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第二部
囚われの天使
しおりを挟む「ううっ……」
監禁され、目を覚まして数時間。
アリエルは自らの下腹部の辺りに耐え難いむず痒い様な感覚を覚えて、左右の太腿をモジモジと擦り合わせる。
「ひぅぅっ……」
吐息の様な声が漏れる。
単なる生理現象、詰まるところは尿意であるわけなのだが腕も足もがっちりと押さえつけられており、勿論のこと一人では用を足すこともできない。
監視と称して、何度か部屋を出入りするエスターがアリエルの不審な様子に気がつく。
「エン……アリエル。どうした?」
別にエスターは揶揄う目的で言っている訳ではない。
「トイレに行きたいんだけど……」
アリエルも素直に答えると、エスターは無表情のままに返答する。
「勝手な行動は許可できない。他でもない貴女が用を足したいと言うのなら、俺が手伝おうか」
手伝う。
何の話をしているのか、アリエルの脳の回転が一瞬遅れる。
「……何言ってるの!」
理解不能だ。
子女の排尿を手伝うなど。顔を真っ赤に染めてアリエルが叫んだ。
「?」
しかし、エスターにはアリエルが怒鳴った理由が理解出来ていない様だ。
「最低だよ!」
「分からんが……いや、俺は貴女に対して邪な考えは抱いていない」
そう言う話ではない。
アリエルが個人として受け入れられないのだ。誰かに見られながら排尿をするなどと言うことが。食事を共にすると言うのとはまったくもって訳が違う。
「警察に通報してやる……」
これは婦女に対する強烈なハラスメントだ。年若い彼女であったとしても許されざる行為だ。真摯であるかどうかは全くもって関係ない。
性的被害を受けたとして訴えても誰も間違えているなどとは言わないだろう。
「そもそも貴女には通報する手段もなく……通報したところで無意味な話だ」
彼女の携帯電話は回収している。
警察内部に協力者がいる為、彼女の通報が効力を成す事はない。
ただ、アリエルの機嫌を損ねるのはエスターとしても本意ではない。どうしたものかと腕を胸の前で組んで、一つ疑問に思ったことを口に出す。
「俺ではなく同性……女性なら良いのか?」
だから、性別の話ではないのだ。
とは言え、このままでは本格的に限界に達してしまう。失禁の可能性が過ぎる。
余りにもみっともなさ過ぎる。
「……それなら」
我慢しよう。
仕方がない。譲歩しよう。そうしなければアリエルの失う尊厳がより大きなものになってしまうから。
同じ恥だが度合いが違う。
「では、アリエル……俺は退室した方がいいのだろうか」
「当然!」
アリエルが吠えた。
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