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第四章 鳥像の門
不自然な神様3
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それからさらに何ヶ月か待ったと思う。
わたしは月の神様が運んでくれた数えきれない赤い魂をそれぞれの鏡の空間へ振り分け、汚れを取り去る仕事を繰り返す。
大変な作業だ。わたし一人では間に合わず、そのうちこの広大な空間も魂で溢れてしまう。
わたしの神様は身体の中でこんなことを絶えずしながら、いつも穏やかな表情でいた。
紫の魂の最期の願いを叶えることは優先したいけれど、この赤い魂も地上に還していかなければ、わたしの神様がいつまでも再成できない。
使いのわたしは定期的に数時間完全に眠りに落ちる。
本当はそんな時間も惜しいけれど。
眠りを妨げる清らかな音がして半身を起こした。
視界に入った不自然な神様。初めてシロキに会った時を忘れない。
「……神様」
ガラス玉に駆け寄って、身体を取り出したは良いが、それしか言えない。
言葉に詰まるわたしの顔にそれは手を伸ばしてきた。
その目も、指もわたしの神様にそっくりだ。
黙っていても幸せそうに上がっている口角で優しい笑みを作る。安堵で涙が出た。これまで、一人で慣れないことばかりやってきた。
雨雲が一瞬で晴れたようだ。もう今まで心に重くのしかかっていた暗い空は思い出せなかった。
「…………」
あれ? しゃべらない。
急に不安になった。何しろ神様を造るのは初めてだ。声を造り忘れてしまっただろうか。
「シロキサン――?」
この子が眠っている間、いつも呼びかけていた名前を口にしてみた。
ニコニコ笑う。やっぱり自分の名前はわかっているんだ。
完全に大人の身体なのに、やけに可愛い。
それよりも声が出ないのか、それとも言葉を忘れているのかが気になる。
きれいな声を造ったつもりだ。雪が降り積る時にする音のような、柔らかくて済んだ声だ。もちろんそれでは、聞こえずらいから、ちゃんと大きさも調整した。
「……は何?」
「何が何だって?」
蚊の鳴くような声で良く聞き取れなかった。
でも声が出た。思った通りのきれいな声だ。良かった。
「願いは何?」
わたしは月の神様が運んでくれた数えきれない赤い魂をそれぞれの鏡の空間へ振り分け、汚れを取り去る仕事を繰り返す。
大変な作業だ。わたし一人では間に合わず、そのうちこの広大な空間も魂で溢れてしまう。
わたしの神様は身体の中でこんなことを絶えずしながら、いつも穏やかな表情でいた。
紫の魂の最期の願いを叶えることは優先したいけれど、この赤い魂も地上に還していかなければ、わたしの神様がいつまでも再成できない。
使いのわたしは定期的に数時間完全に眠りに落ちる。
本当はそんな時間も惜しいけれど。
眠りを妨げる清らかな音がして半身を起こした。
視界に入った不自然な神様。初めてシロキに会った時を忘れない。
「……神様」
ガラス玉に駆け寄って、身体を取り出したは良いが、それしか言えない。
言葉に詰まるわたしの顔にそれは手を伸ばしてきた。
その目も、指もわたしの神様にそっくりだ。
黙っていても幸せそうに上がっている口角で優しい笑みを作る。安堵で涙が出た。これまで、一人で慣れないことばかりやってきた。
雨雲が一瞬で晴れたようだ。もう今まで心に重くのしかかっていた暗い空は思い出せなかった。
「…………」
あれ? しゃべらない。
急に不安になった。何しろ神様を造るのは初めてだ。声を造り忘れてしまっただろうか。
「シロキサン――?」
この子が眠っている間、いつも呼びかけていた名前を口にしてみた。
ニコニコ笑う。やっぱり自分の名前はわかっているんだ。
完全に大人の身体なのに、やけに可愛い。
それよりも声が出ないのか、それとも言葉を忘れているのかが気になる。
きれいな声を造ったつもりだ。雪が降り積る時にする音のような、柔らかくて済んだ声だ。もちろんそれでは、聞こえずらいから、ちゃんと大きさも調整した。
「……は何?」
「何が何だって?」
蚊の鳴くような声で良く聞き取れなかった。
でも声が出た。思った通りのきれいな声だ。良かった。
「願いは何?」
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