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本編
天城レオニス視点:III. 俺だけの笑顔
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千景さんの背が闇に溶けていく。焚き火に残された熱よりも、握った手の温もりのほうが、まだ鮮烈に焼きついていた。
――笑った。千景さんが、あんな顔で。
焚き火の影で、思わず息を呑んだ。冷静で、いつも感情を抑えている人が、不意に零した笑い声。
一瞬、頬の線が柔らかくなり、光に照らされた美しい顔が、年下の俺にも手の届きそうな距離に見えた。
こんな顔をするんだ――可愛い、と思ってしまった。
その光景を見られたのは、この世界で俺だけだ。そう思うだけで、胸の奥が熱を持つ。その笑顔を、自分以外の誰にも見せてほしくない。
そして、あの手の感触。掌に残る温もりは、魔力の循環なんかじゃない。理屈では片づけられず、身体はそれを記憶として刻んでしまった。
指先から内側へ痺れるように広がり、抗えぬほど甘い。――もっと。もう一度、あの人と繋がりたい。
「……千景さん……」
思わず声に出して名前を呼んだ。
だが彼は慌てて手を離し、説明を残して立ち去ってしまった。残された俺の掌は、まだ震えている。熱が抜けない。
喉の奥にこみあげる声を必死に飲み込む。ヴァレリウス隊長が割って入った瞬間、黒いものがざらついた。
邪魔だ――喉まで出かかった。
絶対に譲らない。あの笑顔も、あの熱も、この手に奪い返す。誰にも渡さない。
***
【作者コメント】
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次話では、千景が気づいてほしかった想いが届かず、
成果を奪われても言い出せないまま、
小さな恥と失望が、心の底へ静かに沈んでいきます。
***
――笑った。千景さんが、あんな顔で。
焚き火の影で、思わず息を呑んだ。冷静で、いつも感情を抑えている人が、不意に零した笑い声。
一瞬、頬の線が柔らかくなり、光に照らされた美しい顔が、年下の俺にも手の届きそうな距離に見えた。
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そして、あの手の感触。掌に残る温もりは、魔力の循環なんかじゃない。理屈では片づけられず、身体はそれを記憶として刻んでしまった。
指先から内側へ痺れるように広がり、抗えぬほど甘い。――もっと。もう一度、あの人と繋がりたい。
「……千景さん……」
思わず声に出して名前を呼んだ。
だが彼は慌てて手を離し、説明を残して立ち去ってしまった。残された俺の掌は、まだ震えている。熱が抜けない。
喉の奥にこみあげる声を必死に飲み込む。ヴァレリウス隊長が割って入った瞬間、黒いものがざらついた。
邪魔だ――喉まで出かかった。
絶対に譲らない。あの笑顔も、あの熱も、この手に奪い返す。誰にも渡さない。
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【作者コメント】
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次話では、千景が気づいてほしかった想いが届かず、
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