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第25話
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「竹崎」
とある部屋の前で、一人の少女が心配そうな声色で扉の奥にいるであろう少女に呼びかける。
「出てきてよ……」
扉を叩くこともせずに、彼女はただそう呟くだけだ。その正体はやはりというべきか川中だった。
扉の奥からは答えが返ってこない。
「……松野のことは、その」
言いかけて、何といえば良いのかが分からなかった。どんな言葉をかけても竹中の心に傷をつける結果になってしまうと、川中は悟ったのだ。
「でも、閉じこもってばかりじゃ何も変わらない、んじゃないかな……」
声をかけても、いくら呼びかけても彼女の声は聞こえない。
扉の奥にいる竹崎は感情を失い蹲っていた。泣いて、泣いて、泣いて。虚無感が心を襲って、再び彼女は独りになってしまった。
「…………」
外から呼びかけてくる川中の声はただの雑音にしか聞こえない。誰が竹崎の心を開けるのか。
彼女は失ってばかりだ。
守ってくれた姉を失って、せっかく手に入れた大好きな友人を失って。何もかもを失って、そんな自分が嫌いになってしまいそうだった。
「約束したじゃん……。独りにしないって言ってくれたじゃん……」
首にかけていたネックレスを彼女は首から無理やりに取って放り投げようとして、振り上げた右手が止まった。
「助けてよ……」
独りに戻りたくなんてない。
強く願っても、彼女は独りに戻ってしまう。殻に篭ってしまう。どうにもならない現実に心を打ちのめされてしまう。
ベッドの上で膝を抱え込みネックレスを強く握り込む。
この世界は最低だ。
折角手に入れたものを、無慈悲に奪って行って、弱いものはどうにもできないまま絶望の海に投げ出されてしまう。
「嘘、つき……」
涙を流しながら彼女はしゃくり上げる様な声でそう呟いた。
「あ、ああ……」
生きる価値を見いだせず、彼女には生きる理由もなくなった。死んで仕舞えばいいのか。死んだら、姉に、松野に、大切な二人にまた会えるのだろうか。
震える手が自らの首に伸びて行く。
「ぐぅっ、……はっ、ゔっ」
気道が閉まり、呼吸は段々と浅くなって行く。ああ、もう直ぐ死んでしまう。そうすればきっと、楽になって、こんな理不尽に悩まされることはない。
そう思い込むことで、今の苦しさに耐えようとしていた。恐怖よりも、竹崎の頭の中には二人に会いたいという意思が強くあった。
「かはっ……、こひゅっ」
苦しげな吐息が漏れる。
その瞬間に扉が開かれて、川中が入ってきた。
「何してるのっ!?」
急いで駆け寄ってきた川中が竹崎の両手首を掴んで壁に押し付けた。川中の焦った様な顔が竹崎の瞳に映った。
「はぁ、はぁ、……なんで……」
死人のような生気の宿らない瞳が、川中の目を覗く。
「何で死のうとしてるの!」
「……なんで、生きるかちがあるの?」
舌ったらずな、呂律が回っていないような、幼い子供のような声で竹崎は感情もなくそう尋ねた。
「生きるりゆうなんて、もうないんだよ」
川中の拘束を振り解こうとするが振り解けない。竹崎の力では川中の力に適わないから。
「なんで、えらばせてくれないの?」
自由にさせてくれないのだろう。
ただ、普通の生活がしたかった。姉と一緒に買い物に行って、友達と笑っていられる環境を求めていた。
「死なせてよ。もう、生きてたくないのっ」
涙が頬を伝った。
それを見た川中も心を痛めて、涙を流す。
「ーー辛かったよね……。頑張ったよ、竹崎は。真衣は頑張った」
拘束する手を離して、川中は竹崎の体を力強く抱きしめた。
「でも、まだ頑張るんだよ。生きてるんだよ。真衣はまだ生きてるんだ。生きる価値ならここにあるよ」
温もりが竹崎の体を包み込む。
温かな優しさに、体の力が抜けた。
「私は真衣に生きて欲しいんだ」
より一層強く抱きしめると、竹崎はその温もりに縋るように、川中の背中に手を伸ばした。
「ーーああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
優しさなど信じてしまうと裏切られるというのに、また竹崎は縋ってしまう。それは悪いことなどではない。人は優しさに弱い生き物なのだから。
泣き叫ぶ竹崎の背中を、優しく川中は叩いてやる。その様子は母親が子供を慰めるようであった。
月明かりが照らすとある夜の話であった。
結局、竹崎は部屋から出ることができずにいた。川中の優しさにだけ彼女は心を開いて、それ以外の人間には心を閉ざしたままだった。
阿賀野も飯島も間磯も彼女の心の機微に興味はなかった。いや、飯島には誰かを思いやれるほどの余裕がなかったのかもしれない。
彼らの住居は寮であり、その中には食堂もあった。朝食の時間も決まっており、その時間になれば全員が揃う筈なのだが、竹崎だけがここにいない。
「川中でもどうにもならなかったのかな?」
間磯は阿賀野の隣に座ってそう尋ねる。それが鬱陶しく感じながらも、阿賀野は適当に答える。
「さてな。俺たちが知ったってどうにもならねぇよ。俺は興味もねぇ」
バクバクと朝食を口の中に運んで味噌汁で流し込み、最後にコップ一杯の水を飲み切った。誰よりも早く席を立ち、彼は空になった食器をカウンターに渡した。
「阿賀野」
間磯は座ったまま、名前を呼んだ。
「何だよ」
ただでさえ鋭い目付きをさらに鋭くさせながら、間磯に向けた。
「どこにいくんだ?」
「トレーニングだよ」
簡潔に答えて、阿賀野は食堂を後にした。そうして、食堂を出て直ぐのところで阿賀野は声をかけられた。
「阿賀野」
振り返らずとも声で分かる。
その声は九郎のものである。大して彼と話すことに意味を見出せなかった阿賀野は彼の声を無視して、そのまま目的地まで向かおうとする。
「ーー君はどうしてここに来たんだ?」
散々、尋ねられたことだ。
何故、今更こんな事を聞かれるのかも分からない。
「何だよ、いきなり。これに答えんのも何回目だ? まあ、俺は誘われたから来たんだよ」
いい加減にしてくれ。
そう言うように彼は溜息を吐いてから答えた。
「そうじゃない。何で君がそれに応じたかを尋ねているんだ」
これを聞けば、九郎は自分の中にある疑問が解消するかもしれないと思ったのだろう。ただ、質問は無意味な事だった。
九郎には阿賀野という男の持つ特別さが分からない。九郎を連れてきた男の言う特別を感じることができない。
「……応じた理由、ね。それに関しては全く持って単純な話だな。単純に俺は最強でありたいんだよ。それに、倒すべき奴も見つけた。ここに来て良かったと思ってるよ」
逆に聞くが。
そう前置きをして、阿賀野が九郎の目を真っ直ぐに見て問う。
「お前は何でここにいるんだ?」
阿賀野は聞いたことがなかった。九郎という男がこんな場所にいる理由を。九郎が阿賀野を手伝うようにと言われているのは知っているが、それに応じる必要はあったのか。
「これが最後だからな……」
九郎はそれだけ呟いて、これ以上を話す気もなかったのだろう。
「ああ? 意味が分からねぇな」
「分からなくてもいい事だよ」
「そうかよ。……とりあえず、俺はトレーニングに行くからな」
阿賀野は九郎と別れようとするが、
「ーー僕も行くよ」
と言って、九郎は阿賀野に付いてくる。
「付いてくんのかよ……」
とある部屋の前で、一人の少女が心配そうな声色で扉の奥にいるであろう少女に呼びかける。
「出てきてよ……」
扉を叩くこともせずに、彼女はただそう呟くだけだ。その正体はやはりというべきか川中だった。
扉の奥からは答えが返ってこない。
「……松野のことは、その」
言いかけて、何といえば良いのかが分からなかった。どんな言葉をかけても竹中の心に傷をつける結果になってしまうと、川中は悟ったのだ。
「でも、閉じこもってばかりじゃ何も変わらない、んじゃないかな……」
声をかけても、いくら呼びかけても彼女の声は聞こえない。
扉の奥にいる竹崎は感情を失い蹲っていた。泣いて、泣いて、泣いて。虚無感が心を襲って、再び彼女は独りになってしまった。
「…………」
外から呼びかけてくる川中の声はただの雑音にしか聞こえない。誰が竹崎の心を開けるのか。
彼女は失ってばかりだ。
守ってくれた姉を失って、せっかく手に入れた大好きな友人を失って。何もかもを失って、そんな自分が嫌いになってしまいそうだった。
「約束したじゃん……。独りにしないって言ってくれたじゃん……」
首にかけていたネックレスを彼女は首から無理やりに取って放り投げようとして、振り上げた右手が止まった。
「助けてよ……」
独りに戻りたくなんてない。
強く願っても、彼女は独りに戻ってしまう。殻に篭ってしまう。どうにもならない現実に心を打ちのめされてしまう。
ベッドの上で膝を抱え込みネックレスを強く握り込む。
この世界は最低だ。
折角手に入れたものを、無慈悲に奪って行って、弱いものはどうにもできないまま絶望の海に投げ出されてしまう。
「嘘、つき……」
涙を流しながら彼女はしゃくり上げる様な声でそう呟いた。
「あ、ああ……」
生きる価値を見いだせず、彼女には生きる理由もなくなった。死んで仕舞えばいいのか。死んだら、姉に、松野に、大切な二人にまた会えるのだろうか。
震える手が自らの首に伸びて行く。
「ぐぅっ、……はっ、ゔっ」
気道が閉まり、呼吸は段々と浅くなって行く。ああ、もう直ぐ死んでしまう。そうすればきっと、楽になって、こんな理不尽に悩まされることはない。
そう思い込むことで、今の苦しさに耐えようとしていた。恐怖よりも、竹崎の頭の中には二人に会いたいという意思が強くあった。
「かはっ……、こひゅっ」
苦しげな吐息が漏れる。
その瞬間に扉が開かれて、川中が入ってきた。
「何してるのっ!?」
急いで駆け寄ってきた川中が竹崎の両手首を掴んで壁に押し付けた。川中の焦った様な顔が竹崎の瞳に映った。
「はぁ、はぁ、……なんで……」
死人のような生気の宿らない瞳が、川中の目を覗く。
「何で死のうとしてるの!」
「……なんで、生きるかちがあるの?」
舌ったらずな、呂律が回っていないような、幼い子供のような声で竹崎は感情もなくそう尋ねた。
「生きるりゆうなんて、もうないんだよ」
川中の拘束を振り解こうとするが振り解けない。竹崎の力では川中の力に適わないから。
「なんで、えらばせてくれないの?」
自由にさせてくれないのだろう。
ただ、普通の生活がしたかった。姉と一緒に買い物に行って、友達と笑っていられる環境を求めていた。
「死なせてよ。もう、生きてたくないのっ」
涙が頬を伝った。
それを見た川中も心を痛めて、涙を流す。
「ーー辛かったよね……。頑張ったよ、竹崎は。真衣は頑張った」
拘束する手を離して、川中は竹崎の体を力強く抱きしめた。
「でも、まだ頑張るんだよ。生きてるんだよ。真衣はまだ生きてるんだ。生きる価値ならここにあるよ」
温もりが竹崎の体を包み込む。
温かな優しさに、体の力が抜けた。
「私は真衣に生きて欲しいんだ」
より一層強く抱きしめると、竹崎はその温もりに縋るように、川中の背中に手を伸ばした。
「ーーああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
優しさなど信じてしまうと裏切られるというのに、また竹崎は縋ってしまう。それは悪いことなどではない。人は優しさに弱い生き物なのだから。
泣き叫ぶ竹崎の背中を、優しく川中は叩いてやる。その様子は母親が子供を慰めるようであった。
月明かりが照らすとある夜の話であった。
結局、竹崎は部屋から出ることができずにいた。川中の優しさにだけ彼女は心を開いて、それ以外の人間には心を閉ざしたままだった。
阿賀野も飯島も間磯も彼女の心の機微に興味はなかった。いや、飯島には誰かを思いやれるほどの余裕がなかったのかもしれない。
彼らの住居は寮であり、その中には食堂もあった。朝食の時間も決まっており、その時間になれば全員が揃う筈なのだが、竹崎だけがここにいない。
「川中でもどうにもならなかったのかな?」
間磯は阿賀野の隣に座ってそう尋ねる。それが鬱陶しく感じながらも、阿賀野は適当に答える。
「さてな。俺たちが知ったってどうにもならねぇよ。俺は興味もねぇ」
バクバクと朝食を口の中に運んで味噌汁で流し込み、最後にコップ一杯の水を飲み切った。誰よりも早く席を立ち、彼は空になった食器をカウンターに渡した。
「阿賀野」
間磯は座ったまま、名前を呼んだ。
「何だよ」
ただでさえ鋭い目付きをさらに鋭くさせながら、間磯に向けた。
「どこにいくんだ?」
「トレーニングだよ」
簡潔に答えて、阿賀野は食堂を後にした。そうして、食堂を出て直ぐのところで阿賀野は声をかけられた。
「阿賀野」
振り返らずとも声で分かる。
その声は九郎のものである。大して彼と話すことに意味を見出せなかった阿賀野は彼の声を無視して、そのまま目的地まで向かおうとする。
「ーー君はどうしてここに来たんだ?」
散々、尋ねられたことだ。
何故、今更こんな事を聞かれるのかも分からない。
「何だよ、いきなり。これに答えんのも何回目だ? まあ、俺は誘われたから来たんだよ」
いい加減にしてくれ。
そう言うように彼は溜息を吐いてから答えた。
「そうじゃない。何で君がそれに応じたかを尋ねているんだ」
これを聞けば、九郎は自分の中にある疑問が解消するかもしれないと思ったのだろう。ただ、質問は無意味な事だった。
九郎には阿賀野という男の持つ特別さが分からない。九郎を連れてきた男の言う特別を感じることができない。
「……応じた理由、ね。それに関しては全く持って単純な話だな。単純に俺は最強でありたいんだよ。それに、倒すべき奴も見つけた。ここに来て良かったと思ってるよ」
逆に聞くが。
そう前置きをして、阿賀野が九郎の目を真っ直ぐに見て問う。
「お前は何でここにいるんだ?」
阿賀野は聞いたことがなかった。九郎という男がこんな場所にいる理由を。九郎が阿賀野を手伝うようにと言われているのは知っているが、それに応じる必要はあったのか。
「これが最後だからな……」
九郎はそれだけ呟いて、これ以上を話す気もなかったのだろう。
「ああ? 意味が分からねぇな」
「分からなくてもいい事だよ」
「そうかよ。……とりあえず、俺はトレーニングに行くからな」
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