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3.コゼットさんのお手伝い
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「まずは水汲みを手伝ってもらおうかねぇ。ここはいつも人手不足なんだよ」
コゼットさんが私に言った。
働かざる者、食うべからず、ということわざが元の世界にあった。この家に住まわしてもらうのだから、働くのは当然なのだろう。
だけど、どうもこのスラムは様子が違う。
病人や老人、働けない人がたくさんいる。明らかに、ベッドから動くことのできない人だっている。
人手が足りないとはそういう意味なのだろう。
「精一杯頑張ります!」
「この樽、一杯の水を頼むよ」
ワイン樽ほどの大きさの水樽。
「分かりました」
王都には、いたるところに井戸が掘られている。水は必需品だし、生きていく上で、生活していく上で欠かせないものだからだ。
井戸は、必須のインフラなのだ。
私は、桶を持ってバラックの外へと出た。
スラムにも、ちゃんと井戸があった。
むしろ、井戸があるのが当たり前か。逆の発想だ。井戸があるから、スラムがあり、そこでなんか人が生活していけるのだ。 スラムの井戸にも、釣瓶が取り付けられている。
『ソフィアの井戸』である。
私にとっては、過去の栄光というか、あまり良い思い出がある代物とは言えない。
私が調子にのって、鶴瓶式井戸のことなんて言わなければ、私は、聖女になんてならなかった。田舎の貴族として、幸せに暮らせたかもしれない。
いや、もう済んだことだ。今は、水を汲み上げなければならない。
子どもの頃、一度だけ、侍女の制止を聞かず、釣瓶を使わずに井戸から水をくみ上げたことがある。
水をくみ上げただけで腕がパンパンになった。明日、筋肉痛確定、というような感じだ。腕が、生まれたての小鹿のようにぷるぷると震えていた。
それに比べ、釣瓶式の井戸の威力は絶大だった。
桶を投げ込む投げ井戸式は、腕力の力だけで桶を井戸の深さ、十メートル以上のところから桶を持ち上げて行かなければならない。そうしないと、桶が垂直に上がっていかないからだ。投げ込み式では、井戸に上半身を乗りだして、慎重に壁と桶がぶつからないようにくみ上げる。桶も破損しやすい。
しかし、釣瓶式は体の体重で引っ張ればよい。釣瓶が、垂直に桶を自動的に引き上げてくれる。
腕力だけで五キロのものを持ち上げるのと、体重を使いながら全身の力で五キロのものを持ち上げるのでは、労力が全然違ってくる。
自惚れかも知れないけれど、釣瓶式の井戸って、人びとの役に立っている。
王宮に行ってからは、次の『神託は?』と、いつも聞かれて、期待されて、もう嫌だった。
そういえば、釣瓶式の井戸を考えたのって、私にいつも親切にしてくれる侍女、テレッサが腰を痛めたからだった。
『ソフィア様、ありがとうございます。これなら私も水を汲めます。失業しなくて済みます。本当にありがとうございます。これからも誠心誠意、ソフィア様にお仕えさせていただきます。このご恩は一生忘れません』
泣きながらテレッサさんは私にお礼を言っていた。
私はその感謝を素直に受け取れなかった。
『どっちにしろ、井戸から水を汲むとか、時代遅れでアホらしい。水道があって、蛇口ひねれば水が出るのが普通だし』
内心で、この世界を小馬鹿にしていたのだろう。
テレッサは本当に感謝してくれていたんだ。貴族の末娘に対するおべっかとか、社交辞令かと思ってしまっていた。
ワイン樽一杯に水を汲む。投げ込み式だったら、それだけで疲れ果ててしまうような重労働だったのだろう。
貴族の末娘として箱入りであったし、王宮に登ってからも井戸の水なんて汲む機会はなかった。
テレッサの『ありがとう』は、本当の『ありがとう』だった。私は、私を可愛がってくれたテレッサの役に立っていた。
私は、ちょっと救われたような気がした。ありがとう、テレッサ。きっと、私の実家で、お兄様やお姉さまの子供の身の回りの世話をしてくれているのだろう。
そしてまた、釣瓶式の井戸を使いながら、誰か知らないけれど、前の世界で釣瓶式井戸を発明した人に感謝をした。
現代からすると五百年くらい昔かも知れないけれど、それがこの世界では確かに、役に立っていて、人の生活を楽にしている。
釣瓶。つまり、『滑車』を発明した人は偉大だと思う。
『滑車』があれば、足場さえ組めば、どんなに重い石だって、ロープと滑車と土台が丈夫であれば持ち上げることはできる。 どうやらこの世界の人も、梃子の原理は知っているようだが、この釣瓶式井戸のように、『滑車』を上手く応用すれば、工事などが安全になるだろう。
もしかしたら、人力でもエレベーターなんてものも登場するかも知れない。
王城には高い見張り塔があった。私も景色を堪能しに塔へと登ったが、螺旋階段でとてもキツかった。
階段は疲れるし、エレベーターに乗りたい、と何度も思った。
いや、でもエレベーターは無理か。たとえば、三人が乗ったとして、百五十キロくらいだろうか。その重量を引っ張っていくのに、やはり三人以上が必要だろう。モーターとか電動の力が必要になってくるのだろうし……。
あれ? そういえば、滑車って、反対側に重りを付けていなかったっけ?
左側が十キロの重さで、右側に九キロの重石を付ければ、あと右に一キロの力を加えてやれば重さが釣り合う。
ん?
釣瓶式井戸で、桶の反対側に重りを、その辺に転がっている石でも結んであげれば、労力軽減できそう?
桶に水を入れたときの重さは五キロくらいだから、右側に三、四キロの重石を付ければ、重さの差の、一、二キロの力を加えてやるだけでよいのではないだろうか?
重石の分だけ力が不要になる。
『 5 — 4 = 1 』という計算だ。
いや……きっとこれは私の記憶間違いだろう。
そんな単純なことなら、誰かが思い付いているはずだ。だって、もう釣瓶式の井戸が国中に広まって十年は過ぎている。さすがに改良案が出されているはずだ。
また、別の改良案だと、滑車の右と左の両方に桶を付けたら、桶を井戸へと落とす作業がなくなり、効率二倍な気がするけど……。
鶴瓶式で、前よりは便利になったのは確実だけど、もっと楽をする工夫はできるはずだ。
いや、でも、まだこのスラム街にまで、改良版の井戸が届いていないだけなのだろう。
それだったら、私が近くに落ちている石を反対側に括り付けるだけで、改良できちゃうけど……。これだけで水汲みがさらに楽になる。 難しい作業ではない。ロープの反対側に重石を結ぶだけだ。
私は、早速作業に取りかかった。釣瓶を支える支柱に結び付けてあるロープをほどき、そこら辺に落ちている平べったいサッカーボールくらいの石を結び付けた。
コゼットさんが私に言った。
働かざる者、食うべからず、ということわざが元の世界にあった。この家に住まわしてもらうのだから、働くのは当然なのだろう。
だけど、どうもこのスラムは様子が違う。
病人や老人、働けない人がたくさんいる。明らかに、ベッドから動くことのできない人だっている。
人手が足りないとはそういう意味なのだろう。
「精一杯頑張ります!」
「この樽、一杯の水を頼むよ」
ワイン樽ほどの大きさの水樽。
「分かりました」
王都には、いたるところに井戸が掘られている。水は必需品だし、生きていく上で、生活していく上で欠かせないものだからだ。
井戸は、必須のインフラなのだ。
私は、桶を持ってバラックの外へと出た。
スラムにも、ちゃんと井戸があった。
むしろ、井戸があるのが当たり前か。逆の発想だ。井戸があるから、スラムがあり、そこでなんか人が生活していけるのだ。 スラムの井戸にも、釣瓶が取り付けられている。
『ソフィアの井戸』である。
私にとっては、過去の栄光というか、あまり良い思い出がある代物とは言えない。
私が調子にのって、鶴瓶式井戸のことなんて言わなければ、私は、聖女になんてならなかった。田舎の貴族として、幸せに暮らせたかもしれない。
いや、もう済んだことだ。今は、水を汲み上げなければならない。
子どもの頃、一度だけ、侍女の制止を聞かず、釣瓶を使わずに井戸から水をくみ上げたことがある。
水をくみ上げただけで腕がパンパンになった。明日、筋肉痛確定、というような感じだ。腕が、生まれたての小鹿のようにぷるぷると震えていた。
それに比べ、釣瓶式の井戸の威力は絶大だった。
桶を投げ込む投げ井戸式は、腕力の力だけで桶を井戸の深さ、十メートル以上のところから桶を持ち上げて行かなければならない。そうしないと、桶が垂直に上がっていかないからだ。投げ込み式では、井戸に上半身を乗りだして、慎重に壁と桶がぶつからないようにくみ上げる。桶も破損しやすい。
しかし、釣瓶式は体の体重で引っ張ればよい。釣瓶が、垂直に桶を自動的に引き上げてくれる。
腕力だけで五キロのものを持ち上げるのと、体重を使いながら全身の力で五キロのものを持ち上げるのでは、労力が全然違ってくる。
自惚れかも知れないけれど、釣瓶式の井戸って、人びとの役に立っている。
王宮に行ってからは、次の『神託は?』と、いつも聞かれて、期待されて、もう嫌だった。
そういえば、釣瓶式の井戸を考えたのって、私にいつも親切にしてくれる侍女、テレッサが腰を痛めたからだった。
『ソフィア様、ありがとうございます。これなら私も水を汲めます。失業しなくて済みます。本当にありがとうございます。これからも誠心誠意、ソフィア様にお仕えさせていただきます。このご恩は一生忘れません』
泣きながらテレッサさんは私にお礼を言っていた。
私はその感謝を素直に受け取れなかった。
『どっちにしろ、井戸から水を汲むとか、時代遅れでアホらしい。水道があって、蛇口ひねれば水が出るのが普通だし』
内心で、この世界を小馬鹿にしていたのだろう。
テレッサは本当に感謝してくれていたんだ。貴族の末娘に対するおべっかとか、社交辞令かと思ってしまっていた。
ワイン樽一杯に水を汲む。投げ込み式だったら、それだけで疲れ果ててしまうような重労働だったのだろう。
貴族の末娘として箱入りであったし、王宮に登ってからも井戸の水なんて汲む機会はなかった。
テレッサの『ありがとう』は、本当の『ありがとう』だった。私は、私を可愛がってくれたテレッサの役に立っていた。
私は、ちょっと救われたような気がした。ありがとう、テレッサ。きっと、私の実家で、お兄様やお姉さまの子供の身の回りの世話をしてくれているのだろう。
そしてまた、釣瓶式の井戸を使いながら、誰か知らないけれど、前の世界で釣瓶式井戸を発明した人に感謝をした。
現代からすると五百年くらい昔かも知れないけれど、それがこの世界では確かに、役に立っていて、人の生活を楽にしている。
釣瓶。つまり、『滑車』を発明した人は偉大だと思う。
『滑車』があれば、足場さえ組めば、どんなに重い石だって、ロープと滑車と土台が丈夫であれば持ち上げることはできる。 どうやらこの世界の人も、梃子の原理は知っているようだが、この釣瓶式井戸のように、『滑車』を上手く応用すれば、工事などが安全になるだろう。
もしかしたら、人力でもエレベーターなんてものも登場するかも知れない。
王城には高い見張り塔があった。私も景色を堪能しに塔へと登ったが、螺旋階段でとてもキツかった。
階段は疲れるし、エレベーターに乗りたい、と何度も思った。
いや、でもエレベーターは無理か。たとえば、三人が乗ったとして、百五十キロくらいだろうか。その重量を引っ張っていくのに、やはり三人以上が必要だろう。モーターとか電動の力が必要になってくるのだろうし……。
あれ? そういえば、滑車って、反対側に重りを付けていなかったっけ?
左側が十キロの重さで、右側に九キロの重石を付ければ、あと右に一キロの力を加えてやれば重さが釣り合う。
ん?
釣瓶式井戸で、桶の反対側に重りを、その辺に転がっている石でも結んであげれば、労力軽減できそう?
桶に水を入れたときの重さは五キロくらいだから、右側に三、四キロの重石を付ければ、重さの差の、一、二キロの力を加えてやるだけでよいのではないだろうか?
重石の分だけ力が不要になる。
『 5 — 4 = 1 』という計算だ。
いや……きっとこれは私の記憶間違いだろう。
そんな単純なことなら、誰かが思い付いているはずだ。だって、もう釣瓶式の井戸が国中に広まって十年は過ぎている。さすがに改良案が出されているはずだ。
また、別の改良案だと、滑車の右と左の両方に桶を付けたら、桶を井戸へと落とす作業がなくなり、効率二倍な気がするけど……。
鶴瓶式で、前よりは便利になったのは確実だけど、もっと楽をする工夫はできるはずだ。
いや、でも、まだこのスラム街にまで、改良版の井戸が届いていないだけなのだろう。
それだったら、私が近くに落ちている石を反対側に括り付けるだけで、改良できちゃうけど……。これだけで水汲みがさらに楽になる。 難しい作業ではない。ロープの反対側に重石を結ぶだけだ。
私は、早速作業に取りかかった。釣瓶を支える支柱に結び付けてあるロープをほどき、そこら辺に落ちている平べったいサッカーボールくらいの石を結び付けた。
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