Dead or Alive

ジャム

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ミチルの喘ぎ声が聞こえた。

ここはただの料亭で、部屋が仕切られているとは言え、たかが、襖だ。
思わず、膝を立てると、オレの肩をキリサカが手で抑えた。
「・・・いけません」
低く掠れた囁くような声だったが、キリサカの指先は、肌に食い込む程強くオレの肩を掴んだ。
オレ達の前には幹部の一人、西野の組の者がオレ達と視線を合わせないように、同じように鎮座している。

ただの食事だと聞いていた。
それを・・、あのクソジジイめ・・!!
気軽にハメられるような相手と勘違いしやがって・・!!

脳は沸騰寸前だ。
そこへ、再びミチルの掠れた短い悲鳴が聞こえた。
苛立つオレ達とは違い、誰も素知らぬ顔で黙っている。
さすがに、場慣れした顔だ。
何も聞こえないフリも、板についたもんだ。

苛々と焦りながら、時間だけが気になる。

何度見ても、時計の針は動かない。
少しでも気持ちを落ち着けるため、大きく息を吸って、吐いてみる。
が、頭に昇った血はなかなか下がらない。
さすがに焦れて、トイレにでも行こうかと思った時。
不躾に襖が開かれ、西野が姿を現せた。
その後ろには、ほんのりと顔を紅潮させた、情事の跡を色濃く残した路流の姿。
「補佐」
キリサカがすぐに立ち上がると礼をして西野を送り出し、すぐ路流の上着をその肩へ掛けた。
「じゃあな、路流。またいつでも、困った事があれば呼びなさい」
軽く頷きながら、分厚い手で西野は路流の手を握った。

その手を見て、嫌悪する。
そんな汚い手で、路流に触ったのか・・?

「はい。また、お世話になります。組長も、どうぞお体に気をつけて」
路流が柔らかく微笑み、深々と礼をすると、満足そうに西野は口端を上げ、ここを後にした。
西野とその連れが去った後、路流がオレの肩に凭れた。
「疲れた・・」
路流はアレ以来、オレには建前の顔を崩すようになった。
それだけでも、オレがこの世界に入った甲斐はあるだろう。
「中で出されたのか?」
「まさか。こんな所で。口でしてやったら、指を突っ込まれただけだ。あの歳でもアレなんだから、羨ましい身体だ」
路流が苦笑する。
オレは路流の肩を腕に抱き寄せた。
「行きましょう」
「ああ」



オレ達は兄弟だ。
路流はオレと弟を守るために、7年前、ヤクザの情夫(イロ)になった。
だがそれはヤクザお得意の輪姦の後だ。
オレは兄貴を犯した奴らを殺すためにここにいる。
それが例え、組の幹部連中だとしても、だ。
必ず、殺してやる。
そう誓って、オレは路流の傍にいる。
なのに、だ。
路流は。
「こんな事はしょっちゅうだ。何発ヤッたかなんて数えちゃいない」
と、きた。
「汚れた体だ。別にもう拘りも無い。なんなら相手をしてやるぞ」
皮肉たっぷりにその口元を引き上げて笑うのだ。
その姿を見たキリサカの一言目が。
「イカレてますね」
だ。
「ま、こんな生活を何年も強いられてきたんじゃ、精神面が崩壊状態なのは当たり前と言えば当たり前ですかね」
それから奴はこうも言った。
「本気なら、一発ヤラせて貰えばいいじゃないですか。そうすれば、他のジジイにヤラれてる時、少しは苛々が減りますよ」
のうのうと言ってのけた奴の顔に向かって、オレは右腕を振り上げた。






「本当・・・手加減無いんですから・・・」
車から降りたキリサカから軽い舌打ちが聞こえた。
ホスト張りの男前の顔をしたキリサカの目の下には、赤黒いアザ。
それを濡らしたハンカチで押さえながら、キリサカがオレの横を歩く。
「お前の話なんか聞きたくねえんだよ」
眼の端で睨みつけると、キリサカは一本のビデオをオレに差し出した。
胸に突きつけられるソレを見て、キリサカへ視線を戻す。
「なんだ?」
「見れば、わかります」
ビデオの見出しは剥がされたシールの跡だけ。

こんなテープの中身なんて知れてる。
そんな気分じゃねえと突き返そうとした。
その手をキリサカが握った。
「見て下さい」
それから、深くオレに頭を下げると、キリサカは一人、早足に歩いて行った。




オレが自分で借りているマンションへ戻り、早速ビデオを再生してみた。

内容は、レイプものだった。
実録。
カメラ固定。
悲鳴と流血から始まって。
代わる代わるの輪姦。
クスリ。
フェラ。
顔シャ。
身体を縛り付けられて、言われるままに喘ぐ少年。

そこには、少年だった頃の路流の姿が映っていた。

まだ身体つきも、か細くその背を撓らせて、精液まみれで喘ぐミチルの姿が、顔が。
逃げ出そうとするその身体を何度もカメラの前へ引き摺り出されて、細い腰を揺さぶられる。
何度か顔を張られて、口が切れていたせいで口の端からは鮮血が滴っていた。


それは、およそ6時間に及ぶレイプビデオだった。

気が、狂いそうになる。

ビデオが終り、もう何も映っていない画面を、オレは一晩中見つめ続けていた。
気がつけば、いつの間にか部屋の中には、キリサカが居た。
「シロウさん・・・」
キリサカの顔がオレの方へ近づいてきて、オレの唇をキリサカのものが覆った。
「何の、・・つもりだ」
「・・・わかりませんか・・?」
キリサカの顔が歪んだ。
「もう、見てられねえんだよっアンタ見たんだろ!?もう手遅れなんだよっあの人を、救おうなんて、もう遅すぎるんだよっアンタがこれ以上傷ついたって、あの人は、もう戻れねえ!!時間は戻らねえんだよ!!」
キリサカが、オレの胸に突っ伏して、泣き叫ぶ。
「手遅れなんかじゃねえ。清算させる。コレでな」
キリサカにオレは、銃を握って見せた。
「・・・本気か・・?まさか」
「本気さ。あのビデオの連中も幹部も全員殺して、終わりにしてやる」
「・・アンタはバカだ・・」
キリサカが再びオレの唇を塞いだ。
「よせ・・!」
「・・シロウッ・・・シロウさんっ聞いてくれ!!関東は・・・大混乱になる・・。品川組の面子が消えたら、誰がクソ共を抑えられる!?アンタがやろうとしてる事は・・・!・・戦争になる・・。街中がおかしくなる。それでも・・・アンタは。アンタは・・・ミチルがいいっていうか・・?」
乱れた髪。
荒い息。
眼の下にビッチリと隈を書いたキリサカがオレの襟を締めた。
「・・・やるさ。ミチルのために、いや、オレの、ために」
噛むように言うと、キリサカの瞳から光が失われていく。
ゆっくりと身体を起こしたキリサカは、オレの顔を見つめた。
地獄を見たような顔だった。
オレも、同じ顔をしているんだろうか?
キリサカの顔を見て、不思議と頭が冷えてくる。
オレは握り締めていた銃を、床の上に離した。
それからキリサカに向き直ろうとした瞬間。
キリサカが、オレの上へ覆い被さるように、床の上に置いた銃に飛びついた。
「キ、リサカ・・・!」
オレの上へ馬乗りになり、オレの額へ銃口をピタッと据える。
銃口が正しい円を描いている。その奥を闇のように黒く塗りつぶして。
「・・・一人じゃ・・・死なせませんよ・・」
銃を構えたまま、キリサカの手が服の上で動いた。
「キリサカッ」
「・・・死ぬ、かも、知れねえんだ・・いいでしょ・・・アンタを無くす前に・・この位、オレに残してくれたって・・・っ」
スラックスの前を、キリサカの手が往復する。
「ヤメロ・・撃った事もねえんだろう?」
「・・・ありますよ・・一度だけね・・。それで、まともな世界に居れなくなったんです。・・知りませんでしたか?」
可笑しそうに笑うキリサカの腕が、震える。
その震えを抑えようと、更にキリサカの手に力が入る。
キリサカの拳が、白く肌を引き攣らせながら銃を握り締めた。
オレの顔を見つめ、銃を構えた逆の手でオレの体を弄った。
ぎこちない動きで、ファスナーを下ろされ、そこから、オレのモノを掴み出した。
「動くな・・・動くなよ・・?」
掠れた声が、引き攣れたように少しトーンを上げる。
キリサカは、オレを上目遣いに見ながら頭を下げ、オレのモノに舌を這わせた。
まだ力の無いソレにむしゃぶりつき、キリサカが口から唾液を溢れさせる。
根元まですっぽり咥えると、キュッと飲み込む仕草で吸い付いてくる。
次第に硬くなるオレのモノが、キリサカの喉の奥へと誘われた。

キリサカは、もうオレを見ていなかった。
銃口も明後日を向いている。
腹を蹴り上げれば、キリサカは離れるだろう。
少しだけ動かした足に、キリサカが慌てて顔を上げる。
ついでに銃口も、オレに戻る。
キリサカは息を荒くしながら、自分の口元を掌で乱暴に拭った。
その顔が、近づいてくる。
「動くんじゃ・・ねえ」
額に。
銃口が当てられた。
そのまま。
キリサカの舌が、オレの口の中で暴れる。
オレの口の中を、全てを知ろうとするように暴れて、キスなんて高尚なものとは程遠い。
冷たい銃口を額にゴリゴリと押し付けられ、体の自由を奪われて、唇も舌も噛み千切る勢いで咬まれた。
口の中で血の味がする。
キツク舌が吸われて、舌の根がビリビリと痛んだ。

一旦、唇が外れると。
キリサカが、オレを見つめてくる。
その眼を、オレは真っ直ぐに見返してやった。
濡れた唇が、ジンジンと熱かった。
「・・惚れてんだよ・・。惚れてんだ、アンタに」
唇がまた塞がれて、唇の内側に痛みが走る。

「抱いて、くれよ・・」

キリサカが狂ったようにオレの身体中に手を這わせた。
銃を握ったままの手が、オレの肌を掻いた。
ワイシャツを捲り上げられて、そこへ顔を埋めて、キリサカの舌と唇が無茶苦茶にオレを舐め回した。
それから半勃ちのオレの性器をギュウギュウ握ると、その手で勢い良く扱き上げた。
「・・ッキリサカッ・・!!」
胸を這っていた唇がゆっくりとそこへ降りて行って、今度は真っ赤に勃起したソレを、ねっとりと粘つく唾液で犯してくる。
音が出る程、吸われて、腹に付くほどオレのチンポが硬くなると、キリサカが顔を上げた。
「オレが・・・イカせてあげますよ」
それから、上も下もスパッと脱ぎ捨てて、オレの足の間へキリサカが立つ。
銃口は用心深く、オレに狙いをつけ、キリサカはオレの上に跨った。
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