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第十六話
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「あ、お話は簡単にお二人から聞いています。僕はテオドール=ホワイトといいます。一応商人見習い? 商人志望? まあ、そんな感じです。彼女はリザベルトといいます」
「えっと、よろしくお願いします」
テオドールとリザベルトも軽く自己紹介をするが、勢いのいいマルコに対して冷静な反応である。
「ふむ、ふむふむ、ふーむふむ、なるほどな。つまり、この剣をテオドール君が持ちこんで、それをエイレムが買うかどうか。そして、エイレムへの渡りをつけたのがジャーノといったところか。ジャーノがなぜ彼らを連れて来たのかがわからんな……」
「「……!?」」
顎のあたりに手を当てたマルコは舐めるように二人を見ながらそう指摘する。
それを聞いたテオドールとリザベルトは、みごとな的中率に驚いている。
「はあ、全くお前は昔からそういう状況判断が鋭いやつだな。彼らが戸惑っているだろ? 言ってることはあっているが、事情を推測するだけじゃなく、耳を傾けるということをいい加減覚えたらどうなんだ?」
ため息交じりのジャーノは昔から変わらないマルコに対して、忠告する。
「まあまあ、あっているならいいじゃないか。それよりこの剣はすごいものだな……詳細はわからないが、かなりの力を持っているのは確かだ……エイレム、買うのか?」
目利きもできるようで、マルコはバルムンクが価値あるものだと判断している。
エイレムが自身と同じくこういったものが好きなのを知っているため、ライバルになるのかどうか確かめるようにすっと目を細めて問いかけた。
「……うーん、あなたが出てきたとなると少し悩みますね。この剣はあなたもおわかりなように、相当な、それこそ伝説級の武器にあたります。それをコレクションにされてしまうのは勿体ないかと」
眼鏡の位置を直したエイレムは牽制するような言葉を選んで、マルコに返答する。
「なるほど、それは確かにそのとおりだ! だが、さっきも言ったように妻がな……さすがにコレクションの置き場がなくなってきたもので、その、自由に買うことができなくなったのだ……」
諦めきれないようにバルムンクをじっと見つめたままのマルコは恐妻家なのか、妻に注意されたことを思い出しながら肩をガックリと落としている。
「はっはっは、収集狂いのお前がなあ。焼きが回ったもんだ! にしても、マルコもダメとなると、それこそ大きな街でもないと厳しいんじゃないか?」
ひとしきり大笑いした後、腕を組んで難しい顔をしたジャーノはこの街で、これ以上武器を買うような権力者に心当たりがなかった。
「だったら、私が金を出して保管と用途はエイレムに任せるというのはどうだ?」
「いや、さすがに金だけ出させるわけにもいきません。しかも、これほどの武器ともなると用途にも困ります。この街にこの武器を使いこなせるような人物はいませんからね」
できる限り近くに置いておきたいというマルコの申し出に、首を振ったエイレム自身が反対意見を述べる。
その後も三人はあーでもない、こーでもないと話し合いを続けるが、結論が出ないためしびれを切らしたテオドールが立ち上がった。
「わかりました! この剣をこの街で売るのは難しいということですね……なので、これは売らずに持っていくことにします」
言うが早いか、テオドールは剣をバッグにしまい込む。一刻も早く金にしたいテオドールにとってずっと続く話し合いに意味はなかった。
「あ、あぁ……」
「お、おう……」
エイレムとマルコは剣があっという間にしまわれたことで、名残惜しさから変な声を出してしまった。
「うむ、まあそのほうがいいだろうな。だが、お前たちだったら有力者や実力者を紹介できるんじゃないか?」
ジャーノの言葉に、エイレムとマルコは確かにそうだと頷いていた。
「紹介しておいて、結局買ってもらえないというのは無駄足を踏ませたようで申し訳ないがな」
そう言いながらジャーノは、ばつの悪そうな表情になっている。
「いえいえ、先にエイレムさんにマジックウェポンを四つ買ってもらえましたし、なによりこうやってお知り合いになれたことは何よりの収穫です! 冒険者ギルドのギルドマスターさんに、この街の領主さまともなれば多くの人脈をお持ちで、知識も経験も、通常の方よりもはるかに持っていますからね!」
テオドールは笑顔で首を振る。
武器を買ってもらえなかったことなどどうでもいいとばかりに、彼らとの交流のほうを大事に思っていた。
(しかも二人とも権力を持っているから、何かあった時に後ろ盾になってもらえるかも)
そして、この心のうちで思っている言葉は表には出さずに笑顔のうちに押し込めていた。
「そう言ってもらえると、なんだか照れますね」
「そうか? 当たり前のことを言っているようだが……まあ、悪い気はしない!」
エイレムとマルコはいつの間にやらテオドールへと好感を抱き始めており、手のひらの上で転がされていた。
その後、紹介相手に関しては、色々検討してみるということで話は終わる。
ギルドマスタールームでのやりとりを終えたテオドールたちは、ジャーノを伴ってギルドをあとにした。
「さて、お前たちはどうする? 俺は買い物をしてから店に戻る予定だが……」
ジャーノはテオドールたちをエイレムに紹介したことで一つ仕事を終えたため、自分の店の仕事に戻ろうとしていた。
「そうですね、少し二人でブラブラと見てみたいと思います」
テオドールは他にも街を見て回って、金になるもの、ことを探そうと考えている。
「いいですね! あと、どこか静かな場所でゆっくりお話もしたいです、テオさんのことまだまだ全然知らないので……」
ギルドマスターや領主を前にしても物おじせずに、対等に渡り合うテオドールを見て、改めて彼の特異性を目の当たりにしたリザベルトは、踏み込んだ話をしたいと思っていた。
「そういえば、確かにそうだね……それじゃブラブラと買い物をして、その後に食事かティータイム。そこで色々と話をしようか」
「はい!」
これまで話せなかったことや、聞きたいこと、それらがリザベルトの心の中に渦巻いていたため、それをテオドールに話す機会ができるのは嬉しかった。
「ではでは、ジャーノさん。またよろしくお願いします」
「ありがとうございました!」
テオドールたちが手を振りながら別れの言葉を投げかける。
「あぁ、呪いの武器もできるだけ探しておくようにするからな。それじゃ」
ふっと薄く笑ったジャーノも、今日あった得難い経験を思いながら街へと消えていった。
「さてと、とりあえずは買い物からだね。――そういえば、話は変わるけどリザは戦えるの?」
ジャーノを見送った後振り返ったテオドールは今後活動していく上で何がおこるかわからないため、念のためリザベルトに問いかけた。
借金:4000万
所持金:400万+約30万
「えっと、よろしくお願いします」
テオドールとリザベルトも軽く自己紹介をするが、勢いのいいマルコに対して冷静な反応である。
「ふむ、ふむふむ、ふーむふむ、なるほどな。つまり、この剣をテオドール君が持ちこんで、それをエイレムが買うかどうか。そして、エイレムへの渡りをつけたのがジャーノといったところか。ジャーノがなぜ彼らを連れて来たのかがわからんな……」
「「……!?」」
顎のあたりに手を当てたマルコは舐めるように二人を見ながらそう指摘する。
それを聞いたテオドールとリザベルトは、みごとな的中率に驚いている。
「はあ、全くお前は昔からそういう状況判断が鋭いやつだな。彼らが戸惑っているだろ? 言ってることはあっているが、事情を推測するだけじゃなく、耳を傾けるということをいい加減覚えたらどうなんだ?」
ため息交じりのジャーノは昔から変わらないマルコに対して、忠告する。
「まあまあ、あっているならいいじゃないか。それよりこの剣はすごいものだな……詳細はわからないが、かなりの力を持っているのは確かだ……エイレム、買うのか?」
目利きもできるようで、マルコはバルムンクが価値あるものだと判断している。
エイレムが自身と同じくこういったものが好きなのを知っているため、ライバルになるのかどうか確かめるようにすっと目を細めて問いかけた。
「……うーん、あなたが出てきたとなると少し悩みますね。この剣はあなたもおわかりなように、相当な、それこそ伝説級の武器にあたります。それをコレクションにされてしまうのは勿体ないかと」
眼鏡の位置を直したエイレムは牽制するような言葉を選んで、マルコに返答する。
「なるほど、それは確かにそのとおりだ! だが、さっきも言ったように妻がな……さすがにコレクションの置き場がなくなってきたもので、その、自由に買うことができなくなったのだ……」
諦めきれないようにバルムンクをじっと見つめたままのマルコは恐妻家なのか、妻に注意されたことを思い出しながら肩をガックリと落としている。
「はっはっは、収集狂いのお前がなあ。焼きが回ったもんだ! にしても、マルコもダメとなると、それこそ大きな街でもないと厳しいんじゃないか?」
ひとしきり大笑いした後、腕を組んで難しい顔をしたジャーノはこの街で、これ以上武器を買うような権力者に心当たりがなかった。
「だったら、私が金を出して保管と用途はエイレムに任せるというのはどうだ?」
「いや、さすがに金だけ出させるわけにもいきません。しかも、これほどの武器ともなると用途にも困ります。この街にこの武器を使いこなせるような人物はいませんからね」
できる限り近くに置いておきたいというマルコの申し出に、首を振ったエイレム自身が反対意見を述べる。
その後も三人はあーでもない、こーでもないと話し合いを続けるが、結論が出ないためしびれを切らしたテオドールが立ち上がった。
「わかりました! この剣をこの街で売るのは難しいということですね……なので、これは売らずに持っていくことにします」
言うが早いか、テオドールは剣をバッグにしまい込む。一刻も早く金にしたいテオドールにとってずっと続く話し合いに意味はなかった。
「あ、あぁ……」
「お、おう……」
エイレムとマルコは剣があっという間にしまわれたことで、名残惜しさから変な声を出してしまった。
「うむ、まあそのほうがいいだろうな。だが、お前たちだったら有力者や実力者を紹介できるんじゃないか?」
ジャーノの言葉に、エイレムとマルコは確かにそうだと頷いていた。
「紹介しておいて、結局買ってもらえないというのは無駄足を踏ませたようで申し訳ないがな」
そう言いながらジャーノは、ばつの悪そうな表情になっている。
「いえいえ、先にエイレムさんにマジックウェポンを四つ買ってもらえましたし、なによりこうやってお知り合いになれたことは何よりの収穫です! 冒険者ギルドのギルドマスターさんに、この街の領主さまともなれば多くの人脈をお持ちで、知識も経験も、通常の方よりもはるかに持っていますからね!」
テオドールは笑顔で首を振る。
武器を買ってもらえなかったことなどどうでもいいとばかりに、彼らとの交流のほうを大事に思っていた。
(しかも二人とも権力を持っているから、何かあった時に後ろ盾になってもらえるかも)
そして、この心のうちで思っている言葉は表には出さずに笑顔のうちに押し込めていた。
「そう言ってもらえると、なんだか照れますね」
「そうか? 当たり前のことを言っているようだが……まあ、悪い気はしない!」
エイレムとマルコはいつの間にやらテオドールへと好感を抱き始めており、手のひらの上で転がされていた。
その後、紹介相手に関しては、色々検討してみるということで話は終わる。
ギルドマスタールームでのやりとりを終えたテオドールたちは、ジャーノを伴ってギルドをあとにした。
「さて、お前たちはどうする? 俺は買い物をしてから店に戻る予定だが……」
ジャーノはテオドールたちをエイレムに紹介したことで一つ仕事を終えたため、自分の店の仕事に戻ろうとしていた。
「そうですね、少し二人でブラブラと見てみたいと思います」
テオドールは他にも街を見て回って、金になるもの、ことを探そうと考えている。
「いいですね! あと、どこか静かな場所でゆっくりお話もしたいです、テオさんのことまだまだ全然知らないので……」
ギルドマスターや領主を前にしても物おじせずに、対等に渡り合うテオドールを見て、改めて彼の特異性を目の当たりにしたリザベルトは、踏み込んだ話をしたいと思っていた。
「そういえば、確かにそうだね……それじゃブラブラと買い物をして、その後に食事かティータイム。そこで色々と話をしようか」
「はい!」
これまで話せなかったことや、聞きたいこと、それらがリザベルトの心の中に渦巻いていたため、それをテオドールに話す機会ができるのは嬉しかった。
「ではでは、ジャーノさん。またよろしくお願いします」
「ありがとうございました!」
テオドールたちが手を振りながら別れの言葉を投げかける。
「あぁ、呪いの武器もできるだけ探しておくようにするからな。それじゃ」
ふっと薄く笑ったジャーノも、今日あった得難い経験を思いながら街へと消えていった。
「さてと、とりあえずは買い物からだね。――そういえば、話は変わるけどリザは戦えるの?」
ジャーノを見送った後振り返ったテオドールは今後活動していく上で何がおこるかわからないため、念のためリザベルトに問いかけた。
借金:4000万
所持金:400万+約30万
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