呪われた悪女は獣の執愛に囚われる

藤川巴/智江千佳子

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 ソフィアが身体を痙攣させているのを知りつつ、ルイスは腰を休めることなく穿ち続ける。彼女の法悦の間隔が短くなっていることを察したルイスは、抱きしめていた身体を離し、すでに力を失くしているソフィアから突き入れ続けていた欲望を引き抜いた。

「ひああああっ! あ、あぐ、……っ、ぁ」

 呼吸を壊し始めているソフィアの身体を抱き起したルイスは、ふらふらと倒れかける身体を後ろから抱きしめ、足の上にソフィアを座り込ませた。

「あっ、あ、ぁ、入っ……ちゃ、あっ……っ!!」
「ああ、よほど欲しい、らしいな……っ!」
「ちぁっ……! あんっ……、ひ、ひ、んんっ!」

 そそり立つ怒張はあっさりとソフィアの薄い腹に飲み込まれ、ソフィアは喉を鳴らして快感に悶えた。

「も、おわ、おわり、っああ、あ、ひ、うううっ!」
「まだ体液をやってない」
「も、いらなっ、あ、っあああ!」

 自重の分だけ深く腹に突き刺さる好さで、ソフィアはすでに淑女らしさを失っている。

 可愛らしい猫のようにぐずぐずと鳴くソフィアを慰めようと、ルイスはますます深くまでソフィアの奥に欲望を擦り合わせた。

「ひあああああっ!? こえ、こえ、ら、めっ……!」

 最奥をきつく擦られることに慣れきったソフィアの身体は、ルイスがその切っ先を合わせてグラインドするだけでひっきりなしに達し続ける。

 すでに絶頂の間隔を短くしていたソフィアは、ルイスの手によって、下りられない高みに持ち上げられたことさえもわからず、混乱して彼の手に縋り付いた。

「こわ、こわっ、ああっ、こわいっ、の、るい、るいす、……ったすけっ、ひ、やあああ!」
「じきに慣れる……っ、フィアっ!」

 がつん、と強烈な一突きを穿った瞬間、とうとうソフィアの身体が寝台に倒れ込んだ。

 倒れる瞬間に中が擦れる僅かな感触にも、ソフィアは身体を痙攣させ、陶酔に投げ込まれる。もやは逃げる事さえも叶わず、ただ乱れきった呼吸を繰り返している。

「るい、ルイ、ス、も……っ」
「ここにいる。フィア」

 安堵と途轍もない快楽がせめぎあっている。

 ソフィアは己の身体が快楽に蝕まれていることをぼんやりと察しながら、後ろに座り込んでいた男が彼女の腰に手をついたのを感じた。

 この戯れは、まだ終わってくれないらしい。ソフィアは朧げに察し、息を呑んだ。

「フィア、一番奥に注いでやる」
「っあ……!! ぁっ、……!」

 浅い部分に残されていた怒張が、激しい勢いで奥の奥まで入り込んでくる。

 すでに上体を起こす気力のないソフィアは、ルイスに臀部を高く持ち上げられ、彼の手と、彼の欲望だけに身体を支えられていた。

 どちゅんっ、と奥を穿つ固いものは、すでにぱんぱんに膨らんでいる。どれだけたくさん中に出されるのか、ソフィアはそのことを考えた瞬間、己の膣がきゅうっと締まる感覚でまた小刻みに絶頂を味わった。

「あ、……っあ……!」

 深い陶酔に、声をあげることさえできない。

 ソフィアの声はリネンに吸い込まれ、くぐもった音を響かせていた。

 尻と腰の皮膚がぶつかり合う音と、蜜口がかき混ぜられる音、そしてルイスの吐息に支配された部屋で、ソフィアはただ快楽の波に身体を震わせていた。

「愛してる」

 ルイスの番が自身であることは、すでに疑うこともできなくなっていた。

 ソフィアは、認めさせるように囁きかけてくる男に震えながら頷いて、快楽を逃がそうと必死になっていた。

「フィア。……貴女しかいらない」

 猛烈な愛を囁いた男が、腰の動きを強めてくる。ソフィアはすでにぽろぽろと涙を流しながら、ルイスの熱い執愛に全身を絡めとられていた。

「フィア、フィア」
「あっ、ルイ、ス……!」

 獣のような激しいまぐわいだ。

「フィア、全部……っ、受け止めろ」
「ん、ふ、……っああああ!」

 ルイスはか弱い番にかけられる、最も強い力を制御しながら最奥に切っ先を擦らせ、激しく締め付ける中に、執着の証をどぷどぷと注ぎ込んだ。

 4、5回腰を穿って中に精を馴染ませたルイスは、びくびくと身体を震わせるソフィアの中から欲望を引き抜き、大量に放った精が零れ落ちる前にソフィアの身体を仰向けに寝かした。

 ルイスは息を整えようとしているソフィアの髪を撫でて、音を立てながらその横に寝ころぶ。

「フィア、大丈夫か」
「は、はあ、は、……っ、むりだって、言いました、のに」
「貴女の拒絶は男を誘う」

 ルイスの勝手な言葉に呆れつつ、ソフィアはいまだ快楽の波が引かない身体を落ち着かせようと瞼を下した。

 とろとろと蜜口から体液が滴り落ちている。それが何であるか理解しつつ、努めて思考から追い出した。

「貴女の足腰が立たなくなっては困るだろう」
「それは、もう、不安です、わ」
「これ以上はしない。……手加減はしている、つもりだ」

 あれほど激しく求めておきながら、ルイスは手加減をしたらしい。ソフィアは呆れつつ、しかし、確かに何度も身体を貪ってくるルイスが一度で事を済ませてくれていることを思い出して、瞼を開き直した。

 視界の脇で、男がじっとソフィアの瞳を見つめてきている。

「なに、かしら」
「貴女を抱きしめて眠りたい」

 いつも、許可を取ることなくその腕に引き込んでくる男が、何よりも優しい声で囁いた。

 ソフィアはその声にたまらなく胸が震えるのを感じて、何も言わずに彼の胸に身体を寄せる。

「フィア、貴女の身体は本当に脆いな」
「ひどいわ。貴方と比べたら、だいたいの人がそうよ」

 今も、ソフィアがまだ呼吸を整えられずにいる中、ルイスは穏やかな鼓動を刻んでソフィアの身体を抱きしめている。規格外の男の身体に、ソフィアは改めて種族の違いを感じた。

「できることなら、貴女を箱に閉じ込めておきたいものだ」
「いやだわ」
「ああ、知っている」

 ルイスは、ソフィアが望まない限り、そのような行いをすることはない。

「フィアを知るたび、貴女が自由な意思で駆け回る美しい女人であることが分かった。貴女は誰よりも自然を慈しみ、か弱きものを守ろうと懸命に努力している。……その魂に惹かれずに居られる者のほうがどうかしている」

 ソフィアの髪を撫でつけ、子守歌のように囁く男が静かに笑った。

 ルイスの胸は温かい。いつも、ずっと、何よりも優しく温かく、愛おしい。

 ソフィアは泣きたくなるほどの優しい声に震えて、そっと彼の胸にその表情を隠した。

「貴女が悪を貫くのなら、俺はそれを批判しない。箱に入れる貴女より、自由に野山を駆けて、ライと微笑みあう貴女のほうが俺は愛おしく思う」

 愛の囁きが似合わない男だと、ソフィアはルイスに対して、そのような評価をしていたつもりだった。

「貴女の自由な道を阻害したりしない。……だが、貴女のこの先の人生に希望があるのなら、俺はその隣に在りたい。絶望なら、俺が食らい尽くす。フィア」

 ソフィアは、答えることができなかった。口を開けば今にも泣きだしてしまいそうだ。

 瞼の裏が熱を持つ。

 泣き出す寸前の痛みを思い出したソフィアは、自身に眠りの魔法を施して、ルイスの声を聞きながら意識を途切れさせた。

「愛している。フィア」

 ルイスは、静かな寝息を立てて眠り込んだソフィアの額に口づけ、何よりも優しく、丁寧にその身体を抱いてから寝台を下りた。

 素早く服を着直し、ソフィアの身体を布で清める。

 なまめかしい裸体から視線をそらした男は、子どものように眠り続けるソフィアの額にもう一度吸い付いた。

 ルイスはその後、暖炉に火を絶やすことなく薪をくべながら、敵襲をいち早く察知するため、最も小屋の入り口に近い椅子に座り込んで朝を待った。
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