センパイ2

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52、雷雨と発情

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52、雷雨と発情

 あの大雨のあった後の週末。
上稜高校では、他校を招待しての練習試合。
試合の準備のため、朝の7時に部員は集合し、暑さ対策のテント張りに、ライン引き。
着替えを済ませ、タオルや水筒などの荷物を抱えた部員が、続々と早朝のグラウンドに集まって来ていた。
持って来た荷物をベンチの上に放ると、各自、アップを始めていく。
「あーねみ~・・」
そんな中、大欠伸をしながらオレの隣では、地べたに座り込んだナギが靴下を履いている。
「ダレてんな~。寝てねえのか?」
ナギの横にオレも座り、持って来たスパイクの靴底同士を打って、こびりついた土を落としてから、それに履き替える。
「寝た・・でも、眠い」
そう言って、半分あぐらを掻いた格好で、目を擦る仕草がちっちゃいガキみたいに可愛くて、思わずナギにキスしたくなる。
が、だからってここで安易に顔を寄せれば、たちまちナギに右ストレートをぶち込まれることになるに決まってるから、オレはナギを怒らせないように我慢した。
怒ったナギも可愛いと言えば、可愛いが、怒らせると後が長引くから厄介だ。

こいつ、結構、根に持つタイプだからな・・。

そして、意外と慎重な性格ながら、少々抜けているのが玉にキズ。
少し長めの前髪の下、いつもクールな表情でいる事が多いが、その分、笑った顔とのギャップが大きいから堪らなくなる。
もちろん、そんなナギが普通に笑った顔も好きだが、もっと好きなのは、ナギが『アノ』時に、この冷たい顔をトロけさせ、目には一杯の涙を浮かべて、自分の下でも上でも、甘く激しく喘ぐ姿だ。
オレの手で、キスで、ナギが啼いて喘いで、狂う。
そんな姿にさせるのも、それを見れるのも、自分だけだと思うと、それだけで背中がザワザワとうるさくなり、オレの中の悪魔がイタズラに囁き出す。
『少しくらいならいいだろ』
『ナギだってエッチな事いっぱい好きだろ』
『人に見られたって別に気にしなきゃいい』
『オレは別に気にしない』
フと上げた視線をナギに向けると、ナギが「え」、と言う顔でオレを見た。
それから、口を真一文字に引き攣らせて、オレの肩を両手で押し返してくる。
「・・まだ何もしてねえだろ」
「イヤ、その顔、ヤバい。ヤバ過ぎる。ワタヌキセンパイ・・勘弁して下さい」
本気で、眉間に皺を寄せ、渋い顔をしてオレを見上げるナギが、小刻みに顔を横に振っている。

バカだなコイツ。
そういう顔とかも、オレにとったら全然可愛いって事、全然わかってねえ。
好き過ぎる。
オレ、ナギが、大好きだ。
コイツが居たら、きっと、オレは何でも出来るかも知れない。
お前のためだったら、オレ、何でも頑張れる。
だからな。
少しでいいから。
お前からも、オレが好きだって合図を送って欲しい。
っていうか、キスさせろ。

「イヤ、ムリ。ムリっす」
オレの思考を読んでか読んでないのか、とにかくの否定の台詞に、オレのこめかみがヒクリと引き攣った。
「ああ?オレが何か言ったか?」
「言ってないけど・・スル気、満々だろ・・っ」
「どこがだよ。見ろよ。オレは手も上げてねえだろが」
そう、オレはこの通り、足を投げ出し、両手を後ろに突いて自分の体重を支えて座っている状態だ。
そう睨みを効かせると、ナギが赤い顔で悔しそうに呟いた。
「そんな、目して・・っそんな、めっちゃ甘えたそうな目して・・オレ見るなよっ」
どうすりゃいいんだよっとナギが舌打ちした。
驚いたのはオレの方だ。
ナギの顔が可愛過ぎると思って見てたら、ナギにとったら、オレの顔が甘えたそうに見えて困っていたって事。
思わず、噴き出してしまう。
「あー・・やべ。そんな顔してんだオレ」
「そ、だよ・・。マジ、やめて下さいよ・・。オレ、どうしたらいいか・・わかんなくなるし」
そう言って俯くナギを抱き締めたくなる。
つい。思わずナギの肩に腕を回して、ナギの体を引き寄せると、ナギがハッとした顔をオレに向けた。
「なあ。マジでこのクソ暑いのにヤメてくんない?」
その台詞に、後ろを振り返ると、いつからそこに居たのか、オレとナギの後ろには体育座りしたアキタの姿があった。
そして、アキタがオレとナギの間に割り込んで来ると、オレとナギの肩を抱いて「なあ、キャプテン。あんたもうとっくに準備終ってんのに、何でアップしてねえの?」と、目を暗くギラつかせて口の端を吊り上げた。

ヤバい、完全にダークサイドの目だ・・!

「ナギが靴下履くの待ってただけだろ」
と、オレが言い訳すると、一瞬真顔になったアキタが、静かに暗く笑う。
「靴下・・?」
そう言いながら、今度はナギの方へ、くるりと顔を向ける。
「モリヤ、なんで、お前はここで靴下なんか履いてんだ?」
「あ、あの・・あんまし眠くて、ボーっと着替えてたら、ロッカーで履き替えるの忘れて・・」
言い切らないうちに、アキタの平手がナギの後頭部にバシッとヒットする。
「スミマセンッした・・!」
慌てて、ナギが青い顔で頭を下げる。
「おう。ロッカーで着替え済ましてくんのが当たり前だよなあ。つーかな・・」
また、くるりとアキタの顔がオレの方を向いた。
その動きが、お化け屋敷の人形のように邪悪な動きで、オレは背中に寒気を覚える。
しかも。
オレを見るアキタの目は、更に凶悪化しつつあり、瞳孔が完全に開いている。
既に闇の世界に首まで浸かっているアキタを、極力刺激しないように、オレはアキタから視線を逸らした。
アキタと同棲していたイズミサワ先輩が大学の寮に入ってから、日々の潤いが薄くなったせいだろう、アキタは、オレとナギに度々、過剰反応を起こすようになっていた。
「キャプテンのくせに、何が『靴下待ち』だ・・テメエは小学校の登校班の班長か?見ろよ、もう殆ど全員集合してんだろうが。テメエやる気あんのか?今日、勝つ気あんのか?それでも綿貫龍斗か?」
こんな、やる気のある事言うアキタなんて、アキタじゃねえ・・と、思いつつも、オレは「悪かったな。行きゃあいいんだろ。行きゃあ・・」と立ち上がり掛けて、一瞬固まる。
腰を上げ掛けたオレの視界に入ったアキタの格好は、白のYシャツに制服のズボン姿。
思わず目を見開き、唖然としていると、ナギが「ア、アキタさん・・」と、引き攣り笑いをしている。
「あ、オレ今来たとこでさ。もうここで着替えちゃうわ!」
と、さっきまでの凶悪な顔をニコニコと綻ばせ、Yシャツをパパッと脱いで上半身裸になったアキタの頭を「オメエだよ!」と、オレはグーで殴ってやった。
「イッテ!・・んな本気で殴るなっつーの・・ったく、これだからDTは」
「誰が童貞だ」
「え。違うの?あれ~?いつからヤってんだっけ?モリヤ」
アキタに話を振られたナギは「お先です!!」と、一も二も無くダッシュで逃げ去った。
「あー・・・すっげ早・・。いいなあ若いって、まだ7時半なのにあんなダッシュかませるとか、マジ若過ぎ・・」
言いながら、校庭の端でボクサーパンツ一枚の姿になったアキタに、「なあ、イズミサワ先輩と会ってねえのか?」と聞くと、アキタが爽やかな笑顔で「もう3週間、勃起してねえけど?」と返してくる。
「朝立ちくらいしろ・・」
「朝立ちは勃起じゃねえ」
と、真顔。
「たまには会いに行けよ」
「そりゃ~・・会いたくてたまんねえけど~」
と笑いながら、アキタがTシャツを頭に被る。
その続きは聞かなくてもわかる。
名門校の部活がそうそう休みになんかならない。
実際、アキタがサッカーで進学するには、今が正念場だった。
何も取り零せない。
可能性があるなら、今は何にだって縋り付きたいだろう。
同じ道を歩くと決めたなら、今出来る事全部、一つ一つクリアしていくしかない。
アキタがイズミサワ先輩と同じ未来を見るため、頑張れば頑張る程、今、この距離の大きさを実感するんだろう。
「はい。お待たせ~。さ、行こっか。キャプテン様」
着替えが終ったアキタがTシャツの肩を両方捲り上げ、ニヘラと笑って、肩を回す。
グラウンドへ二人で走り出し「お前。プラス5周な」と、アキタにペナルティを言い渡すと、アキタが悲鳴を上げる。
「ええええええっ・・鬼っオニっ激オニッチクショー!独裁者め・・!」
「もう5周増やしてやろっか」
「オマエ・・!本気で、オレ泣きながら走るぞ!」
「ソレ、先輩が見たらすげえ喜びそう」
「うわ・・喜ぶな・・。基本、あの人イジワりいからな・・」
空が高くて、青い。
空に浮かぶ、薄らと筆で塗ったような薄雲も、あっという間に消し飛ばしそうな太陽の強い光りの中、そんな話をしながら走り、二人で笑った。







午前中の試合が終り、昼休みを取って、また午後の試合。
1試合終った後、だんだんと空の天気が悪くなってきた。
さっきまで白かった雲が、どす黒くなり、重たく伸し掛かってくるように空に広がっている。
「雷くるかもな・・」
誰かがポツリと言うと、雨めんどくせー、と愚痴が上がる。
確かに、びしょ濡れの中の試合なんて面倒くせえ。
体は重くなるし足下も滑る。
球は走らないし、視界も悪くなる。
スライディングなんかした日にゃ、泥塗れのユニに母親がキレ捲るって訳だ。
そこで、フとオレは大事な事を思い出した。
「ナギ」
2年の仲間と一緒に座り込んでいたナギに声を掛け、手招きして呼び、オレはフェンスの裏へと歩いた。
「なに?センパイ」
後を追って来たナギの耳元に顔を寄せ、オレは「お前、大丈夫か?」と囁いた。
「何が?」
と、口を少し開けたまま少し首を傾げてオレを見上げるナギの姿に、オレは堪らず、ナギの頭を自分の胸に抱き締めてしまう。
「ちょ!!」
ドンッと、思いっきりオレを突き飛ばしたナギが、顔を真っ赤にして、くしゃくしゃになった髪の毛を手で撫でつけて直している。
「あのな・・っいきなし、やめろよ!もう、マジで、わかんねえっ・・!ガッコはナシだろ!部活中も!!」
ナギがしどろもどろで抗議するが、まあ、だいたいわかる。
学校とか人目があるとこでは、いちゃつくのナシって言いたい訳だな。
そんな事、オレだってわかってる。
わかってても、体が反応するって事がある。
物落としそうになって、パッと手を出すのと一緒だ。
『思わずやっちまった』ってヤツだから、不可抗力としか言いようが無い。
「しょうがねえだろ。今、そういうタイミングだったし」
「いつだよ!?」
「あー、悪かった。悪かった。それよりな・・。お前、雨、大丈夫か?」
「あめ・・?」
意味がわからない、と言う顔でナギがオレを見る。
「傘なら持ってない」
「ちがう。お前、この間の夕立ん時に、一人でムラムラしてただろうが」
そう言った瞬間に、ナギの顔が真っ赤になって、開いた唇を微かに震わせている。
「な、な、何、変なこと・・言うな・・!!」
動揺が激し過ぎる。
「お前、あぶねえな・・。試合中はさすがにオレだって抱けねえぞ」
胸の前で腕組みして、ナギを見下ろしていると、ナギが短パンの前を両手で握ってワナワナと震えている。
「な、抱くとか・・っ言うな!誰が・・っ誰が、んなこと・・っマジ、信じらんねえ・・っ」
オレの前で、こんな顔真っ赤にして震えてて、こんな姿見せられて、『誘われてる』ってオレが思ったって、絶対おかしくない。
「来いよ」
「へ!?」
ナギの腕を掴んで、オレは校舎の方へとフェンス沿いの並木を歩き出した。
サッカーグラウンドを、対岸の陸上グラウンドと分けるためにフェンス沿いに並木が植えてあり、背の高い雑草も一緒に生い茂っているから、たぶんオレ達が手を繋いでるのは、皆には見えない筈だ。
「センパイっ」
それでも、抵抗して、ナギが繋いでる手を無理に引き抜こうとする。
それをオレは振り返って、それよりも強い力で、ナギの腕を掴んで引き寄せた。
「雨なんかで煽られんなよ」
「煽られてなんか・・!」
無いと、言い掛けたナギの顔が、一瞬戸惑った。
オレと目を合わせて、言い掛けた口のまま固まっている。
「せ、センパイが・・、センパイが一緒にいる方が・・ヤバいってば」
そう俯き加減に、力無く呟くナギ。
「今のがヤバい」そう呟くナギに、オレが何もしないでいられる訳が無い。
下腹が熱くなってくるのを感じて、オレは慌てて前を向いた。

これ、オレの方こそ、ヤバいだろ・・。

理性の限界を感じ、オレは急いでナギを校舎の中に連れ込んだ。
「ま、待ってって・・」
昇降口で靴を脱ぎ、ナギの手を引こうとして、ナギがスパイクがなかなか脱げずにいるのを、オレは後ろからナギの足を掴み、靴の中からナギの足を引っこ抜いてやる。
右足の次は左足、両方脱がしてやると、靴箱にしがみついて立ってるナギがオレの顔を振り返ってた。
その顔がすごい恥ずかしそうで、可愛くて、今すぐ襲いたくなる。
「ありがと・・」
小さく礼を言うナギの体に、オレは思わず靴箱に押し付けるように後ろから抱きついた。
「ワッダメだってば・・っここじゃ・・っセンパイ」
「我慢しろって方が無理だろ」
言いながら、手がナギの体の上を縦横無尽に彷徨う。
「センパイっ」
小さな悲鳴を上げて、ナギが肘でオレの脇腹を思い切り打った。
本気の攻撃に、思わずオレは咳き込み、1m強後退。
オレがゼイゼイと呼吸を乱し脇腹を押えていると、ナギがオレに手を伸ばしてくる。
「行こ、センパイ」
その小憎らしいナギの手を握り、オレはナギの横に並んで歩き出した。
「ナギ・・言っとくけど・・ヤらないからな」
オレの宣言に、ナギが驚いた顔で見上げてくる。
「まだ・・出番あんだろ?だから・・」
カーテンの締まってる空き教室のドアを開け、ナギを中に引き込む。
ドアを閉めて、壁際にナギを立たせてると、オレはその前に跪いた。
「センパイ・・」
オレは無言でナギの短パンを下着ごと膝まで引き下げ、目の前にある欲望を手に取ると、それにしゃぶりついた。
「ん・・っ」
柔らかかったナギの中心が口の中で熱を持ち、膨らみ出すと、耐えるように拳を握っていたナギの手がオレの頭に触れ、髪を強く弱く撫で、時々、髪を掴んだまま強ばった。
「センパイ・・っあ・・や・・」
内腿を震わせ、ナギが前屈みに膝を折る。
腹につきそうなくらい硬くなったナギがオレの口の中でビクビクと跳ね、その蜜口から、まだ粘性の薄い精液を溢れさせていた。
その割れ目を舌の先で押し潰すように舐めると、ナギが一際高い悲鳴を上げ、ナギ自身それに驚き、慌てて自分の手で口を押えた。
「や・・だ・・っセンパイ・・っイッチャウ・・」
「早すぎだろ・・もっと、しゃぶらせろ・・」
「ムリッ・・ッふ・・あ」
硬く窄めた唇で、ナギの男茎を嬲りしゃぶる。
根元まで締め付けて、動かし、強く吸う。
だんだん、本気でナギの精液が飲みたくなってきて、オレは喉の奥までナギを呑み込んだ。
「うあ・・あっ・・」
ナギがオレの本気のフェラに戸惑い、腰をガクガク揺らしながらも必死に射精感に耐えていた。
「やだ・・放せ・・っやだ・・っ」
ナギの声が嗚咽に変わり、見上げたナギの頬に、涙が零れ落ちていく。
「お願い・・っ放して・・っセンパイ・・ッッ!」
そう言われて放す訳が無い。
オレはここぞとばかりに、喉の奥へとナギを咥え込んだ。
「アアッ・・・!!」
ナギが上半身を撓垂らせて、オレを抱き締め、オレの喉を甘く苦いもので濡らした。
小刻みに痙攣しながら、オレの口の中で果てたナギは、暫くオレの舌にされるがままでいたが、ゆっくりとナギが床に座り込んだせいで、まだ芯を持ったナギの雄がオレの口の中から抜け落ちていった。
浅い呼吸を繰り返し、目元を押えるナギの手を掴んで、顔を上げさせる。
「良かったか?」
そう聞くと、ナギは心底嫌な顔をして、今度はオレの膝の上へと乗り上がってきた。
「おい」
「勝手ばっか、しやがって・・っ」
そう言うと、ナギがオレの唇に舌を伸ばした。
ねっとりと唇を舐め上げられ、その感触に目を閉じると、あっさりとナギの舌がオレの口の中へ這入って来る。
濡れた唇同士を合わせ、何度も何度も舌を絡ませ合う。
口の中で熱い粘膜を擦り合わせ、敏感に感じる口蓋を舌先でくすぐる。
「・・シたい」
溢れる吐息混じりにナギの声が耳に響いた。
頭の中を掻き回されたようなショックに、目眩を感じながらも、オレは「ダメだ」と返し、更にナギの唇を貪る。
だが、オレの返事に「ムリ」と短く返したナギが、オレの中心に手を伸ばしてくる。
チリッと灼けるような感触。
ナギの指先が、オレのカリをそっと撫でて、張り詰めた肉の感触を味わっている。
唇が離れた一瞬、オレが声に出来たのは「ナギ」の一言だけだった。
ナギの手が強くオレを握り、ある角度へ固定された次の瞬間に、熱い緋膜の中にオレの勃起が吸い込まれた。
ズルリと、狭い肉襞を掻き分けて、ナギの中へとオレの中心が呑み込まれていく。
「オイッ・・どこに、出せって・・?」
舌打ちしながら、まだ慣れないナギを少しずつ穿つ。
少しずつ慣れてきたナギの中で、深く浅く出し入れすると、ナギもオレの上で腰を振り始める。
「あ、あ、あ、あ、・・っタツト・・ッ・・タツ、ト・・ッ」
善がり、必死に抱きついてくるナギが愛苦しくて、自然ピッチが上がる。
「ンッンン・・・ッ」
必死に声を殺そうと、唇を噛み締めているナギの口にキスして、強ばりを解く。
弛んだ唇の中、自由になった舌を絡ませ合い、下腹と同じようにお互いの舌を唇の中で抜き差しした。
荒い呼吸と、クチュクチュと粘着質な音が耳に纏わり付く。
「奥に・・一番、奥に・・出し・・、アッ・・!」
「出せる訳ねえだろ・・っ」
ナギの体をオレの上から抱き起こして膝立ちにさせ、完全にナギの中から抜き出した勃起が、大きく躍動する。
ナギの尻穴の真下で爆ぜたオレの欲棒から、濃い雄の匂いが充満してくる。
「あ・・あ・・ヤダ・・出るッ・・あ、あ・・っ」
オレの目の前で、ナギが自分の勃起を握りしめ、その手の中で。
限界ギリギリ、尻の狭間でオレの射精を受け止めたナギが、そのショックでか2度目を達していた。
「ウわ・・わっ」
まさかの、自分の手の中でイッたナギが、自分自身、信じられないって顔で胸を喘がせ、手の中のモノに震えてる。
これ以上、煽られたら、ヤバい。
自分のTシャツを脱いで、それでナギの手を綺麗にしてやって、自分がナギの尻に浴びせた汚れも拭い取った。
それから。
ナギを背中から抱き締めて、首筋にキスをして、目一杯ナギの匂いを嗅ぐと、ナギが肩を竦めて体を縮こめる。

もっと、ずっと、こうしてたい。

その気持ちをなんとか断ち切って、オレはナギから手を放した。
「行くか・・」
「うん・・」
顔を上げないナギが、オレの後を付いて来る。
教室のドアを開けようとドアノブを掴んだら、ナギに背中から抱きつかれた。
「5秒」
ナギが呟いて、オレは振り返るのをやめた。
ナギが5つ数え終えるまで、大人しく待って。
それから。
ナギの体に向き直って、胸に思いっきり抱き締めて、唇を合わせた。
骨が軋みそうなくらい力を入れて、どれだけ、オレが我慢してるのか、ナギにわかるように激しくキスをする。
「ご、ごめ・・」
オレの気持ちがわかったのか、ナギが真っ赤な顔でオレの胸をゆっくりと押して、体を離した。
オレが我慢するなんて100回に1回くらいだ。
それだけ、無理してんのに、そういう時に限って、コイツは煽ってくる。
責めるつもりで無言で見下ろしてると、ナギがチラとオレを見上げ、泣きそうな顔で、また「ごめん・・」と謝った。
その頭をオレは黙って抱き寄せて、ナギの髪にキスを落とした。

同じ道だ。
同じ道を進むために、お互いが負担になんかなりたくない。
だから、オレ達は、ただ『好きだから』じゃいられない。
ただ相手を貪るために、いるわけじゃない。
そんなのは、ただの。


「なあ・・嫁になっちゃえば?そしたら、もう、体がどうとか気にしないで・・」
話の途中で、ナギの膝がオレの太腿の横に、ゴスッと入った。
「イッテ!!」
痛みに思わず足を抱え、真顔で冷たい視線を送ってくるナギの肩を掴む。
「足は蹴るな・・!」
「センパイが変な事言うからデス」
「だって、オレ・・、本気でナギ欲しいもん」
「もん、とか言わない。って、マジで戻らないとヤバ・・」
「ダヨな・・。誰かさんがサカったせいで、すっかり時間が・・」
「悪かったな!しょうがねえじゃんっオレだってマジでセンパイが・・欲し・・かったんだもん!」
「お前だって『もん』って言ってるぞ」
「うっさい!」
「あ、このヤロ・・キャプテンに向かって」
と、ナギの頭をぐしゃぐしゃにした瞬間。
パリパリパリと空に閃光が走り、そのワンテンポ後に、ドーーーンと雷の音が響いた。
「落ちた!?」
二人で窓際に走り、外を見ると真っ黒な雲の中で再び雷鳴が轟く。
「わ・・すげ土砂降り・・」
バチバチと叩きつけるような音を上げて降り注ぐ大粒の雨に、唖然として見上げるナギの腰にオレは腕を回した。
「こりゃ、無しだな。ナギ、もう一回ヤるか」
「ふざけんな。キャプテン居なかったら、ゴンゾーさん(監督)キレるだろ」
オレの手を叩き落とし、ナギが歩き出す。
その背中を、オレも追いかける。

ナギの背中を見つめ、自分が追う側にいる事に、気づいた。
自分の背中を追わせているつもりでいたのに、いつの間にか、自分がナギを追いかけている。

それで、ふと思いついた。
そうか。
だから、オレはサッカーなのか。
ナギが必死で追いかけてきてくれる。
その姿が好きで、可愛くて、だから、ずっと一緒に居られる気がして、オレはこの先も、サッカーを選ぶんだろう。
そう思って、どれだけ自分に自信が無いのかって事に気づいた。
サッカーしてなかったら、オレなんか見てくれなかっただろうな。

ナギがドアを開けて、オレを振り返って笑った。
「センパイ、置いてくよ」
その台詞にオレは噴き出して、「絶対、置いてくな」と、オレはナギの横に並んだ。


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