鳥に追われる

白木

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第四章 守護鳥の夢

神様の声

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アオチ


 鳴り始めた時と同じで、突然サイレンが止んだ。

 急に音が無くなる。完全に無音の世界。何だ、暗闇に入った時も怖かったけど、これも怖い。オオミに声をかけた。

 …………どうして? 声が出ない。

 オゼを呼んだ。やっぱり声がでない。いや、何かおかしい。

 オゼも俺を見て、口を大きく動かしている。

 そうか、俺たちの声が吸収されているのか。俺たちの耳がおかしくなったんじゃない。この場所が全ての音を引き込んでしまってるんだ。

 どうして急にこんな。サイレンは本当に鳴り止んだのか? それともまだ鳴っているのか?

「探したよ」

 え? 信じられないくらい透き通った声がした。でも同時に信じられないくらい小さい。

「…………に……なんて」

 は? まずい、周りがこんなに静かなのに全然聞こえねえ。良くオオミの声量の無さをからかったが、謝る。今しゃべってるやつに比べたら、お前、声がバカでかいぞ。

 もしかしたら、回収人にだけ聞こえる周波数とかか?

 回収人とローヌの顔をのぞいた。駄目だ、困惑しか見て取れない。

タンチョウモドキならどうだ――。鳥も長い首を傾げている。

 誰も聞こえていない。この声の持ち主、何のためにしゃべってるんだ。まだ、かさこそ耳元で音がしている。

 そう、綺麗な音以外の何物でもない。美しいだけで全く意味をなしていない。

 コスコモスがさわさわと揺れる感覚がして、斜め前に立つローヌを見ると、苛立たし気に足をカタカタ動かしていた。

 意外と短気だな、こいつ。――というか、あの右手はなんだ。

 今、何か光った。嫌な予感しかない。

 次の瞬間、右手の光は長い刀になり、斜めに宙を切った。

 コスモスが犠牲にならなくて良かった、何故か呑気にそんなことを考えていた。

 静気さが俺の良く知るものに変わってほっとする。

「自分がしゃべるために、音まで消したくせに、全然聞こえない。いや、何か中途半端に聞こえて気持ち悪いんだよ」

 ローヌが右手の刀を自分の中に戻しながら言った。

 声がちゃんと聞こえる。

「なあ、凄くきれいな声がした。何を言っているのかわからなかったけど。あれが神様か?」

 回収人が心底迷惑そうな顔で答えた。

「そう、オゼと無言ちゃん以外を殺しに来た殺人鬼、俺を自分の目の中に入れようとする変態、そして勝手に移動を始める迷惑な神様だ」

 おい、言い過ぎじゃないのか。一応自分の父さんみたいな存在だと言っていたじゃないか。怒られないのか。

「自分から孤独になろうとするなんて、どうして!」

 耳元で大音量が響いた。機械のような、空に浮かぶ文字を見ていた時に聞いた、あの声だ。思わず耳を塞ぐ。

「今度はうるさいよ。無理して声を造るから、本当に人と話し慣れてないんだなあ」

 ローヌが大きく溜息をついてから、俺たちを振り返った。

「神様はね、結構おしゃべりなんだよ。君たちにも良く話しかけてる。でも超絶小声なんだ。さっきので分かっただろ? 周囲の音を全て消しても、あの程度しか聞こえない。無理に届けようとすると今の大音量だよ。ある意味可哀想だよね、いつも話してるのに、全員に無視されてる」

 ――本当にかわいそうだ。強くそう思ってしまった。俺たちを消そうとしている神様に対して。

 この人の孤独は何年続いているんだろう。

「もういい加減、姿を見せたら? そこからいくら話していたって誰にも届かないんだから」

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