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「みんな、わざわざ来てくれてありがとう。ぼくは大丈夫だよ」
「風邪ならこれを飲むといいわ。くまさんのくれた残りだけれど」
リスさんが薬を差し出してくれました。
くまさんは、風邪ではなかったけど食べ過ぎだと言うのが恥ずかしかったので、
「そうするよ」
と、薬を受け取りました。
そこへ、きつねくんがやってきました。
「くまさん、いるかい?」
きつねくんは両手にいっぱい梨を抱えていました。
「病気にはりんごが一番なんだけどね。時期じゃないから梨で勘弁してくれるかい?」
そう言いながら入って来たきつねくんは、たぬきくんを見るなり驚いて、
持っていた梨を全部落としてしまいました。
「りんごって?」
たぬきくんが聞きます。
「きつねくんが持ってきた梨に似た、赤い色をした実の事だよ」
と、くまさんは教えてあげました。
ふくろうさんがきつねくんに向かって言いました。
「スイカ泥棒め、よくこんなとこに顔を出せたな」
たぬきくんは「スイカって?」とくまさんに聞きました。
「今日くれた緑色の実の事だよ」
「スイカ? あれはりんごじゃないのかい?」
これはなんだかおかしいぞ。とくまさんは思いました。
きつねくんは、困った顔で床に転がった梨を見つめています。
「きつねくん、どういうことなのか話してくれないかな。ボクには分からない事だらけだよ」
くまさんが言うと、きつねくんはぽつりぽつりと話し始めました。
「春頃に、たぬきくんがボクのところにきて『丸くて赤くてシャリシャリした物が美味しいと聞いたから、しずくの形の黒い種があったら欲しい』って言われたんだ」
ウサギさんがぴょこっと耳を立てて言いました。
「それでたぬきくんはスイカを作ってたのね。丸くって、赤くって、シャリシャリしてるもの」
ふくろうさんが首をグルンとひねって言います。
「それならりんごだって、丸くて赤くてシャリシャリしてるだろ」
「そう。たぬきくんは、きっとりんご畑をつくりたかったんだ」
きつねくんはしょんぼりしています。
「ボクはてっきりスイカのことかと思って、スイカの種をあげてしまったんだけど、少し前にたぬきくんが『なかなか木が大きくならないねぇ』と言っていて、自分の勘違いに気づいたんだ」
「気付いたなら、その時にすぐたぬきくんに言えばいいだろ」
ふくろうさんが言いました。
「ボクも、何度もたぬきくんに言おうと思ったんだけど……どうしても恥ずかしくて。それで、せめてと思って、たぬきくんの食べたかったりんごに似た、梨と交換しておこうと思ったんだ」
くまさんはなるほどと思いました。
たぬきくんはポンと手を叩くと、きつねくんが落とした梨をひとつ拾いました。
「梨ってこれのことだよねぇ。スイカのなくなったところに、これがいつもあったから、なんだろうなと思っていたんだよ。なるほど、きつねくんがわざわざ置いてくれてたんだねぇ」
「それにしたって、黙って交換していくのは良くないと思うわ」
リスさんが言いました。
「そうだそうだ。理由はどうあれ、お前はスイカ泥棒だぞ」
ふくろうさんも言います。
「たぬきくんも、りんごとスイカくらいわからないものかね」
ビーバーさんが言うと、ねずみくんも
「たぬきくんがさいしょにちゃんと欲しい種の名前を言えばよかったんだよ」
と言いました。
きつねくんはますますしょんぼりしています。
たぬきくんも恥ずかしそうに下を向いてしまいました。
くまさんは悲しくなって、言いました。
「みんな、もういいよ。間違いは誰にでもある事なんだから、今度から気をつけたらいいよ。ね?」
ふくろうさんは翼を広げて大きな声で言いました。
「間違いは誰にでもあるだろうが、それを隠そうとするのは良くないだろう。なんでも正直に話すべきだ!」
ねずみくんやビーバーさん、リスさんもうさぎさんもうんうんと大きくうなずきました。
「風邪ならこれを飲むといいわ。くまさんのくれた残りだけれど」
リスさんが薬を差し出してくれました。
くまさんは、風邪ではなかったけど食べ過ぎだと言うのが恥ずかしかったので、
「そうするよ」
と、薬を受け取りました。
そこへ、きつねくんがやってきました。
「くまさん、いるかい?」
きつねくんは両手にいっぱい梨を抱えていました。
「病気にはりんごが一番なんだけどね。時期じゃないから梨で勘弁してくれるかい?」
そう言いながら入って来たきつねくんは、たぬきくんを見るなり驚いて、
持っていた梨を全部落としてしまいました。
「りんごって?」
たぬきくんが聞きます。
「きつねくんが持ってきた梨に似た、赤い色をした実の事だよ」
と、くまさんは教えてあげました。
ふくろうさんがきつねくんに向かって言いました。
「スイカ泥棒め、よくこんなとこに顔を出せたな」
たぬきくんは「スイカって?」とくまさんに聞きました。
「今日くれた緑色の実の事だよ」
「スイカ? あれはりんごじゃないのかい?」
これはなんだかおかしいぞ。とくまさんは思いました。
きつねくんは、困った顔で床に転がった梨を見つめています。
「きつねくん、どういうことなのか話してくれないかな。ボクには分からない事だらけだよ」
くまさんが言うと、きつねくんはぽつりぽつりと話し始めました。
「春頃に、たぬきくんがボクのところにきて『丸くて赤くてシャリシャリした物が美味しいと聞いたから、しずくの形の黒い種があったら欲しい』って言われたんだ」
ウサギさんがぴょこっと耳を立てて言いました。
「それでたぬきくんはスイカを作ってたのね。丸くって、赤くって、シャリシャリしてるもの」
ふくろうさんが首をグルンとひねって言います。
「それならりんごだって、丸くて赤くてシャリシャリしてるだろ」
「そう。たぬきくんは、きっとりんご畑をつくりたかったんだ」
きつねくんはしょんぼりしています。
「ボクはてっきりスイカのことかと思って、スイカの種をあげてしまったんだけど、少し前にたぬきくんが『なかなか木が大きくならないねぇ』と言っていて、自分の勘違いに気づいたんだ」
「気付いたなら、その時にすぐたぬきくんに言えばいいだろ」
ふくろうさんが言いました。
「ボクも、何度もたぬきくんに言おうと思ったんだけど……どうしても恥ずかしくて。それで、せめてと思って、たぬきくんの食べたかったりんごに似た、梨と交換しておこうと思ったんだ」
くまさんはなるほどと思いました。
たぬきくんはポンと手を叩くと、きつねくんが落とした梨をひとつ拾いました。
「梨ってこれのことだよねぇ。スイカのなくなったところに、これがいつもあったから、なんだろうなと思っていたんだよ。なるほど、きつねくんがわざわざ置いてくれてたんだねぇ」
「それにしたって、黙って交換していくのは良くないと思うわ」
リスさんが言いました。
「そうだそうだ。理由はどうあれ、お前はスイカ泥棒だぞ」
ふくろうさんも言います。
「たぬきくんも、りんごとスイカくらいわからないものかね」
ビーバーさんが言うと、ねずみくんも
「たぬきくんがさいしょにちゃんと欲しい種の名前を言えばよかったんだよ」
と言いました。
きつねくんはますますしょんぼりしています。
たぬきくんも恥ずかしそうに下を向いてしまいました。
くまさんは悲しくなって、言いました。
「みんな、もういいよ。間違いは誰にでもある事なんだから、今度から気をつけたらいいよ。ね?」
ふくろうさんは翼を広げて大きな声で言いました。
「間違いは誰にでもあるだろうが、それを隠そうとするのは良くないだろう。なんでも正直に話すべきだ!」
ねずみくんやビーバーさん、リスさんもうさぎさんもうんうんと大きくうなずきました。
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