傲慢な戦士:偽

ヘイ

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第18話

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『食料の回収の為に、護衛としてリーゼ一機の起動を命じる』
 そんな連絡が入った。
 それは艦内に響く放送である。そして、その声は搭乗者たちの聞き慣れた声ではないもの。
 三人は確認を取る為に、ヘッドギアを取り付けて岩松に繋いだ。
「どういう事ですか?」
 質問を投げかけたのは山本だった。
『私が許可した。それ以外に理由は必要かね? それに君たちには拒否権はない。命じたのは私。リーゼの指揮権は私にある』
 その言葉を出されて、三人は黙ってしまう。リーゼの指揮官である岩松に逆らってもいいことがない事くらいは分かっている。
『どうせ食料の確保程度。君たちで決めるといい。危険もないだろう』
 岩松は一方的に通信を切ってしまった。
 彼らは暫く無言であった。誰が行くのか。人に任せるのも、自分が行くのも嫌だったのだから仕方がない。
 しかし、山本だけは二人の様子を見て、
「ーー俺が行く」
 と言った。
 二人は戦いでの消耗が激しいことを山本は理解していた。この中では精神的な疲労の少ない自身が適任だと山本は判断を下す。
「お前らは休んでろ」
「疲れてるのは山本も一緒でしょ?」
 若干顔色の悪い松野が心配そうに尋ねるが山本は首を横に振り、否定を示す。
「いや、俺は大丈夫だ」
 艦内を後にして、山本はリーゼを待機させている船の上に出た。
 見えるのは沈みかけの太陽と海。
 赤く染まる世界を背景に山本は片膝をついているリーゼに乗り込み、不思議の液体に満たされた四つの穴に手足を突っ込み、右手側にあるレバーを手前に引いて起動させる。
 大きな二つの目が緑に輝く。そして、ゆっくりと立ち上がり動き始める。
「あそこか……」
 山本は外をぐるりと見ると砂浜に二人の男がいるのを見つけた。
 片方は深緑の髪にロングヘア。もう片方は黄緑色の髪。
 そこから少し離れたところにリーゼは降り立ち、二人の元へ向かう。
「お、来たか」
 迷彩服を着た彼らはリーゼが来たことに気がついた。
「やっぱデケェな」
 男はペチペチとリーゼの体を叩く。
「ちょ、止めろって川谷。踏み潰されて死んだらどうすんだよ」
 そう言って黄緑色の髪の男が笑う。
「芝浦、大丈夫だっての。んなこと起こるわけねぇだろ?」
「馬鹿か。戦争とかだと仲間の弾に当たって死ぬってことも珍しくねぇんだからな」
「おお、怖っ」
 そう言ってもそれはどこかふざけあっているように見えて緊張感なんてかけらもない。
「後ろを歩かれると踏み潰されそうで怖いな。アリみたいに」
 川谷は冗談を口にするように話し、下品に笑うと彼の笑い声に釣られるように芝浦もゲラゲラと笑う。
 つまりはリーゼに先頭を歩けということだろう。山本は何も文句を垂れることなく前を歩き始める。
「おい、ゆっくり歩けよー?」
 芝浦がケラケラと笑って言えば、川谷も続けて言う。
「四十メートルもあったら歩幅も広いからな」
 分かっている。
 だから、ゆっくり歩いているだろう。そんな文句が山本の脳内に浮かぶ。
 少しばかりの煩さを感じながら、林を掻き分けて進む。






「おほっ、大量大量」
 缶詰を見つけてはかき集め、その数は相当なものとなっていく。やっている事は火事場泥棒のようなものだ。
「おっ、これはサバの味噌煮か。良いねぇ」
 民家に入っては缶詰を集める彼らの姿をリーゼに乗り込んだ山本は黙って見下ろしている。
 敵兵の気配もなく、集まっていく缶詰を無気力に見ているだけだ。
「お、肉もあらぁ」
 持ってこられたのはパックに入った大きめの牛肉である。
 ここで生活をしていたものたちが残していった食料には缶詰などの保存食だけではなく、肉や野菜もあるようだった。
「傷んでないか?」
 川谷が運んできた牛肉を見ながら、芝浦がそう言って肉を見る。
「傷んでねぇよ。新鮮だ」
「こりゃあ、早く食わなきゃな」
 これをダメにしてしまうのは勿体ない。
 二人はそう考えたのだ。缶詰は言ってしまえば保存期間が長いが、生のものはそれ以上に痛むのが早い。
 艦内には冷蔵室、冷凍庫もあるが、そこまでの大きさはない。
 冷蔵室の中にあるものだって多くもない。基本的にはレーションといった上手くもないものばかりだ。
「にしたって何にして食うんだ?」
 目の前の牛肉を見て二人は妄想を膨らませる。そんなことを考える暇があるのなら、彼らは目的を果たすべきだと山本は考えていた。
「ステーキか、カレーかシチューか……」
「そりゃあ良い」
 彼らはそんな妄想に満たされて、缶詰の回収を中止した。足りない訳ではないだろう。それなりの量は集められたのだから、これで満足しても良い。
「おい、リーゼ。コイツを運んでくれ」
 川谷は地面に並べられた大量の缶詰と野菜を指差して告げる。
「俺たちが何回かに分けて運ぶより、そのでっかい手に乗っけた方が早いだろ?」
 芝浦は笑う。
 山本も面倒事は嫌いな為、それと彼らのことを好ましく思わない為、無駄に彼らの声を聞く必要もないと思ってゆっくりとしゃがみ込み、缶詰を乗せるように右手を開き彼らの前に差し出した。
「あん?」
 それが何を意味するのか二人にはよく分からなかったようだ。
 しかし、考えてみれば当然、缶詰はリーゼにしてみれば小さいもので自分で掴むのは至難のことである。
「俺たちが乗っけろってのかよ?」
 川谷が面倒臭そうに確かめると、リーゼはコクリと頷いた。
「チッ。仕方ねぇな」
 やれやれと言いたげな様子で二人は動き始めた。
 仕方ないもクソもあるか。
 そんな気持ちもあったが、山本はその気持ちを抑える。
 コトリコトリと缶詰と野菜がリーゼの右手に置かれていく。
「うし、これで全部か」
 地面には先ほどまであった缶詰も野菜も残っていない。全てはリーゼの手の上にある。
 山本もこれで終わりかと思い、ゆっくりと立ち上がった。
「落とすなよ。大事な食料だからな」
 川谷はその手に牛肉を持ちながら、注意する。
 分かっている。
 先程から、この男たちのことをどこか受け入れられないと山本は感じていた。
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