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第百四十六話

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「――ヤマト、やばいね」
「――うん、これは……強い」
 一時撤退したヤマトたち。少し離れたところで話す二人は終わりを告げる者に対して、ゲーム時代に何度も味わった、強者と初めて戦う時の感覚を持っていた。
 その顔には高揚感と緊張が入り混じり、強い者と戦う恐怖などは一切ない。

「お二人とも、どうしますにゃ?」
「ぶるる」
 当初はいろんなものに対して怯えていたルクスも、終わりを告げる者に対して強いとは思ってはいたが、そこまでの恐怖は感じていなかった。信頼するヤマトたちがどう作戦を立てるのかと冷静に尋ねている。
 エクリプスに至ってはやることをやるだけだという表情をしていた。

「――やるしか、ないよね」
「そうだねえ、少し回復に力を入れておこっか。“大地の光”、“緑の癒やし”」
 気合の入ったヤマトの表情に、にっこりと笑って応えたユイナが森の巫女として、設置型の回復魔法を発動させる。

 これは、一定の範囲内に回復魔法を常時発動するフィールドを作り、そこに乗ったパーティメンバーの傷を一定量回復させるもの。
 聖女が使う回復魔法よりも一瞬の回復量は小さいが、それでも継続回復があることはありがたかった。

「ふう、それじゃあ……いきますか!」
 一息ついたヤマトは、勇ましい表情でソードオブミソロジーを手にし、終わりを告げる者へと向かって行く。

 この時点でユイナは聖強化士として、全員にステータスアップの強化魔法をかけている。

「いいぞ、来い!」
 ようやく来たかと、六本の腕を生やした終わりを告げる者はヤマトたちを迎え撃つ。

 正面からはヤマトが、ユイナは遠距離から弓で、ルクスはヤマトの影に隠れるように、そしてエクリプスは後方に回っていた。

「ふむ、これがコンビネーションというものだな。力弱き者が力を合わせて戦う。見事なものだ、美しいものだ」
 珍しいものを見たかのように目を細めた終わりを告げる者は、ヤマトたちの戦い振りを見て興味深々といった様子である。
 ここまでは常に押されていたため、余裕がなかったが、本来の力を使うことでヤマトたちの動きを冷静にみることができている。

「“スーパーノヴァブレイブ”!」
 剣を振りかぶったヤマトは、ここでも同じスキルを使用する。

「はあ……それは既に見たと言ったであろうが!」
 同じ攻撃の繰り返しに、終わりを告げる者は呆れるようにため息を吐き、二つの剣でヤマトの攻撃を防いで、更に別の二剣でヤマトを攻撃する。

「“ダブル”!」
 しかし、ヤマトの攻撃は連続したものだった。
 強力な威力を持つスーパーノヴァブレイブを一発放ち、それを防がせる。

 更にそこへ反対の手に持った剣で同じ技を発動する。
 一度放つだけでも相当な消費を伴うスキルを連続して使えるほどにヤマトは成長していた。

 ヤマトの攻撃を防御に使う手に、終わりを告げる者は先ほどまでのつまらなさそうな表情を一変させた。

「“クアドラブルスラスト”!」
 残りのヤマトを狙った攻撃は、間に滑り込んだルクスが槍によって封殺する。細かい連撃を叩きこむことで、大きな攻撃をはじき返した。

「ヒヒーン!」
 更に後方からはエクリプスによる強烈な踏みつけ攻撃が襲い掛かる。龍の鱗を貫通させるほどの踏みつけ攻撃が強烈にたたきつけられる。
 そして彼らの攻撃の間隙を縫うようにしてユイナの矢が大量に降り注ぐ。

「――ふん、確かに強いがまだまだだ。それでは私には届かんぞ!」
 あちこちから襲い来る攻撃を全て見切っていた終わりを告げる者は、一瞬で強力な防御結界を張って、ヤマトたちの攻撃を防ぐ。

 どの攻撃も防御結界を貫くことはできなかったが、唯一ヤマトの攻撃だけは小さな傷をつけることに成功する。

 それを見たヤマトはにやりと笑う。――自分の攻撃でも傷をつけることができると。
 それを見た終わりを告げる者はにやりと笑った。――その程度で喜ぶのかと。

 もちろんヤマトは傷をつけたことだけを喜んだわけではなかった。
 次に終わりを告げる者へと向かって放とうとしていた攻撃は、自分の攻撃を明らかに上回る威力であるため、防御結界を壊すことができる――そう判断したためだった。

「四聖獣たち、いくにゃ!」
 ルクスの声を聞いた四聖獣が勢いよく飛び出し、それぞれの最大の攻撃を放つ。

『『『『うおおおおおおおおお!』』』』
 先ほどの大爆発の影響でそれぞれ気絶していたはずの四聖獣。

 だが、ユイナが先ほど設置した回復魔法の効果がここで活きてくる。
 一つは大地の光――これはヤマトたちがダメージを負った場合に回復させるためのもの。
 そして、もう一つが緑の癒やし――これは、地面の中に蔦を這わせて遠距離にいる仲間を回復するもの。同時に発動したことで終わりを告げる者には、後者の効果がわからなかった。

 それゆえに、復活した四聖獣のことは意識の外にあった。

 それぞれの属性の最大出力の攻撃は太いビームのように放たれ、まっすぐ終わりを告げる者へと照射される。
「っ、ぬおおおおおおお! こ、この程度!」
 踏ん張るように防御結界を展開し続ける終わりを告げる者。
 しかし、その言葉とは裏腹に防御結界にはどんどんヒビが入っていく。

「ぐおおおおおおおおお!」
 苦しげに耐え抜く声をあげ、魔力を自身に集中させていく終わりを告げる者。濃密な魔力がうねるように終わりを告げる者に絡みつき、光を纏う。

「――うるさあああああああい!!」
 そして、魔力を一気に解放して四聖獣の攻撃をかき消し、それを上回る攻撃を四聖獣へと叩きこむ。

「“シールドオブミソロジー、多段展開”!」
 ヤマトは終わりを告げる者の近くに待機しており、シールドを数枚展開して四聖獣へと攻撃が直撃するのを防ぐ。
 激しくぶつかり合うような衝撃波が一帯に広がるも、ヤマトたちはシールドの中で無事な姿だった。

「……!?」
 終わりを告げる者は内心ひたすら驚いていた。
 四聖獣が再び攻撃をしてきたこと、それに加えて自分の攻撃が防がれたこと、また、それを防いだのは数舜前まで自分の近くにいたヤマトであること。更に、その身はダメージを受けている。

 これらが重なったことで、終わりを告げる者は、動揺に動揺を重ねていた。

「――みんな、全力で行くぞ!」
 ヤマトは鼓舞するように仲間たちに大きな声をかける。
 動揺し固まる終わりを告げる者を見て、これは大きな隙と判断したヤマトが飛び出す。

 ヤマトのシールドに守られた四聖獣は先ほど大きな攻撃を放ったばかりであるため、できる範囲の最も強力な攻撃を放つ。

「“ディカプルスラスト”!」
 気合の漲る表情のルクスは自身の身長の何倍もの高さの跳躍から、自身最大の十連の突き攻撃スキル。

「“ラストアロー”!」
 少し中腰になりながら真剣な表情のユイナは、使ったが最後、使用した武器が破壊される代わりに、その武器で放つことができる最大の威力を誇るスキルを放つ。

「ヒヒーン(聖なる馬槍)!」
 己に出せる最大出力で勇ましく駆け出したエクリプスは、自らを一本の光の大きな槍と化した一撃を。

「“デスレイソード”!」
 どこからともなく声がして、即座に放たれた鋭い剣戟。
 これは闇魔法による強力な一撃であり、使用する武器にその威力は依存する。
 そして、使われた武器はヤマトたちが持っている装備を除けば、最強とも言われる魔王の剣――サタナスソード。

「――き、貴様は!?」
 先ほどから驚いてばかりの終わりを告げる者は、更にもう一つ驚く。
 デスレイソードを使ったのは、先ほどヤマトが戦った魔王だったのだ。

「ふっ……真の黒幕を倒すためならいくらでも力を使おうぞ」
「きさまらああああああああああああああああ! こんな攻撃などおおおおおお!!」
 不敵な笑みと共に魔王が放った強烈な一撃。
 まさか魔王をも味方につけるとは思っていなかった終わりを告げる者は、こみ上げる色んな負の感情を爆発させるように叫ぶ。
 その身には全ての攻撃を直撃してしまうが、怒りと本来の力によってその攻撃に抗している。

 しかし、ひとつひとつが渾身の力を込めた強力な攻撃であるため、防御結界に確実なダメージを与えていく。

 悲鳴を上げるように震える防御結界を睨む終わりを告げる者。
 もう一つ、強力な攻撃が入れば押し切られてしまうかもしれない――そう考えた時に、終わりを告げる者はふっと思い出す。

 自分が一番に戦いたかった相手――そう、あいつはどうした? と。

 そう、いま自身に降り注ぐ攻撃に、ヤマトは加わっていない。

「……もう少し待ってくれるかな?」
 ふっと笑うようなヤマトの声は、終わりを告げる者のすぐ側から聞こえてくる。

「なんだと!?」








ヤマト:剣聖LV1345、大魔導士LV1200、聖銃剣士LV1089
ユイナ:弓聖LV1345、聖女LV1245、聖強化士LV1177、銃士LV1156、森の巫女LV1097
エクリプス:聖馬LV1345
ルクス:聖槍士LV1104、サモナーLV1345
ガルプ:黄竜LV1085
エグレ:黒鳳凰LV1059
トルト:朱亀LV1049
ティグ:青虎LV1046
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