鍛冶師×学生×大賢者~継承された記憶で、とんでもスローライフ!?~

かたなかじ

文字の大きさ
4 / 38

第四話

しおりを挟む
 作業部屋にこもったユーゴは、自分の知識の中から薬の加工法を引っ張り出して特薬草の加工を始めていく。


 ユーゴが作り出したのはポーション。特薬草を使ったため、その効果は高い。

 制作にかかった時間は一時間程で、結果十本。

 賢者としての魔法を使うことで、制作過程をいくつかスキップできるため、これほどに短時間で作ることができた。


 通常は同じ量のポーションを作るのに数時間はかかってしまう。


「まだ日は落ちてないから、街の散策ついでに行ってみるか」

 地球時間でいえば、そろそろ四時になるかというところであるため、ユーゴは街に向かうことにする。

 徒歩では到着までにかなり時間がかかってしまうので、ユーゴは飛行魔法を使い、しかし高度をあげずに地面の上を滑るように進んでいく。


 街が近づいてきたところで魔法を中止して、普通に歩いて入場していく。

 上空を飛んでいたわけではないので、誰に指摘されることもなく街に入ることができた。


「さて、とりあえず錬金術師の店に行ってみるか。もしポーションの製造をしてる人だったら競合するからなあ」

 競合他社への挨拶、もしくは自分のものを取り扱ってもらえないかと考えて、ユーゴは店を探していく。


 通りを行き交う人は多く、改めて賑わっている街だということが実感できた。

 商店が並んでいる通りを歩き、そこから外れた場所へと移っていく。


「大抵の場合、ああいった店は少し中央から外れた場所に……あった」


 ユーゴの見上げた視線の先には、小さな板に何やら薬品の入った瓶のようなマークが記されている。

 特にこれといった決まったマークがあるわせではないが、多くの錬金術師はこういった薬品の形を記すことが多い。


「すいませーん」

 扉を開くと、カランカランとベルが鳴りユーゴの来店を知らせる。

 それと共に声をかけることで、店員に呼びかける。


 しばらくの沈黙ののち、店のカウンターの更に奥からゆっくりとした足音が聞こえてきた。


「はいはい、なんだい? 何か買い物かい? それとも何か依頼かい?」

 店の奥から姿を現したのは、尖った耳を見てわかるようにエルフの女性だった。

 言葉づかいは年齢を重ねた女性のソレだったが、綺麗な金髪に美人といって遜色ない顔立ち、胸も大きくスタイルも抜群である。


「ほう、まさかこんな美人が出てくるとは思わなかったな」

 店の雰囲気は暗く、街の中心から外れた場所にポツンと建っている店。

 しかし、その店と反して美人店主がいるとなればギャップも相まって混雑しそうなものだが……とユーゴは不思議に思っていた。


 すると、先ほどまでと口調が変わり、見た目通りの言葉遣いになる。

「あら、あなた私の本当の姿が見えるの?」

 店主は少し驚いた様子を見せるが、動揺よりも喜びのほうが強いらしく、とびきりの笑顔で近づいてくると、ユーゴをしげしげと眺めている。


「あぁ、なるほど。偽装の魔法がかかっているのか……常時看破の魔法が発動してるから、つい」

 期せずして彼女の本来の姿を見抜いてしまったことに、ユーゴは自らのミスを認め、やってしまったかと頭を掻いていた。


「ふふっ、あなたすごいわね。私の偽装の魔法を見抜いた人なんて初めてよ。本来の見た目だと馬鹿にされたり、舐められることもあるし、あとは別の目的で来る人もいるから隠してるの」

 若い見た目であれば、ちゃんとしたものを作ってるのか? と疑われ、更に美人となればよからぬ目的で声をかけるものも少なくない。

 そういうやっかみをずっと受けてきた彼女の自衛策だったのだろう。


「偽装の魔法を使ってないほうが人気も出て、店も繁盛すると思うけどな。……まあ、変なやつがこぞってやって来るほうが厄介か」

 女性ならではの悩みに対して、同性である男が迷惑をかけることにユーゴはどことなく申し訳なさを感じていた。


「ふふっ、あなた面白いわね。あなたが気にしなくても大丈夫よ。おばあちゃんの姿でいるのもなかなか楽しいんだから。――それで、そんなすごい魔法の使い手のあなたがこんな寂れたお店にどんな御用なの?」

 ユーゴの言葉では逆説的に店が繁盛してないと言っていたため、彼女はそれを逆手にとって冗談交じりに微笑みながら質問する。


「いや、すまなかった。今日は店に置いてもらいたいものがあって来たんだ。買い取ってもらうのでもいいし、納品しておいてもらうのでもいい。もし、迷惑だったらどこか他の店を教えてくれると助かるんだが……」

 そう言いながら、ユーゴはカバンからポーションを一本だけ取り出した。

 このカバンも賢者の頃の自分が空間魔法でしまっておいたものだった。


「それは、ポーションかしら? それにしては色が濃いような……」

 興味深そうに受け取ると、店主は小瓶に入ったポーションを眺めていく。


「効果は大丈夫だと思うんだが、どうだ? 一つなら試してもらってもいいぞ」

「それじゃあ、ちょっと試させてもらうわね」

 そう言うと、店主はナイフを取り出して指先を少しだけ切る。

 ぷつっと切れた部分から血がしたたり落ちた。


 ポーションは怪我をした場所にふりかけるか、飲み込むことで効果を発揮する。

 今回は、怪我をした指先にふりかけることでその効果を確認する。


 数滴かけると、指先の傷は一瞬でふさがり血も止まる。

 元の綺麗な傷のない素肌がそこにはあった。


「すごい、これはすごく効果が高いポーションね! これは是非買い取らせてもらいたいわ! いくらくらいがいいかしら?」

 久々にいい品を見つけたと目を輝かせた店主は、人差し指を顎にあててかわいらしいポーズで質問する。


「効果が高いのなら、一般的なポーションの値段に少し色をつけてくれると助かる」

「了解、それじゃあうちの店のポーションの値段の1.5倍の価格でお支払いするわね。何本あるのかしら?」

 そう聞かれてユーゴは実物を全てカウンターの上に並べていく。


「お試しで使ったのと合わせて十本ね……はい、それじゃあこれが料金です。最近はなかなか自分でポーションを量産している時間がとれないから、買取は歓迎よ」

 妖艶ながらもはじけるような笑顔で言う彼女に、ユーゴも悪い気はしなかった。


「素材はまだまだあるから、また寄らせてもらうよ」

 ユーゴは報酬を受け取ると、まだまだ大量にある特薬草を思い浮かべながら、更なるポーション量産を考えて店をあとにする。


 その後、ユーゴ特製のポーションはぼちぼちと売れていき、なにげなく使った冒険者が我先にと再び店に駆け込んでくることとなる……。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界の社交界で、自分の幸せを選べるようになるまでの ほのぼの甘い逆ハーレム恋愛ファンタジー。

処理中です...