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24 恋は盲目。毒は防毒。
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【ラムドールの村に着いたゼンジたちは、その情景に言葉を失う。バスケットボールほどの、バルーンモスキートが村中を飛び回り、上空には、毒により皮膚が赤くなった人たちを狙う、レッドイーターの群が覆っていた。
そして、知らぬ間に新しい義務、品位を保つ義務が発動していたゼンジは、身体の汚れを川の水で洗い流し、義務の縛りを解除することに成功する。
しかしテープルにより解毒薬を頭からかけられ、再び義務を発動させたのであった】
「メロン頼む!」
『任せて!ウルトラクリーン』
メロンは可愛らしい両手をゼンジに向けて、汚れを消し去る魔法を唱えた。
ゼンジにかかった、緑色の解毒薬の汚れは瞬く間に消えた。
「い、今、ぬ、ぬいぐるみが喋りました!動きましたよね?」
ゼンジとメロンは、穴という穴を大きく開き、お互いを見て固まった。
「私の魔法です。私はぬいぐるみを操る事が出来ます」
すかさずポーラが答えた。
(ナイスだポーラ!)
「ほう!それは珍しい何という職業ですか?」
「えっ?え~っと、そ、それは~……」
「魔物使い(テイマー)とは明らかに違いますし。死霊使い(ネクロマンサー)でもなさそうだ」
テープルは顎に手を当てメロンを見つめた。
ポーラは明らかに挙動不審になり、目でゼンジに救いを求めた。
(何だ!操る職業って何だ?あの人形の口を動かして代わりに喋るやつ何だっけ?)
「そ、操縦士を知りませんか?」
(しまったぁ~!何も思いつかなかったぁ!
操縦士なんてこの世界にあるのか?ザ・航空自衛隊だな!)
「ソウジュウシ?聞いた事もない職業ですね」
「そ、そうですか?東の国では、知らない人はいないと思いますよ」
(嘘は言ってないよな?変な義務は発動してないだろうな?ん?どうせなら人形使いで良かった!思い出した!腹話術師だ!)
「~~~!」
ゼンジは自分の軽率さに腹を立てた。
「テープルさん!無事でしたか!」
その時、村の中から声がした。
一斉にそちらを向くと、真っ赤な肌をした女性がバルーンモスキートを引き連れて立っていた。
「キーラさん!外に出ちゃダメです!」
「ど、どこにいても同じです。馬車の音が、き、聞こえたので、ハァハァ、もしかしたらと、思い、出てきちゃいました」
キーラという女性は、微笑んではいるが、腕、腰そして足にしがみつく、バルーンモスキートに血を吸われつつも、大粒の汗を流し苦痛に耐えている。
「何を言ってるんですか!部屋の中にいてください!外に出るのは危険すぎます!」
「大丈夫です……バルーンモスキートが……いるので」
「それでもです!血を吸われ続けると命に関わります!」
キーラが一歩前に出るタイミングで、腰のバルーンモスキートに触れてしまい、その振動でバルーンモスキートが毒を吐き出し体を萎ませた。
「ごめんなさい」
「くっ」
テープルは漂う毒を吸ってしまい、皮膚が赤く染まり始めた。
「か、体が重い!」
「な、何じゃ?これが毒?」
ゼンジたちもその毒を吸ってしまい、皆皮膚を赤く染めていた。それと同時に、ロックが解除される音を聞いた。
「大丈夫です。解毒薬を仕入れて来ました」
テープルはそう言うと、動きが遅くなりつつも、解毒薬を飲み元に戻った。
「さあ。家に戻ってキーラさんも飲んでください」
「ありがとう…ございます。し、しかし…危険だったのでしょう」
キーラの顔から微笑みが消えた。
「はい。他の冒険者の方々は、その時に命を……」
テープルの表情により、既にこの世には居ないのだと悟った。
「そんな……終わりの無い…私共などの為に」
「諦めないでください!必ず何か方法があるはずです!」
テープルはキーラに近付いた。
「テープルさん!」
キーラもまたテープルに歩み寄る。
そして手を取り合い見つめ合い始めた。
「おい!何やってるんだ!安全な場所に移動するぞ!」
痺れを切らしたゴードンが声を掛けるが、二人には聞こえていないようだ。
しかし、そんな二人に急速に近付く者がいた。
「お熱くなってる所、邪魔してすみません」
奇妙なマスクをつけた男が、黒い棒でキーラにしがみつく、萎んだバルーンモスキートを叩き落とした。
「な!何をするんですか!」
テープルが気付いた時には既に遅く、叩いた衝撃で他のバルーンモスキートが体を萎ませ毒の霧を噴き出した。
「くっ!かっ、体が……」
再び毒を吸い込んだテープルの肌は、次第に赤くなる。
「やめて下さい!何をするんですか!?」
キーラも慌てて止めに入ろうとするが、その意思とは裏腹に動きは極めて鈍かった。
しかし奇妙なマスクを付けた男は、毒を吸い込んだにも関わらず、萎んだ残りの二匹も瞬く間に叩き落とした。
『ゼンジ!』
キーラは声のする方を見た。そこにも奇妙なマスクを付けた者がいた。しかし喋っていたのは、その者が抱えるドラゴンのぬいぐるみで、可愛らしい手を上に挙げ、空に指を立てていた。
「了解!」
奇妙なマスクを付けた男は、上空を見上げつつ、バルーンモスキートを叩き落とした黒い棒を短くして、左足に付けているホルダーに収納した。
そして袈裟に掛けていた紐を引くと、後ろに背負っていた黒い塊がその姿を現した。
細長く見た事もない形をしている。
上空を見上げたまま、黒い塊を両手で抱え上げ、それを覗き込む。
マスクから、こもった声が聞こえた。
「耳を塞いでください」
ごめんなさい。という言葉を付け加えて。
それは、動きが遅いキーラとテープルに宛てたものだった。
防毒マスクを装備したゼンジは、急降下するレッドイーターに照準を合わせた。
遥か上空で旋回していた群れの中から、四体が向かって来る。しかしその距離が近付くにつれ、驚くほど大きくなり、眼前にいるレッドイーターはマンティコアとほぼ同じサイズであった。
キーラの視界の端にレッドイーターが見えた。直後こもった声が聞こえた。
「バレットタイム」
スローモーションとなった景色の中、すかさず二発発砲した。
一体目の胸に、二発の弾丸がめり込むのを確認して、他のレッドイーターの眉間に一発ずつ発砲した。
スローモーションが解けると、レッドイーターは大きく頭を振り、きりもみ回転を始め地面に激突した。
(他の鳥は気付いてないみたいだな。それにしても防毒マスクは視界が悪いな。外す訳にもいかないし)
ゼンジは振り向きテープルに謝罪した。
「突然攻撃してすみません。ずっと対処法を考えていたのですが、眠くて、やはりこれしか思いつきませんでした。話すと反対されると思い、ポーラにだけ話しました。騙すような事をして本当にすみません。自分は眠いんです!」
その時テープルとキーラは、小銃の音の大きさに驚き、その場でジャンプした。
『遅っ!今っ!?ププッ』
「おいメロン!」
テープルは顔を引き攣らせポーラに向けて話した。
「今のは、ぬいぐるみが喋ったって事は……ソウジュウシのポーラ殿の言葉では?」
メロンは慌てて両手を口に手を当てた。
「ご、ごめんなさい」
ポーラは顔を赤らめて頭を下げ、ゼンジはメロンを般若の如く睨みつけた。
メロンは脱力して遠くを見つめ、そしてぬいぐるみのように動かなくなった。
バレットタイムは使用していないが、気まずい雰囲気が永遠のように感じた。
「ウォ~ン!やっぱりスゲェよ!助かった!」
(ナイス!ノック!助かった!)
ノックの一言で動き出した時を、ゼンジは必死に手繰り寄せた。
「そ、そんな事ないよ!と、取り敢えず解毒薬を二人に渡してくれよ」
「ウォ~ンそうだな!リッキー!解毒薬を二つ持って来てくれ!!」
幌馬車の中で、待機していた弟のリッキーが、解毒薬を持ってきた。
そしてテープルとキーラに渡すと、二人はゆっくりとした動きでそれを飲み干した。
「ありがとうございます。テープルさん。毒が消えました」
キーラにはテープルしか見えていないようだ。
「当たり前の事をしたまででです」
テープルもまた同じだった。
二人は手を取り合い見つめ合っていた。
ここでもやはりバレットタイムは使っていない。
「いつまでそんな事やってるんだ?安全な場所に移動するぞ!」
毒が消えても、動きの遅い二人に豪を煮やしたゴードンが、二人の間をわざわざ通って村へ入って行った。
「そ、それじゃあ私の家に来て下さい!直ぐそこの道具屋です」
「そうしましょう!皆さん、彼女の店は宿屋も兼務しています。そこで作戦を立て直しましょう」
門の近くに建っている大きな建物を指差した。
店の看板には、宿屋と道具屋を兼ね備えたマークが刻まれている。
「まさかテープルさんは、彼女の為に解毒薬を仕入れたんじゃないか?それを彼女は売り捌こうとしてるとか?」
「有り得ますね……」
一行はキーラの店『白い雄鶏亭』に向かった。
(女神様、こちら自衛官、
恋は盲目と言いますが、実際に見たのは初めてです。毒より恐ろしいですね。どうぞ)
そして、知らぬ間に新しい義務、品位を保つ義務が発動していたゼンジは、身体の汚れを川の水で洗い流し、義務の縛りを解除することに成功する。
しかしテープルにより解毒薬を頭からかけられ、再び義務を発動させたのであった】
「メロン頼む!」
『任せて!ウルトラクリーン』
メロンは可愛らしい両手をゼンジに向けて、汚れを消し去る魔法を唱えた。
ゼンジにかかった、緑色の解毒薬の汚れは瞬く間に消えた。
「い、今、ぬ、ぬいぐるみが喋りました!動きましたよね?」
ゼンジとメロンは、穴という穴を大きく開き、お互いを見て固まった。
「私の魔法です。私はぬいぐるみを操る事が出来ます」
すかさずポーラが答えた。
(ナイスだポーラ!)
「ほう!それは珍しい何という職業ですか?」
「えっ?え~っと、そ、それは~……」
「魔物使い(テイマー)とは明らかに違いますし。死霊使い(ネクロマンサー)でもなさそうだ」
テープルは顎に手を当てメロンを見つめた。
ポーラは明らかに挙動不審になり、目でゼンジに救いを求めた。
(何だ!操る職業って何だ?あの人形の口を動かして代わりに喋るやつ何だっけ?)
「そ、操縦士を知りませんか?」
(しまったぁ~!何も思いつかなかったぁ!
操縦士なんてこの世界にあるのか?ザ・航空自衛隊だな!)
「ソウジュウシ?聞いた事もない職業ですね」
「そ、そうですか?東の国では、知らない人はいないと思いますよ」
(嘘は言ってないよな?変な義務は発動してないだろうな?ん?どうせなら人形使いで良かった!思い出した!腹話術師だ!)
「~~~!」
ゼンジは自分の軽率さに腹を立てた。
「テープルさん!無事でしたか!」
その時、村の中から声がした。
一斉にそちらを向くと、真っ赤な肌をした女性がバルーンモスキートを引き連れて立っていた。
「キーラさん!外に出ちゃダメです!」
「ど、どこにいても同じです。馬車の音が、き、聞こえたので、ハァハァ、もしかしたらと、思い、出てきちゃいました」
キーラという女性は、微笑んではいるが、腕、腰そして足にしがみつく、バルーンモスキートに血を吸われつつも、大粒の汗を流し苦痛に耐えている。
「何を言ってるんですか!部屋の中にいてください!外に出るのは危険すぎます!」
「大丈夫です……バルーンモスキートが……いるので」
「それでもです!血を吸われ続けると命に関わります!」
キーラが一歩前に出るタイミングで、腰のバルーンモスキートに触れてしまい、その振動でバルーンモスキートが毒を吐き出し体を萎ませた。
「ごめんなさい」
「くっ」
テープルは漂う毒を吸ってしまい、皮膚が赤く染まり始めた。
「か、体が重い!」
「な、何じゃ?これが毒?」
ゼンジたちもその毒を吸ってしまい、皆皮膚を赤く染めていた。それと同時に、ロックが解除される音を聞いた。
「大丈夫です。解毒薬を仕入れて来ました」
テープルはそう言うと、動きが遅くなりつつも、解毒薬を飲み元に戻った。
「さあ。家に戻ってキーラさんも飲んでください」
「ありがとう…ございます。し、しかし…危険だったのでしょう」
キーラの顔から微笑みが消えた。
「はい。他の冒険者の方々は、その時に命を……」
テープルの表情により、既にこの世には居ないのだと悟った。
「そんな……終わりの無い…私共などの為に」
「諦めないでください!必ず何か方法があるはずです!」
テープルはキーラに近付いた。
「テープルさん!」
キーラもまたテープルに歩み寄る。
そして手を取り合い見つめ合い始めた。
「おい!何やってるんだ!安全な場所に移動するぞ!」
痺れを切らしたゴードンが声を掛けるが、二人には聞こえていないようだ。
しかし、そんな二人に急速に近付く者がいた。
「お熱くなってる所、邪魔してすみません」
奇妙なマスクをつけた男が、黒い棒でキーラにしがみつく、萎んだバルーンモスキートを叩き落とした。
「な!何をするんですか!」
テープルが気付いた時には既に遅く、叩いた衝撃で他のバルーンモスキートが体を萎ませ毒の霧を噴き出した。
「くっ!かっ、体が……」
再び毒を吸い込んだテープルの肌は、次第に赤くなる。
「やめて下さい!何をするんですか!?」
キーラも慌てて止めに入ろうとするが、その意思とは裏腹に動きは極めて鈍かった。
しかし奇妙なマスクを付けた男は、毒を吸い込んだにも関わらず、萎んだ残りの二匹も瞬く間に叩き落とした。
『ゼンジ!』
キーラは声のする方を見た。そこにも奇妙なマスクを付けた者がいた。しかし喋っていたのは、その者が抱えるドラゴンのぬいぐるみで、可愛らしい手を上に挙げ、空に指を立てていた。
「了解!」
奇妙なマスクを付けた男は、上空を見上げつつ、バルーンモスキートを叩き落とした黒い棒を短くして、左足に付けているホルダーに収納した。
そして袈裟に掛けていた紐を引くと、後ろに背負っていた黒い塊がその姿を現した。
細長く見た事もない形をしている。
上空を見上げたまま、黒い塊を両手で抱え上げ、それを覗き込む。
マスクから、こもった声が聞こえた。
「耳を塞いでください」
ごめんなさい。という言葉を付け加えて。
それは、動きが遅いキーラとテープルに宛てたものだった。
防毒マスクを装備したゼンジは、急降下するレッドイーターに照準を合わせた。
遥か上空で旋回していた群れの中から、四体が向かって来る。しかしその距離が近付くにつれ、驚くほど大きくなり、眼前にいるレッドイーターはマンティコアとほぼ同じサイズであった。
キーラの視界の端にレッドイーターが見えた。直後こもった声が聞こえた。
「バレットタイム」
スローモーションとなった景色の中、すかさず二発発砲した。
一体目の胸に、二発の弾丸がめり込むのを確認して、他のレッドイーターの眉間に一発ずつ発砲した。
スローモーションが解けると、レッドイーターは大きく頭を振り、きりもみ回転を始め地面に激突した。
(他の鳥は気付いてないみたいだな。それにしても防毒マスクは視界が悪いな。外す訳にもいかないし)
ゼンジは振り向きテープルに謝罪した。
「突然攻撃してすみません。ずっと対処法を考えていたのですが、眠くて、やはりこれしか思いつきませんでした。話すと反対されると思い、ポーラにだけ話しました。騙すような事をして本当にすみません。自分は眠いんです!」
その時テープルとキーラは、小銃の音の大きさに驚き、その場でジャンプした。
『遅っ!今っ!?ププッ』
「おいメロン!」
テープルは顔を引き攣らせポーラに向けて話した。
「今のは、ぬいぐるみが喋ったって事は……ソウジュウシのポーラ殿の言葉では?」
メロンは慌てて両手を口に手を当てた。
「ご、ごめんなさい」
ポーラは顔を赤らめて頭を下げ、ゼンジはメロンを般若の如く睨みつけた。
メロンは脱力して遠くを見つめ、そしてぬいぐるみのように動かなくなった。
バレットタイムは使用していないが、気まずい雰囲気が永遠のように感じた。
「ウォ~ン!やっぱりスゲェよ!助かった!」
(ナイス!ノック!助かった!)
ノックの一言で動き出した時を、ゼンジは必死に手繰り寄せた。
「そ、そんな事ないよ!と、取り敢えず解毒薬を二人に渡してくれよ」
「ウォ~ンそうだな!リッキー!解毒薬を二つ持って来てくれ!!」
幌馬車の中で、待機していた弟のリッキーが、解毒薬を持ってきた。
そしてテープルとキーラに渡すと、二人はゆっくりとした動きでそれを飲み干した。
「ありがとうございます。テープルさん。毒が消えました」
キーラにはテープルしか見えていないようだ。
「当たり前の事をしたまででです」
テープルもまた同じだった。
二人は手を取り合い見つめ合っていた。
ここでもやはりバレットタイムは使っていない。
「いつまでそんな事やってるんだ?安全な場所に移動するぞ!」
毒が消えても、動きの遅い二人に豪を煮やしたゴードンが、二人の間をわざわざ通って村へ入って行った。
「そ、それじゃあ私の家に来て下さい!直ぐそこの道具屋です」
「そうしましょう!皆さん、彼女の店は宿屋も兼務しています。そこで作戦を立て直しましょう」
門の近くに建っている大きな建物を指差した。
店の看板には、宿屋と道具屋を兼ね備えたマークが刻まれている。
「まさかテープルさんは、彼女の為に解毒薬を仕入れたんじゃないか?それを彼女は売り捌こうとしてるとか?」
「有り得ますね……」
一行はキーラの店『白い雄鶏亭』に向かった。
(女神様、こちら自衛官、
恋は盲目と言いますが、実際に見たのは初めてです。毒より恐ろしいですね。どうぞ)
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