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39 ダンジョンとアーティファクト
しおりを挟む川沿いは、次から次へとサハギンが現れ、危険と判断したゼンジたちは、モヤの奥に見える木を目指して、大きな木を後にした。
川から離れたゼンジは、スキルにロックがかかる音を耳にして安堵した。
「なあメロン、ブラックドラゴンが側近ってどういう事だ?それとアーティファクトって何だ?」
『水に濡れて喋れない!』
「しっかり喋ってるだろ!マスタードラゴンは色々と知ってそうだが」
『水が耳に入って聞こえな~い』
「無視をするな!」
『水が怖いよ~。木の下に戻ろうよ~』
「ポーラ、アーティファクトの事を知ってるか?」
『諦めるな弱虫!どうして直ぐに諦めるんだよ!男ならしぶとくあれ!』
「ポーラ、知ってる事を教えてくれ」
『無視をしない!』
「何も聞こえないな~あれ?弱虫の泣き声がする」
『真似するなよ!』
「ポーラ頼む」
『むっ!!』
「はい。じゃあメロンちゃん。お願いできますか?」
『ポ~ラ~!ゼンジもポーラを見習うんだぞ!よし!木の下まで引き返すんだ!』
「川の側は危険だ!戻らん!ポーラ頼む」
『ぐぬっ!』
「わかりました。アーティファクトとは、高度な技術や、未知のスキル、古代の魔法などによって作られた物を表す言葉です。一説によると、古代の遺物とも言われています。
アーティファクトには、ゼンジが使用したような強力な武器や、防具、アイテム等、様々な物が存在します。
冒険者によっては、アーティファクトだけを探し求めている者もいる程です。それを一つ手に入れるだけで、巨万の富を得ることが出来るからです」
「そんなに凄いものなのか?それは作れないのか?」
「どんなに優秀な方たちでも、決して作ることが出来ません。いつ、誰が、どこで、どのような目的で作ったのか一切不明なのです。
噂では、古代神々の戯れ、不死者の秘宝、ダンジョンの産物など、まことしやかに囁かれています。中でも最も有力なのが、異世界の創造物ではないかということです」
「異世界!?」
「はい。現にゼンジも、私たちが見たこともない武器を錬成したでしょう?ダンジョンもそうです。アーティファクトの殆んどが、ダンジョン内で発見されるのです。しかも、深層に行けば行くほど、発見する確率が上がるそうです。それと同時にモンスターも強くなり命の危険も上がりますが」
「ダンジョンって、ゲームのRPGで言う迷宮の事か?」
「あーるぴーじー、は知りませんが、その考えで合っていると思います。ダンジョンは各所にあり、多種多様な階層や、トラップ、モンスターが存在します。不思議なことに、宝箱を取り尽くしても、時間が経つとまた出現します」
「どう言うことだ?誰かが置いていくのか?」
「いいえ。これも推測なのですが、ダンジョン自体がモンスターだと言う人もいます」
「ダンジョンが、巨大なモンスターだとでも言うのか?」
「そうです。その理由の一つが、ダンジョンで命を落とすと、いずれダンジョンに吸収されるからです。アイテムなどを餌として、生物を誘い込み、捕食しているのだと言われています」
「それのどこが異世界の創造物なんだ?」
「それはもう一つの理由です。ダンジョンが異世界と繋がっている可能性があるからです。実はゼンジの他にも異世界人は存在します。その中にはダンジョンから出てくる人もいたそうです。その人たちは、何故かアーティファクトの使い方や、それに付随する言葉を知っているそうです。先程のゼンジが言ったハッポウも、その一つだと私は思います。ですからゼンジも気を付けてください。異世界人は、各国がこぞって奪い合います。強力な軍事力になるから」
「……ダンジョンが……地球と繋がってる?」
(あるいは女神様が転移させる先は、ダンジョンなのかもしれないな……自分は失敗したんだろうけど)
「あまり期待はしないでください。誰も証明が出来ないので、憶測でしかありません」
『我が証明しようか?』
「何だ?メロンは何か知っているのか?」
「メロンちゃん?」
『我が証明するのはゼンジの事だよ。ゼンジは異世界人だよね?』
「聞いていたのか!?あっ、いや、な、何を根拠に、そ、そんな事を言っているのかい?」
『貴様たちゃ!今の今まで我のことを忘れてたでしょ!二人で夢中になって、楽しそうにニコニコペチャクチャ喋って!聞いていたのか?じゃないわ!聞かないようにしても、聞こえてくるさ!今の話をまとめれば、ぬいぐるみでも気付くわ!』
「サー。ナニヲイッテルノカサッパリデス」
『はぁ。今更隠さなくてもいーよ。別に驚かないよ』
「異世界人って、そんなに特別じゃないのか?」
『特別だよ。けど、我は異世界人に会うのはゼンジで二人目だよ』
そう言うとメロンは元気が無くなった。
「何だって!?どこで会ったんだ?どんな奴だ?自分みたいに黒髪の日本人なのか?」
しかしゼンジは食いついた。
『時が来たら話してやろう』
メロンはいつものように、冗談を言ってはぐらかそうとした。
「何格好つけてんだよ!勿体ぶらずに教えてくれ!」
メロンは途端に表情が暗くなった。
『本当に言えないんだよ……口に水が入ってさ』
声のトーンも低くい。
(しまった。きっと悲しい過去があるんだな……辛い別れがあったんだろう……すまんメロン)
「分かった。言えるようになったら教えてくれ」
ゼンジの言葉に意表を突かれたメロンは、呆気に取られ、その後笑顔を取り戻した。
『男は諦めが肝心だからな!』
「諦めるなとか、諦めろとか。どっちだよ!」
『どっちもだよ』
メロンはいつものメロンに戻っていた。
(話を変えないとな……CPOと話そうかな。そうだ、レベルがあがったよな?)
「レベルが上がったから、ちょっと確認するよ。ステータスオープン」
目の前に現れたステータスウィンドウには、新たなスキル小銃、銃剣、手榴弾、射撃術Lv1、そしてバレットタイムLv1の表示があった。さらに小銃の攻撃力は2800と記されていた。ちなみに警棒術と盾術のレベルが、それぞれ一つ上がっていた。
(小銃強っっ!!桁が違う!)
「さっき見た時より増えてる!小銃と銃剣はセットで覚えてたから、新たに手榴弾と、射撃術、それにバレットタイムを覚えたみたいだ!」
(ナイフはもっと早く欲しかったな)
【銃剣とは小銃の先に装着する、ナイフの事である】
『スキルは、いろんな条件で覚えるものなんだよ。例えば、種族や職業により固定されてるものは、レベルが上がれば自動的に覚えるんだ。他には意識したり、訓練し続けると覚える事もある。今回ゼンジが覚えた射撃術は、弓使いや、盗賊が覚える基本のスキルだよ。基本と言っても、本来なら短期間で覚えるスキルじゃないから、意外と才能があるんだろうね』
「意外は余計だよ!多分、地球で訓練してたからじゃないか?」
『チキュウ?ああ、異世界の呼び方だね。そこで使ってたのか。そんな事はどうでも良いとして』
「慣れてきたぞ。毒耐性でも覚えたか?」
『何とかリュウダンとバレットタイムは、きっとレア物だよ。我も聞いた事が無いからね』
「そうかもな。手榴弾は使えるぞ!それにバレットタイムは多分、時間がスローになるあれだよな?あれを使いこなせれば戦闘も有利になりそうだ」
『他にも、生まれつきだったり、アイテムを使って覚えたり、継承される珍しいモノもあるんだ。魔法も初級だと、属性に合わせて訓練を積めば、誰でも覚える事ができるんだよ』
「それは本当か!?マジックポイントが無い自分にも、覚える可能性があるのか?」
『ドンマイ』
「……期待させるような事を言わないでくれ」
『魔法が付与された装備品で我慢するしかないよ』
「え?それだと使えるのか?」
『武器や防具、そしてアクセサリーを装備する事で、それに付与されている、スキルや魔法が使えるものもあるよ』
「是非欲しい!!希望が見えてきた!」
『スキルは魔法も合わせると、多岐に渡るんだ。条件が揃えば覚えることもあるから、何か欲しいスキルがあれば挑戦してみるのも手だよ。そして、スキルによっては熟練度があって、使い続けて技術を上げると、更に上のスキルに成長する事もあるんだ』
「そうか!よ~し何に挑戦するかな!」
『まずは、木の下が好きスキルを覚えたら?』
「そんなもんいるか!!」
(女神様、こちら自衛官、
転移先はダンジョンだったのですか?もしかしてそこには、高性能なアーティファクトもあったのですか?、どうぞ)
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