたいもの! ……と、思っていたのだけど。何故か悪役王女の私がすごく愛されてしまっている? 本当に何故? どうして攻略対象達や色んな人達の様子がおかしくなってしまってるの!? 登場人物もれなく全員倫理観が欠如してしまった世界で、無自覚に色んな人生を狂わせた結果、老若男女人外問わず異常に愛されるようになった転生王女様が、自分なりの幸せを見つけるまで。 〇主人公が異常なので、恋愛面はとにかくま〜ったり進みます。 〇毎週金曜更新予定です。 〇小説家になろう・カクヨム・ベリーズカフェでも連載中です。 〇略称は「しぬしあ」です。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...