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第四章 鳥像の門
命の再成6
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そこまで話すと作成者が顔を上げ、シロキさんを見た。
シロキさんは鏡の床を見つめたまま何も言わない。
だよな、こんな壮大な勘違いをしておいて、何食わぬ顔で頭を上げるなんて、俺ならできない。
ゆっくり持ち上げたシロキさんの顔もさすがに青白い。きれいな白目が濡れて光っている。口を開きかけた時、ナイトの声が先に漏れて、鏡に響いた。
「鳥はどうした?」
「澄んだ空を、気が済むまで飛んで、それから地上のわたしの神様の溶ける海に戻って行ったよ。わたしは生命の神様と共鳴しているから、その情景まで胸に伝わってきた。お前に見せたかった。生きる意志は美しかったよ。お前の優しさは無駄じゃなかった。お前、昔、庭で植物を育てていただろ? あれのように時間をかけてお前の期待に応える準備をしていたんだ。寒さに死んだように見えて、ちゃんと生きていた。ああ、すまない。そんな記憶もわたしが奪ってしまったね」
作成者はとても感情豊かに見えた。
「覚えてる」
ああ、これが神様を狂わせる笑顔なのか、そう理解した。
覚えていると言うのが、本当でも嘘でも、どうだっていい、そう思わせる笑顔でナイトが答えた。
真実なんて本当は知りたくない。自分の信じていることが肯定されただけで、それがきれいなものであればあるほど、こんなに幸せな気持ちになれる。
「ナイト、ずっと昔から気づいていたよ。わたしの神様がお前を求めていた理由を。わたしの神様のできなかったこと、わたしができなかったことをお前に託してしまった。辛かったね」
作成者がナイトに片腕を伸ばした。ナイトは何も言わないけれど、雪解けのような目で見返している。あんな風に見つめられたい。そんな甘い欲求が胸に満ちた。
こいつは自殺した命を救うことができる。生命の神様がどうしても欲しかったもの。生命の神様の完成のために必要だった力。
ナイトが作成者の手を取ろうとした時、その腕をシロキさんがつかんで止めた。
「じゃあ……」
シロキさんの震えた声が響いた。
「じゃあ、あの幽霊はなんだったの? お前の放った幽霊に追い詰められてこの子は――」
シロキさんが、はだけた少し寸法のおかしい着物の胸から金と銀に燃える魂を取り出した。
「それは――」
ナイトに伸ばした手を力なく降ろして、作成者が再び話し出した。
シロキさんは鏡の床を見つめたまま何も言わない。
だよな、こんな壮大な勘違いをしておいて、何食わぬ顔で頭を上げるなんて、俺ならできない。
ゆっくり持ち上げたシロキさんの顔もさすがに青白い。きれいな白目が濡れて光っている。口を開きかけた時、ナイトの声が先に漏れて、鏡に響いた。
「鳥はどうした?」
「澄んだ空を、気が済むまで飛んで、それから地上のわたしの神様の溶ける海に戻って行ったよ。わたしは生命の神様と共鳴しているから、その情景まで胸に伝わってきた。お前に見せたかった。生きる意志は美しかったよ。お前の優しさは無駄じゃなかった。お前、昔、庭で植物を育てていただろ? あれのように時間をかけてお前の期待に応える準備をしていたんだ。寒さに死んだように見えて、ちゃんと生きていた。ああ、すまない。そんな記憶もわたしが奪ってしまったね」
作成者はとても感情豊かに見えた。
「覚えてる」
ああ、これが神様を狂わせる笑顔なのか、そう理解した。
覚えていると言うのが、本当でも嘘でも、どうだっていい、そう思わせる笑顔でナイトが答えた。
真実なんて本当は知りたくない。自分の信じていることが肯定されただけで、それがきれいなものであればあるほど、こんなに幸せな気持ちになれる。
「ナイト、ずっと昔から気づいていたよ。わたしの神様がお前を求めていた理由を。わたしの神様のできなかったこと、わたしができなかったことをお前に託してしまった。辛かったね」
作成者がナイトに片腕を伸ばした。ナイトは何も言わないけれど、雪解けのような目で見返している。あんな風に見つめられたい。そんな甘い欲求が胸に満ちた。
こいつは自殺した命を救うことができる。生命の神様がどうしても欲しかったもの。生命の神様の完成のために必要だった力。
ナイトが作成者の手を取ろうとした時、その腕をシロキさんがつかんで止めた。
「じゃあ……」
シロキさんの震えた声が響いた。
「じゃあ、あの幽霊はなんだったの? お前の放った幽霊に追い詰められてこの子は――」
シロキさんが、はだけた少し寸法のおかしい着物の胸から金と銀に燃える魂を取り出した。
「それは――」
ナイトに伸ばした手を力なく降ろして、作成者が再び話し出した。
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