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第十七話
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「うーん、最近はなかなか戦う機会はありませんでしたけど、ナイフでの近接戦闘が少し。それから、エルフの特性として弓での遠距離攻撃はそれなりにできます。魔法はそこそこ程度です」
「なるほど……となると、商売用の品物だけじゃなく僕たちの装備も揃えておいたほうがよさそうだ」
現状、テオドールは魔剣バルムンクを持ってはいるものの、こちらは商売用である。
リザベルトはといえば、薬草採集などに使える小さなナイフを持ってはいるものの、いざ戦いに使えるような武器は持っていなかった。
「では、まずは武器屋さんですか?」
「いや、そこはあとでジャーノさんのお店に行こうか。大通り沿いにある大きな武器屋さんより、ジャーノさんの店のほうが品ぞろえがいいからね」
テオドールは、この街の店をひととおりチェックしており、品質に関してはジャーノの店がダントツであると判断している。
「確かに、あのお店はとても素敵な品物であふれていました!」
リザベルトはジャーノの店で呪いの武器を探していた際に、他の武器も見ていたがどれも高い品質だった。
「いいね! 僕も杖と剣が欲しいかなあ……」
テオドールは勇者の力を剣で活かし、賢者の魔法を杖で活かす方法を考えていた。
「ふふっ、杖と剣って、正反対の武器を選択するんですね」
リザベルトは不思議なチョイスに小首を傾げながるが、その表情は笑顔だった。
これまでのテオドールのことを考えると、自分にはわからないが、きっとこれが適したものなのだろうと感じていた。
「ちょっとやりたい戦闘スタイルがあるんだ。リザもやりたいこととかあったら教えてね。もちろん武器とか防具とかだけじゃなく、どこか行きたいとか、服とかも」
「は、はい!」
リザベルトの立場としては、テオドールの所有になっている。
にもかかわらず彼は彼女の考えを尊重してくれているため、驚きながらも大事にされていることを嬉しく思っていた。
「それじゃ、必要そうな雑貨から見ていこうか。あとリザのバッグも買わないと……そうだ! リザが住んでいる家もなんとかしないとだね。うちもあのままにしておけないし……やることいっぱいだ!」
この先、やっていくことが色々山積みになっているが、それら全てが未来に繋がっていると考えているテオドールには疲労感や悲壮感はなく、むしろ前向きに捉えている。
「テオさん……はい! 色々見て回りましょう!」
そんなポジティブなテオドールを見ていると、リザベルトも自然と笑顔になっていく。
二人はそこから色々な店を見て回った。
はたから見れば、カップルがデートをしながら買い物を楽しんでいる風景のようにも見える。
「こっちの食器なんかはデザインはいいように思うけど……」
「悪くないですけど、洗う時に少し洗いづらさがあるのでもう少しシンプルな形状のほうが主婦の方には好まれると思います」
「なるほど、家族で使うとなると統一性もほしいね……」
「ですです!」
しかし、実際の二人は、どれが商売になるか、仕入れたとしてよそで売りやすいか。そんなことを話し合っていた。
色々な店でそんな話し合いをして、時には店の人からの情報収集を行う。
そんなことをしていたら、日が傾いてきて薄暗くなっていた。
「もうこんな時間に……どうしましょう。ジャーノさんのお店に行ってみますか?」
ほとんどの店を周り終えたため、リザベルトが確認する。
「うーん、もう遅いからリザの家に行ってみよう。必要な荷物を運び出したり、賃貸だったら解約もやっていかないとだし」
武器を買うのも確かに予定に入ってはいたが、それ以上に生活基盤をちゃんとしておく必要があると考えたテオがそう提案する。
「あー、確かにそうですね。それではうちに行って片づけと夕食を。それからお屋敷に戻って借金取りさんを待ちましょうか」
すっかり家のことを忘れていたリザベルトだったが、テオドールに言われて最優先で片づけなければならない事項であることを思い出していた。
「やった! それじゃ、今夜はリザの手料理だね。楽しみだなあ!」
「あ、あんまり期待しすぎないで下さいね? 普通のものしか作れませんから……」
飛び回って喜ぶテオドールを見て、過剰な期待を抱いているのではと不安そうな顔でリザベルトは慌てて声をかけた。
「ははっ、リザが作ってくれるだけで十分嬉しいよ! 自分じゃ作らないからなあ……」
実家に帰って来てからも、テオドールは外で買い食いをした程度で自炊はしてこなかった。学院にいた時も寮で食事が出ていた。
テオドールの母親は早いうちに亡くなっていたため、誰かが自分のために作る手料理というものに憧れていた。
「なら、ちょっと頑張ってみます!」
「うん!」
そんな風に話しているうちに、二人は街を出ていた。
東門から出て、更に東へ進んだ場所に小さな森があり、リザベルトの家はそこにある。
「なんというか……すごい場所にあるんだね」
街からは離れており、人を避けるようにして森の中にポツンと一軒建っていた。
森の中の一本の木に寄り添うように小さく建てられたそれは木を綺麗に組み合わせた手製のログハウスのようだった。
「えっと、その、何と言いますか……」
初めて人をここに連れてきたため、テオドールの反応がいまいちなことに言い淀んでいるリザベルト。
だがテオドールはじっと家を見つめていた。
「……わかった! エルフは確か森とともに生きるって聞いたことがあるからそれだね!」
テオドールはこれが答えだと確信しており、笑顔で人差し指でビシッとリザベルトのことを指しながら回答する。
「そういう側面がないかといえば、ないこともないのですが……あの、お金がなかったので、ここに頑張って家を建ててみたんです。その頃には母もいたので一緒に……」
顔を隠すように髪の毛をいじるリザベルトはエルフ的な理由よりも、金銭面での理由が大きいことを恥ずかしく思っており、頬が赤くなっていた。
「ふえー、それはすごいなあ。ってことは、お母さんと一緒に、たった二人でこれを建てたの?」
「えっ? あ、はい! 母は木魔法が得意だったので、その力を使って、細かい部分は私も手伝って……」
テオドールが金のことよりも、家を建てた技術に感心していることにリザベルトは一瞬戸惑いながらも、そのことを嬉しく感じていた。
それから外観を見て回ってから、二人はリザベルトの家の中に入って行く。
借金:4000万
所持金:400万+約30万
「なるほど……となると、商売用の品物だけじゃなく僕たちの装備も揃えておいたほうがよさそうだ」
現状、テオドールは魔剣バルムンクを持ってはいるものの、こちらは商売用である。
リザベルトはといえば、薬草採集などに使える小さなナイフを持ってはいるものの、いざ戦いに使えるような武器は持っていなかった。
「では、まずは武器屋さんですか?」
「いや、そこはあとでジャーノさんのお店に行こうか。大通り沿いにある大きな武器屋さんより、ジャーノさんの店のほうが品ぞろえがいいからね」
テオドールは、この街の店をひととおりチェックしており、品質に関してはジャーノの店がダントツであると判断している。
「確かに、あのお店はとても素敵な品物であふれていました!」
リザベルトはジャーノの店で呪いの武器を探していた際に、他の武器も見ていたがどれも高い品質だった。
「いいね! 僕も杖と剣が欲しいかなあ……」
テオドールは勇者の力を剣で活かし、賢者の魔法を杖で活かす方法を考えていた。
「ふふっ、杖と剣って、正反対の武器を選択するんですね」
リザベルトは不思議なチョイスに小首を傾げながるが、その表情は笑顔だった。
これまでのテオドールのことを考えると、自分にはわからないが、きっとこれが適したものなのだろうと感じていた。
「ちょっとやりたい戦闘スタイルがあるんだ。リザもやりたいこととかあったら教えてね。もちろん武器とか防具とかだけじゃなく、どこか行きたいとか、服とかも」
「は、はい!」
リザベルトの立場としては、テオドールの所有になっている。
にもかかわらず彼は彼女の考えを尊重してくれているため、驚きながらも大事にされていることを嬉しく思っていた。
「それじゃ、必要そうな雑貨から見ていこうか。あとリザのバッグも買わないと……そうだ! リザが住んでいる家もなんとかしないとだね。うちもあのままにしておけないし……やることいっぱいだ!」
この先、やっていくことが色々山積みになっているが、それら全てが未来に繋がっていると考えているテオドールには疲労感や悲壮感はなく、むしろ前向きに捉えている。
「テオさん……はい! 色々見て回りましょう!」
そんなポジティブなテオドールを見ていると、リザベルトも自然と笑顔になっていく。
二人はそこから色々な店を見て回った。
はたから見れば、カップルがデートをしながら買い物を楽しんでいる風景のようにも見える。
「こっちの食器なんかはデザインはいいように思うけど……」
「悪くないですけど、洗う時に少し洗いづらさがあるのでもう少しシンプルな形状のほうが主婦の方には好まれると思います」
「なるほど、家族で使うとなると統一性もほしいね……」
「ですです!」
しかし、実際の二人は、どれが商売になるか、仕入れたとしてよそで売りやすいか。そんなことを話し合っていた。
色々な店でそんな話し合いをして、時には店の人からの情報収集を行う。
そんなことをしていたら、日が傾いてきて薄暗くなっていた。
「もうこんな時間に……どうしましょう。ジャーノさんのお店に行ってみますか?」
ほとんどの店を周り終えたため、リザベルトが確認する。
「うーん、もう遅いからリザの家に行ってみよう。必要な荷物を運び出したり、賃貸だったら解約もやっていかないとだし」
武器を買うのも確かに予定に入ってはいたが、それ以上に生活基盤をちゃんとしておく必要があると考えたテオがそう提案する。
「あー、確かにそうですね。それではうちに行って片づけと夕食を。それからお屋敷に戻って借金取りさんを待ちましょうか」
すっかり家のことを忘れていたリザベルトだったが、テオドールに言われて最優先で片づけなければならない事項であることを思い出していた。
「やった! それじゃ、今夜はリザの手料理だね。楽しみだなあ!」
「あ、あんまり期待しすぎないで下さいね? 普通のものしか作れませんから……」
飛び回って喜ぶテオドールを見て、過剰な期待を抱いているのではと不安そうな顔でリザベルトは慌てて声をかけた。
「ははっ、リザが作ってくれるだけで十分嬉しいよ! 自分じゃ作らないからなあ……」
実家に帰って来てからも、テオドールは外で買い食いをした程度で自炊はしてこなかった。学院にいた時も寮で食事が出ていた。
テオドールの母親は早いうちに亡くなっていたため、誰かが自分のために作る手料理というものに憧れていた。
「なら、ちょっと頑張ってみます!」
「うん!」
そんな風に話しているうちに、二人は街を出ていた。
東門から出て、更に東へ進んだ場所に小さな森があり、リザベルトの家はそこにある。
「なんというか……すごい場所にあるんだね」
街からは離れており、人を避けるようにして森の中にポツンと一軒建っていた。
森の中の一本の木に寄り添うように小さく建てられたそれは木を綺麗に組み合わせた手製のログハウスのようだった。
「えっと、その、何と言いますか……」
初めて人をここに連れてきたため、テオドールの反応がいまいちなことに言い淀んでいるリザベルト。
だがテオドールはじっと家を見つめていた。
「……わかった! エルフは確か森とともに生きるって聞いたことがあるからそれだね!」
テオドールはこれが答えだと確信しており、笑顔で人差し指でビシッとリザベルトのことを指しながら回答する。
「そういう側面がないかといえば、ないこともないのですが……あの、お金がなかったので、ここに頑張って家を建ててみたんです。その頃には母もいたので一緒に……」
顔を隠すように髪の毛をいじるリザベルトはエルフ的な理由よりも、金銭面での理由が大きいことを恥ずかしく思っており、頬が赤くなっていた。
「ふえー、それはすごいなあ。ってことは、お母さんと一緒に、たった二人でこれを建てたの?」
「えっ? あ、はい! 母は木魔法が得意だったので、その力を使って、細かい部分は私も手伝って……」
テオドールが金のことよりも、家を建てた技術に感心していることにリザベルトは一瞬戸惑いながらも、そのことを嬉しく感じていた。
それから外観を見て回ってから、二人はリザベルトの家の中に入って行く。
借金:4000万
所持金:400万+約30万
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