ドラゴンテールドリーマーは現在メンテナンス中です

弓屋 晶都

文字の大きさ
10 / 45

第2話 赤いリボン (3/9)

しおりを挟む
気付けば、足元には一面草原が広がっていて頭上にはたくさんの大きな大きなシャボン玉が浮かんでいた。


――ええと……?

もしかして、私はゲーム用のニックネームを考えながら眠ってしまったんだろうか。
そんなに遅い時間じゃなかったのに。
ご飯は済ませていたけど、歯磨きもお風呂もまだだったのに。

どうしたら目が覚めるかなと思った途端に、後ろから声をかけられた。
「みさみささん。良かった、会えて」
「あっ、カタナさんっ!」
私は慌てて振り返る。
「昨日は途中で落ちちゃって(?)ごめんなさいっっ!!」
落ちちゃったのかどうかわからないけど、私はとにかく謝った。
カタナさんはちょっとだけびっくりしたように黒髪を揺らしてから、赤い瞳を少しだけ緩めて答える。
「いや、気にしてない。みさみささんこそ突然の事でびっくりしただろう。怖い思いをさせてしまって、すまなかった」
悪くないのに謝るカタナさんが、なんだかさっきの冬馬くんに重なって、私は思わず声が大きくなってしまう。
「カタナさんが謝る事ないですよっっ!」
カタナさんが目を丸くする。
一瞬の表情だったけど、何だか子供みたいで可愛かった。
「……俺のことは、カタナでいい」
私から目を逸らして、ちょっと恥ずかしそうに言われて、それが呼び捨てで良いと言われているのだと理解する。
「俺はそんな大人じゃない。いや子供だと言った方がいいか。みさみささんの方がずっと大人かも知れない」
「私はまだ中学生だから、カタナさんよりきっと子供ですよ」
「そうなのか? 俺も中学生だよ。同じだな」
言われて、驚く気持ちとやっぱりと思う気持ちが混じり合う。
時々感じていた子供っぽさは、本当に私と同じくらいの歳だったからなんだ。
『同じだな』と言った優しい声が胸に広がって、不思議なくらい嬉しい。
「ど、どこに住んでるんですか?」
「関東だよ。同じくらいだと分かったんだから、もう敬語はいいだろう」
「わ、私も関東ですっっ、あ。ええと……でも先輩だったら悪いし……」
カタナさんは困ったように苦笑して、渋々学年を答えた。
「中二だよ」
「一緒だ……」
カタナさん……ううん、カタナは同い年だったんだ。
「でも、ネットではあまりそういう歳とか学校の話はしない方がいい。身バレすると危ないから。住んでる場所の話もここまでにしておこう」
「う、うん」
私は慌ててコクコクと頷く。
カタナは私のこと心配してくれてるんだ。
そう思うと、すごく嬉しい。

けれど、カタナはどこか悲しげに俯いて呟いた。
「ああ……。でもそんなの、俺が言うことじゃなかったんだろうな……」
「え……?」
「いや、何でもない」
私の言葉に首を振って答えたカタナが、ためらうようにもう一度マスクの下の口を開く。
「その……口うるさい事を言ってしまって、すまないな」
「そんな事ない! 私のこと心配して言ってくれたの、ちゃんと分かるよ。私、嬉しかった……から……」
言ってしまってから『しまった』と思った。
なんだかこれじゃあ、私がカタナのこと好きみたいに、聞こえない……かなぁ?
焦る私に気付く様子もないまま、カタナは小さく笑った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

合言葉はサンタクロース~小さな街の小さな奇跡

辻堂安古市
絵本
一人の少女が募金箱に入れた小さな善意が、次々と人から人へと繋がっていきます。 仕事仲間、家族、孤独な老人、そして子供たち。手渡された優しさは街中に広がり、いつしか一つの合言葉が生まれました。 雪の降る寒い街で、人々の心に温かな奇跡が降り積もっていく、優しさの連鎖の物語です。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

処理中です...