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第四話
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作業部屋にこもったユーゴは、自分の知識の中から薬の加工法を引っ張り出して特薬草の加工を始めていく。
ユーゴが作り出したのはポーション。特薬草を使ったため、その効果は高い。
制作にかかった時間は一時間程で、結果十本。
賢者としての魔法を使うことで、制作過程をいくつかスキップできるため、これほどに短時間で作ることができた。
通常は同じ量のポーションを作るのに数時間はかかってしまう。
「まだ日は落ちてないから、街の散策ついでに行ってみるか」
地球時間でいえば、そろそろ四時になるかというところであるため、ユーゴは街に向かうことにする。
徒歩では到着までにかなり時間がかかってしまうので、ユーゴは飛行魔法を使い、しかし高度をあげずに地面の上を滑るように進んでいく。
街が近づいてきたところで魔法を中止して、普通に歩いて入場していく。
上空を飛んでいたわけではないので、誰に指摘されることもなく街に入ることができた。
「さて、とりあえず錬金術師の店に行ってみるか。もしポーションの製造をしてる人だったら競合するからなあ」
競合他社への挨拶、もしくは自分のものを取り扱ってもらえないかと考えて、ユーゴは店を探していく。
通りを行き交う人は多く、改めて賑わっている街だということが実感できた。
商店が並んでいる通りを歩き、そこから外れた場所へと移っていく。
「大抵の場合、ああいった店は少し中央から外れた場所に……あった」
ユーゴの見上げた視線の先には、小さな板に何やら薬品の入った瓶のようなマークが記されている。
特にこれといった決まったマークがあるわせではないが、多くの錬金術師はこういった薬品の形を記すことが多い。
「すいませーん」
扉を開くと、カランカランとベルが鳴りユーゴの来店を知らせる。
それと共に声をかけることで、店員に呼びかける。
しばらくの沈黙ののち、店のカウンターの更に奥からゆっくりとした足音が聞こえてきた。
「はいはい、なんだい? 何か買い物かい? それとも何か依頼かい?」
店の奥から姿を現したのは、尖った耳を見てわかるようにエルフの女性だった。
言葉づかいは年齢を重ねた女性のソレだったが、綺麗な金髪に美人といって遜色ない顔立ち、胸も大きくスタイルも抜群である。
「ほう、まさかこんな美人が出てくるとは思わなかったな」
店の雰囲気は暗く、街の中心から外れた場所にポツンと建っている店。
しかし、その店と反して美人店主がいるとなればギャップも相まって混雑しそうなものだが……とユーゴは不思議に思っていた。
すると、先ほどまでと口調が変わり、見た目通りの言葉遣いになる。
「あら、あなた私の本当の姿が見えるの?」
店主は少し驚いた様子を見せるが、動揺よりも喜びのほうが強いらしく、とびきりの笑顔で近づいてくると、ユーゴをしげしげと眺めている。
「あぁ、なるほど。偽装の魔法がかかっているのか……常時看破の魔法が発動してるから、つい」
期せずして彼女の本来の姿を見抜いてしまったことに、ユーゴは自らのミスを認め、やってしまったかと頭を掻いていた。
「ふふっ、あなたすごいわね。私の偽装の魔法を見抜いた人なんて初めてよ。本来の見た目だと馬鹿にされたり、舐められることもあるし、あとは別の目的で来る人もいるから隠してるの」
若い見た目であれば、ちゃんとしたものを作ってるのか? と疑われ、更に美人となればよからぬ目的で声をかけるものも少なくない。
そういうやっかみをずっと受けてきた彼女の自衛策だったのだろう。
「偽装の魔法を使ってないほうが人気も出て、店も繁盛すると思うけどな。……まあ、変なやつがこぞってやって来るほうが厄介か」
女性ならではの悩みに対して、同性である男が迷惑をかけることにユーゴはどことなく申し訳なさを感じていた。
「ふふっ、あなた面白いわね。あなたが気にしなくても大丈夫よ。おばあちゃんの姿でいるのもなかなか楽しいんだから。――それで、そんなすごい魔法の使い手のあなたがこんな寂れたお店にどんな御用なの?」
ユーゴの言葉では逆説的に店が繁盛してないと言っていたため、彼女はそれを逆手にとって冗談交じりに微笑みながら質問する。
「いや、すまなかった。今日は店に置いてもらいたいものがあって来たんだ。買い取ってもらうのでもいいし、納品しておいてもらうのでもいい。もし、迷惑だったらどこか他の店を教えてくれると助かるんだが……」
そう言いながら、ユーゴはカバンからポーションを一本だけ取り出した。
このカバンも賢者の頃の自分が空間魔法でしまっておいたものだった。
「それは、ポーションかしら? それにしては色が濃いような……」
興味深そうに受け取ると、店主は小瓶に入ったポーションを眺めていく。
「効果は大丈夫だと思うんだが、どうだ? 一つなら試してもらってもいいぞ」
「それじゃあ、ちょっと試させてもらうわね」
そう言うと、店主はナイフを取り出して指先を少しだけ切る。
ぷつっと切れた部分から血がしたたり落ちた。
ポーションは怪我をした場所にふりかけるか、飲み込むことで効果を発揮する。
今回は、怪我をした指先にふりかけることでその効果を確認する。
数滴かけると、指先の傷は一瞬でふさがり血も止まる。
元の綺麗な傷のない素肌がそこにはあった。
「すごい、これはすごく効果が高いポーションね! これは是非買い取らせてもらいたいわ! いくらくらいがいいかしら?」
久々にいい品を見つけたと目を輝かせた店主は、人差し指を顎にあててかわいらしいポーズで質問する。
「効果が高いのなら、一般的なポーションの値段に少し色をつけてくれると助かる」
「了解、それじゃあうちの店のポーションの値段の1.5倍の価格でお支払いするわね。何本あるのかしら?」
そう聞かれてユーゴは実物を全てカウンターの上に並べていく。
「お試しで使ったのと合わせて十本ね……はい、それじゃあこれが料金です。最近はなかなか自分でポーションを量産している時間がとれないから、買取は歓迎よ」
妖艶ながらもはじけるような笑顔で言う彼女に、ユーゴも悪い気はしなかった。
「素材はまだまだあるから、また寄らせてもらうよ」
ユーゴは報酬を受け取ると、まだまだ大量にある特薬草を思い浮かべながら、更なるポーション量産を考えて店をあとにする。
その後、ユーゴ特製のポーションはぼちぼちと売れていき、なにげなく使った冒険者が我先にと再び店に駆け込んでくることとなる……。
ユーゴが作り出したのはポーション。特薬草を使ったため、その効果は高い。
制作にかかった時間は一時間程で、結果十本。
賢者としての魔法を使うことで、制作過程をいくつかスキップできるため、これほどに短時間で作ることができた。
通常は同じ量のポーションを作るのに数時間はかかってしまう。
「まだ日は落ちてないから、街の散策ついでに行ってみるか」
地球時間でいえば、そろそろ四時になるかというところであるため、ユーゴは街に向かうことにする。
徒歩では到着までにかなり時間がかかってしまうので、ユーゴは飛行魔法を使い、しかし高度をあげずに地面の上を滑るように進んでいく。
街が近づいてきたところで魔法を中止して、普通に歩いて入場していく。
上空を飛んでいたわけではないので、誰に指摘されることもなく街に入ることができた。
「さて、とりあえず錬金術師の店に行ってみるか。もしポーションの製造をしてる人だったら競合するからなあ」
競合他社への挨拶、もしくは自分のものを取り扱ってもらえないかと考えて、ユーゴは店を探していく。
通りを行き交う人は多く、改めて賑わっている街だということが実感できた。
商店が並んでいる通りを歩き、そこから外れた場所へと移っていく。
「大抵の場合、ああいった店は少し中央から外れた場所に……あった」
ユーゴの見上げた視線の先には、小さな板に何やら薬品の入った瓶のようなマークが記されている。
特にこれといった決まったマークがあるわせではないが、多くの錬金術師はこういった薬品の形を記すことが多い。
「すいませーん」
扉を開くと、カランカランとベルが鳴りユーゴの来店を知らせる。
それと共に声をかけることで、店員に呼びかける。
しばらくの沈黙ののち、店のカウンターの更に奥からゆっくりとした足音が聞こえてきた。
「はいはい、なんだい? 何か買い物かい? それとも何か依頼かい?」
店の奥から姿を現したのは、尖った耳を見てわかるようにエルフの女性だった。
言葉づかいは年齢を重ねた女性のソレだったが、綺麗な金髪に美人といって遜色ない顔立ち、胸も大きくスタイルも抜群である。
「ほう、まさかこんな美人が出てくるとは思わなかったな」
店の雰囲気は暗く、街の中心から外れた場所にポツンと建っている店。
しかし、その店と反して美人店主がいるとなればギャップも相まって混雑しそうなものだが……とユーゴは不思議に思っていた。
すると、先ほどまでと口調が変わり、見た目通りの言葉遣いになる。
「あら、あなた私の本当の姿が見えるの?」
店主は少し驚いた様子を見せるが、動揺よりも喜びのほうが強いらしく、とびきりの笑顔で近づいてくると、ユーゴをしげしげと眺めている。
「あぁ、なるほど。偽装の魔法がかかっているのか……常時看破の魔法が発動してるから、つい」
期せずして彼女の本来の姿を見抜いてしまったことに、ユーゴは自らのミスを認め、やってしまったかと頭を掻いていた。
「ふふっ、あなたすごいわね。私の偽装の魔法を見抜いた人なんて初めてよ。本来の見た目だと馬鹿にされたり、舐められることもあるし、あとは別の目的で来る人もいるから隠してるの」
若い見た目であれば、ちゃんとしたものを作ってるのか? と疑われ、更に美人となればよからぬ目的で声をかけるものも少なくない。
そういうやっかみをずっと受けてきた彼女の自衛策だったのだろう。
「偽装の魔法を使ってないほうが人気も出て、店も繁盛すると思うけどな。……まあ、変なやつがこぞってやって来るほうが厄介か」
女性ならではの悩みに対して、同性である男が迷惑をかけることにユーゴはどことなく申し訳なさを感じていた。
「ふふっ、あなた面白いわね。あなたが気にしなくても大丈夫よ。おばあちゃんの姿でいるのもなかなか楽しいんだから。――それで、そんなすごい魔法の使い手のあなたがこんな寂れたお店にどんな御用なの?」
ユーゴの言葉では逆説的に店が繁盛してないと言っていたため、彼女はそれを逆手にとって冗談交じりに微笑みながら質問する。
「いや、すまなかった。今日は店に置いてもらいたいものがあって来たんだ。買い取ってもらうのでもいいし、納品しておいてもらうのでもいい。もし、迷惑だったらどこか他の店を教えてくれると助かるんだが……」
そう言いながら、ユーゴはカバンからポーションを一本だけ取り出した。
このカバンも賢者の頃の自分が空間魔法でしまっておいたものだった。
「それは、ポーションかしら? それにしては色が濃いような……」
興味深そうに受け取ると、店主は小瓶に入ったポーションを眺めていく。
「効果は大丈夫だと思うんだが、どうだ? 一つなら試してもらってもいいぞ」
「それじゃあ、ちょっと試させてもらうわね」
そう言うと、店主はナイフを取り出して指先を少しだけ切る。
ぷつっと切れた部分から血がしたたり落ちた。
ポーションは怪我をした場所にふりかけるか、飲み込むことで効果を発揮する。
今回は、怪我をした指先にふりかけることでその効果を確認する。
数滴かけると、指先の傷は一瞬でふさがり血も止まる。
元の綺麗な傷のない素肌がそこにはあった。
「すごい、これはすごく効果が高いポーションね! これは是非買い取らせてもらいたいわ! いくらくらいがいいかしら?」
久々にいい品を見つけたと目を輝かせた店主は、人差し指を顎にあててかわいらしいポーズで質問する。
「効果が高いのなら、一般的なポーションの値段に少し色をつけてくれると助かる」
「了解、それじゃあうちの店のポーションの値段の1.5倍の価格でお支払いするわね。何本あるのかしら?」
そう聞かれてユーゴは実物を全てカウンターの上に並べていく。
「お試しで使ったのと合わせて十本ね……はい、それじゃあこれが料金です。最近はなかなか自分でポーションを量産している時間がとれないから、買取は歓迎よ」
妖艶ながらもはじけるような笑顔で言う彼女に、ユーゴも悪い気はしなかった。
「素材はまだまだあるから、また寄らせてもらうよ」
ユーゴは報酬を受け取ると、まだまだ大量にある特薬草を思い浮かべながら、更なるポーション量産を考えて店をあとにする。
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