鳥に追われる

白木

文字の大きさ
88 / 94
第四章 守護鳥の夢

永遠に孤独

しおりを挟む
アオチ


 コスモスが騒めいた。

「君たちはどうして自分から孤独を選ぶの」

 俺たちの来た広場の入口の方から声がした。今度は美しいだけでなく、ちゃんと耳に届く声だ。

 そこに人影があった。良く見えないな、思った瞬間、騒めいていたコスモスが明らかに意志を持って揺れだした。

 入口に立つ人が、腕を前に伸ばした瞬間、コスモスがその人を運ぶように波を作った。

 現れたら戦ってやろうと思っていたのに、ズルい。もっと乱暴に登場してくれないと。花に運ばれてくるなんて聞いてない。それにこの人――

 コスモスが動きを止め、その人が俺たちの前に、正確には回収人の前に立って言った。

「久しぶりだね。僕を殺そうとする細胞」

 声と同じく、恐ろしく綺麗な人だ。現実味がない。濡れた濃い灰色の髪から覗く目が、ふと俺を見た。

 ――気が狂うほどきれいな人、確か回収人はそう言っていた。

大袈裟ではないな。

「さっきまで海の中で待っていたんだ」

 それだけ言って、また回収人の方へ向き直る。

 目が合っただけで、このまま消されそうな気がした俺の手を、オゼが強く握った。俺を必要としていてくれ、まだ消えたくない。

「困るな、この回収人もすっかり君に感化されてしまった」

 今度はちらりとローヌを見て言った。ゆっくり動かす視線が艶めかしい。やっぱり回収人に似ている。

「こいつの事か?」

 回収人がローヌを指した。

「そう。君をもう回収人にしておくことはできない。僕に反抗する細胞は増殖して、いつか僕を滅ぼす」

 指されたローヌの横顔も、また神様に似ていると思った。全員この人の細胞だというのも納得だ。

「だめです!」

 いきなりオオミが大声を出して回収人の前に飛び出した。

「君が、今回の彼のお気に入りか」

「眼鏡、黙ってろ。俺を困らせるな」

 神様が一歩前に出た。この人が歩いたのか、コスモスが運んだのか判断が付かない。

「回収人さん、こんな人の目になんか、なっては駄目です」

 この場にいる全員に敵意の目を向けられても、神様は全く表情を変えない。この人の服は真っ白ではないんだ。そんなどうでも良いことを考えていた。この色はそう、青味を帯びた白、月白だ。

「先にこっちの問題から片付けようか。回収人として、乗客の最期を見守りたいだろ?」

 こいつ、完全に俺とオオミを消す気だ。心臓を燃やす例の魔法を使うつもりでいるんだ。思わず胸を押さえる。

 回収人がオオミを横にどけて、一歩前に出た。神様と手を伸ばしたら届く距離に近づく。

「あんたの目になってやるから、こいつらを全員連れて行ってやることはできないか」

「駄目だ。君、自分が何をやっているのか本当に理解しているの。その、後ろの背の高い彼が本体だろ。その子は永遠の孤独に落とされるんだよ。今、僕がわざわざここまで来た理由、それは君に残酷な事実を教えるためでもある」

 コスモスがうるさい程に騒めいて、止まった。

「君がこれまで助けた本体たちを、僕は次の世界で見つけては殺してきた」

 また、神様が音を吸収したような静けさが広場を支配した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...